
ブレーキホース末端のバンジョーを固定するバンジョーボルトに対して、金属製のブレーキ配管をキャリパーに取り付ける際に使用するのがフレアナットです。六角頭のナットの中心に配管が通るためメガネレンチやソケットレンチが使えず、スパナでは角部の破損が心配です。そんな時に活用したいのが、メガネレンチの一部を切断したような形状のフレアナットレンチです。
ブレーキやクラッチ、ABSユニットの配管端部で使われるフレアナット
画像は自動車用のブレーキマスターシリンダーで、2本の配管をフレアナットで固定している。エンジンルームから後輪ブレーキは経路が長いため、ゴムホースに比べて細く複雑なレイアウトに対応しやすい金属配管のメリットが大きい。マスターシリンダーとの接合部分も、バンジョーとバンジョーボルトで固定するホースよりフレアナットの方が断然スリムでスペース的に有利だ。
オイルやフルードが流れる配管と機器をつなぐ場所では、継手=ジョイントが必要です。マスターシリンダーとブレーキキャリパーをつなぐブレーキホースにも、両端にバンジョーがあり、フルードが通るよう中心に穴が開いたバンジョーボルトで固定されています。
ブレーキや油圧クラッチの配管に注目すると、柔軟性のあるホースを使用する場合と簡単には曲がらない金属製配管を使用する場合があります。これらはホースや配管自体が動くか否かで使い分けられ、フロントフォークが伸縮するフロントブレーキ用配管には柔軟性に富むゴム製のホースが使われます。そして配管自体が伸縮したり折り曲げられたりしない場所では、柔軟性のない金属配管が使われます。
どちらか一方なら、作動部分も固定部分にも対応できるホースに統一する選択肢もありますが、金属製の配管は取り回しが決まった場所に設置しやすく、ゴムやシリコンホースより剛性が高いため配管自体を細くできるため設置スペース面で有利で、圧力損失も小さくできることから、両者は適材適所で使い分けられています。
金属配管の継手部分に注目すると、フレアナットで固定されているのが特徴です。フレアナットの先端は凹型の円錐状となっていて、マスターシリンダーやキャリパー側の凸型の円錐とフィットします。そしてナット中心の穴を貫通した配管の先端はラッパ状に広がり、機器側の凸型の円錐に密着してナットで押しつけられてフルードの気密性を保ちます。ちなみに先端が広がった配管はフレアパイプと呼ばれますが、このフレアは裾が広がったフレアスカートのフレアと同じ語源です。
金属配管自体をナットで挟むだけというのは、バンジョーやバンジョーボルトが必要なホース接続よりシンプルでかさばらず、製造メーカーにとっては部品点数を削減できるためコスト的にも有利です。フロントフォークに沿わせるブレーキホースのように、ホース自体に柔軟性が必要な場合はともかく、固定できる部分にはできるだけ配管を使いたいと考えるのも当然でしょう。
しかしフレアナットはデリケートで、着脱時の工具選びによっては想像以上に簡単になめるという弱点があります。ボルトナットを回す際はメガネレンチやソケットで工具との接点を確保するのが必須ですが、ナットの中心に配管が貫通しているフレアナットはメガネやソケットが使えません。そこでスパナを使うわけですが、フレアナットは六角部の寸法に対して実際のネジ径が太く締め付けトルクが大きいため注意が必要です。
二面幅が10mmの一般的なボルトのネジ径はM6で、標準締め付けトルクは6Nm程度です。それに対してとある機種のABSユニットに使われているフレアナットは、二面幅10mmですが締め付けトルクは16Nmと指定されています。同じ10mmのスパナで、通常のボルトの2倍以上のトルクを掛けるのはかなり不安です。とはいえ締め付けが甘ければ配管のフレア部分からフルードが漏れるリスクがあるので、必要なトルクは譲れません。
- ポイント1・フレアナットはブレーキやクラッチの油圧配管の接続部分で一般的に使われている
フレアナットレンチを使えば傷みやすいフレアナットの着脱も安心
フレアナットレンチにはメガネレンチと同じ形状の製品もあるが、ハンドルを任意に差し替えられるソケットタイプの製品もある。KTCネプロスの製品はクローフットレンチの名称で、ソケット部分を12ポイントとすることで使い勝手をアップしている。またハンドル交換式とすることでトルクレンチとの組み合わせが可能となり、締め付け時のトルク管理ができるのも利点となる。
