ドライバーやソケットレンチなど、工具の種類ごとにユーザーに信頼されるブランドがあり、掴み系工具を代表するのがドイツ製のクニペックスです。ニッパやラジオペンチやプライヤーなど、140年にわたりプライヤーメーカーとして発展してきたクニペックスは、革新的な製品をいくつも発明してきました。中でもバイクや自動車のメンテナンスで抜群に使いやすいのが、プライヤーレンチやコブラです。

掴み面に遊びがなくラチェットのように早回しできるプライヤーレンチ


ホイールを固定するアクスルナットは21、22、24mmといったサイズも多く、セット工具のメガネレンチやソケットレンチでは対応していないこともある。モンキーレンチはそんな場面で重宝するが、アゴの開口幅をウォームギアで調整する構造上、トルクを加えるとアゴに開き方向の力が加わり、ガタが生じる場合もある。


掴み系工具のトップブランドであるクニペックス。上から全長250mmソフトグリップハンドル付きプライヤーレンチ、全長250mm自動調整付きスマートグリップウォーターポンププライヤー、全長150mmプラスチックコートハンドル付きコブラ。どれもプライヤー専門メーカーならではのこだわりが満載されている。


製品名称はプライヤーレンチだが、アゴのデザインはモンキーレンチそのもの。ボルトナットを傷つけないだけでなく、プレートや棒状のパーツの曲がりを修正する際にもプレス代わりに使える。上のハンドルと下アゴはジョイントで連結された別体構造で、ハンドルに入力した力をテコの原理でアゴに伝えて10倍に増幅する。


画像の作業姿勢の場合、下側のハンドルを上に持ち上げればアゴが締め付けられながら回転力も伝達される。持ち上げる力を弱めればアゴが開くので、ナットとの当たり位置を簡単に掛け替えることができ、ラチェットレンチのように連続的に回し続けられる。

プライヤーといえば、ラジオペンチやスリップジョイントプライヤーのように細かな作業やボルトやネジの回り止め向けなどの軽作業向けというイメージが強いのではないでしょうか。ボルトを回すのであれば、スパナやメガネレンチやソケットレンチを使うのが大前提で、メンテ好きになるほど工具箱にモンキーレンチが入っていても出番はほとんどない、というパターンも多いようです。

プライヤーもモンキーレンチも手軽に使えて便利なのは確かですが、プライヤーには力を加える際にハンドルを握りしめないと滑る、モンキーレンチにはウォームギアでアゴの開きを調整しても僅かなガタが出ます。この特性は握り工具にとって致し方な構造上の弱点ですが、1994年に開発されたクニペックスのプライヤーレンチは、そうしたウィークポイントを解消した画期的なレンチとしてプロユーザーや工具好きに絶賛されています。

プライヤーレンチの特徴のひとつは、グリップを握った際に掴み面が滑らかに磨かれたアゴが平行に動くことです。プライヤーの掴み面はボルトナットや板材を掴むために刻みが入っており、グリップを握るとピボット部分から先端に向かって閉じていくのが一般的なので、プライヤーレンチのこの動きはかなり異質です。

モンキーレンチのアゴも平行に開閉しますが、ボルトナットを挟んで強いトルクを加えるとアゴが開こうとしてウォームギアの遊び分だけどうしても僅かなガタが生じます。またガタがゼロだったとしても、トルクを加えることでアゴに対して開き方向の力が加わることは変わりありません。

僅かなガタがあってもウォームギアで開口幅を固定できるモンキーレンチに対して、プライヤーレンチはハンドル操作でアゴが開閉する分、ボルトナットに対して遊びなく掴むことができます。しかし一般的な構造のプライヤーなら、強く締まったボルトを緩めるにはハンドルを強く握ることが必要で、たいていの場合はハンドルを保持できずにボルトをなめてしまうのがオチでしょう。

これに対してハンドルを「握る必要がない」のがプライヤーレンチの大きな特徴です。こう書くと若干の語弊がありますが、ハンドルとピボットとアゴの独特な構造によるセルフロック機構は、上側のハンドルを押さえつけるだけで入力の10倍の力がアゴに加わるようになっているのです。実際の作業時には上下のハンドルを握って回しますが、緩め作業でも締め作業でもハンドルに入力する力が大きくなるほどボルトナットに強く密着するため、なめるリスクはありません。ハンドルに力を入れるほど食いつき力が強くなるのは、パイプレンチに似た使い勝手です。

握れば強烈な保持力を発揮しながら、ハンドルを握る力を緩めればアゴが開いて簡単に掛け替えられるのも特徴です。プライヤーなのだから当たり前といえばそうですが、ハンドルの振り幅が限られた場所ではハンドルを握る力の加減次第でラチェットレンチのような動作が可能です。モンキーレンチで同じ動作をするには、掛け替えのたびにウォームギアを緩めたり締めたりすることを考えれば、プライヤーレンチのラチェット機構は圧倒的に便利です。

クニペックス独自のピボットとジョイント構造により、レンチ全長に対してアゴの開口幅が広いのも魅力的なポイントです。プライヤーレンチは全長100mm、125mm、150mm、180mm、250mm、300mm、400mmとバリエーションが多彩ですが、手の平に余裕で乗る100mmタイプでも開口幅は10段階に微調整でき最大21mmまで開きます。車載工具としてかさばらず持ち歩きに便利な180mmタイプなら最大40mmまで開くのでビッグバイクのアクスルナットにも余裕で対応でき、全長400mmタイプなら85mmというワイドな開口幅が得られます。サイズ調整はジョイントのボタンを押すだけなので簡単です。

掴み系工具は数あれど、これだけの機能性を備えた製品はプライヤーレンチ以外には存在しないと言っても過言ではありません。一般的なプライヤーやモンキーレンチに比べて高価なのは事実ですが、それ以上の価値を実感できる工具です。

POINT

  • ポイント1・プライヤーレンチはハンドルを押さえるだけで加えた力の10倍の力でボルトナットにアゴが密着し、モンキー代わりに使える

ハンドルを握るほどアゴが食いつくクニペックス製プライヤーの先駆者、コブラとアリゲーター


ジョイント部分のボタンを押すとヒンジ部分の噛み合いが外れるので、上アゴをボルトに当てた状態でボタンを押しながら下アゴをスライドさせるだけで最適の開口幅に調整できるのがコブラの特徴。ハンドルを大きく開いて開口幅をセットしてボルトにあてがい、見立てと違ったらまた外してハンドルを大きく開いて再調整するという面倒な作業は不要。


コブラのバリエーションにはアゴの先端が長くスリムな製品もあり、狭い場所で細かな作業を行うことのあるバイクや自動車整備などに最適。アゴの根元の平行四辺形部分は、ボルトナットの二面にぴったりフィットするよう設定されており、押せばトルクが増幅するハンドル形状と相まって固着したボルトを緩める作業にも適している。


ボックスジョイント部分のプッシュボタンを廃し、ハンドルから手を離すたびに最大幅まで開口、握ることで相手のサイズに応じてアゴが閉じる自動調整付きウォーターポンププライヤー。全長250mmに対して最大開口幅は36mmもあり、保管時はジョイント後部のロックレバーをセットすることでアゴを全閉できる。

工具の名前どおり、水まわりの工事やメンテナンスで使用するのがウォーターポンププライヤーです。バイクや自動車の作業にも重宝し、スリップジョイントプライヤーよりも大きな開口幅が特徴です。

クニペックスは1970年代、アリゲーターと名付けられた画期的な製品を開発しました。通常のウォーターポンププライヤーは開口幅の調整が5段階程度ですが、アリゲーターは9段階と細かいため、掴む相手のサイズに関わらず最も入力しやすいハンドル幅を維持できます。またパイプやボルトナットに対してアゴが食い込むセルフロック機能があるため、ハンドルを押すだけで掴む力を確実に伝達できます。

一般的なプライヤーのジョイント部分は2枚の板状の部品を重ね合わせるだけなのに対して、アリゲーターはスリットを設けた一方のハンドルにもう一方のハンドルを通したボックスジョイントを採用することで、ジョイントの剛性を向上させると共にハンドルにねじる動作を加えてもアゴがねじれない安定性を確保しています。この構造はコストアップにつながりますが、アリゲーターやプライヤーレンチにも受け継がれています。

アリゲーターの進化モデルとして1980年代に登場したのがコブラです。ウォーターポンププライヤーの開口幅を調整するにはハンドルを左右に大きく開いてジョイント位置を変更するのが当たり前ですが、コブラはプッシュボタンを押しながらハンドルをスライドさせるだけで、ボルトナットのサイズに応じた最適の開口幅にセットできます。

コブラ、アリゲーターともに掴み面には鋭い歯が付いていますが、掴み面自体のデザインにも秘密があります。一般的なウォーターポンププライヤーの掴み面はアゴの上下で対称的な形状ですが、コブラやアリゲーターは平行四辺形で歯の形状も非対称です。この形状によりハンドルに力を加えた際にボルトナットや丸棒に食い込み、締め緩めいずれの動作でも確実にトルクを伝達できます。

コブラにも100mm、125mm、150mm、180mm、250mm、300mmと全長違いのバリエーションがあり、150mmや180mmクラスは車載用としても重宝します。掴み系工具はあくまで一時しのぎや緊急時向けだと思っている人にとって、アリゲーターやコブラの使い勝手の良さは驚きに値するはずです。

POINT

  • ポイント1・プッシュボタンでアゴの開口幅が容易に調整でき、掴んだ相手を離さないコブラは日常のメンテナンス時にも重宝する
コメント一覧
  1. 匿名 より:

    車系ユーチューバーに提供しまくってたりこんな記事が出たりと今クニペックスは売り込みかけてるな

  2. 匿名 より:

    確かに「挟む」ことにかけてはクニペックスがダントツ。殆ど万力でモンキーより遥かに精度が高い。

    プライヤーレンチは便利で、面で回せるからボルト・ナットに傷が付きにくくナメにくいけど、握り込まなきゃならないから狭いところは無理。

    より強く強力に回せるコブラもメリット・デメリットは同じだけど、ボルトナットは傷だらけになるので交換前提。

    どちらもプライヤーとして使えなくもないけど、結局挟んで「回す」工具なので、プライヤー単体と比較すると使いにくい。やっぱり横着できないっす。

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