ブレーキホース内のエアー抜き用のブリードスクリューはメガネレンチでも回せるが、キャリパーのデザインやスクリュー周辺の形状によってはレンチとハンドルをオフセットできるソケットタイプのレンチの方が使い勝手に勝る場合もある。所有する工具が増えれば、作業時の自由度もアップする。
フレアナットレンチ(クローフットレンチ)が本領を発揮するのはこういった場面。固着気味のフレアナットをスパナで回そうとすると、応力が加わる2カ所の頂点に食い込むような手応えが不安だが、6カ所のナット頂点のうち5カ所で接するからホールド感は抜群。締め付け時は配管先端のフレア部分を密着させるのが重要で、レンチを活用することで高い安心感を得られる。
自動車のブレーキやクラッチでは金属配管が当たり前なので、メンテナンス時にはフレアナットレンチが必須工具となる。ナットをなめると配管先端部のフレア部分を切断してナットを交換し、再度配管先端をフレア加工しなくてはならない。その手間とコストを考えたら、フレアナットレンチを購入する方が経済的だ。
このフレアナットはナット部分の二面幅が10mmなのに対してネジ径もM10で、締め付けトルクも二面幅10mmのM6ボルトの2倍以上となるため、スパナでトルクを掛ければナットの頂点部分は当然傷みやすくなる。接触面積を増やすことで応力を分散できるフレアナットレンチの強みも理解できるはずだ。
そんな場面で頼りになるのが、メガネレンチの一部をカットしたような見た目のフレアナットレンチです。スパナとナットの接点は2点ですが、フレアナットレンチはブレーキ配管を通り抜けられるように切断された一カ所を除いた5点で接するためナットの角部に加わる力が分散され、締め付けトルクが大きくなってもなめづらいのが最大の特徴です。
現在のメガネレンチでは当たり前となった、ナットの頂点から離れた位置で工具が接する面接触を採用するフレアナットレンチも多く、応力を分散することでフレアナットを傷めづらいという利点もあります。
フレアナットをスパナで緩めようとすると、スパナに加える力が大きくなるほど不安感が増大していきます。常にオーバートルク気味で作業する傾向にあると気にならないかも知れませんが、10mmのスパナに普通のボルトの3倍近くのトルクを加えて、ナットのエッジに無理が掛かっている手応えを感じるのは気分の良いものではありません。
それに比べるとフレアナットレンチのグリップ感、安心感は抜群です。長期間着脱する機会がなく固着しているナットでも、臆することなく力を掛けられます。締め付け時も同様で、工具自体が開く感覚がないのでフレア部分がしっかり密着する手応えを感じられます。
フレアナットレンチと同様に、メガネレンチの一部を切り取った形状の工具にクローフットレンチがあります。クローとは爪、かぎ爪を表す英語で、その形状から名付けられています。フレアナットレンチは用途、クローフットレンチは形状から命名されたものですが、用途は同じと考えて間違いありません。ただしレンチ外周部の形状によっては、フレアナットの周囲に干渉することもあるので、購入する際は使用場所と工具の形状を比較検討することも必要です。
フレアナットをまったく使用していない機種にとっては不要な工具ですが、一カ所でも使用箇所があれば必ずフレアナットレンチで作業したほうが、後々ナットをなめてリカバリーに苦労することもなく、結果的に作業効率が良いのは間違いありません。
- ポイント1・メガネレンチの一部をカットしたようなフレアナットレンチやクローフットレンチは、ナットとの接点が5カ所になり応力が分散されるのでフレアナットを傷めづらい
クロウフットの由来が違う。
オートバイの場合、フレアナット使ってるのは、一部のABSユニットの配管だけじゃないかなぁ。
バンジョーは基本メガネやソケット等で回しませんかね。1枚目の写真を見る限りメガネやコンビの丸いの使った方が作業し易そうに見える。
30年以上前からパイプレンチ使ってるよ。
写真見る限り使い勝手が悪いな。
なぜトップ画像をフレアナットじゃなくて、ブリーダーに当ててる写真にした?
しかも、それ使いやすいか?
バンジョーの意味合いが判って無いのよ普通バンジョーって言ったら楽器のバンジョーみたいにナットに対して垂直にホースが出るタイプだもの、これ4輪のブレーキ周りから持ってきた写真?
ボディーとキャリパーを繋ぐ必要があるから片方はホースを回転させて締め付けもう片方をフレアレンチで締める必要があるわけ誰か言ってたけど2輪で使う機会はそんなに無いと思うけど。
4輪でナットをなめてホースをネジ切った私が言うんだから。