バイクの塗装=ペイントにも用途に応じて様々な塗料が試されているが、ここで注目したいのは、乾燥時に塗膜露出面が「チヂレ」る結晶塗装=結晶ペイントである。機能塗料ではなく、あくまで仕上がりデザインとして魅力的なのが結晶ペイントである。ここでは、缶スプレータイプの結晶ペイントを使って、DIYペイントにチャレンジしてみよう。

しっかり「マスキング」が大切



下処理実践の前にマスキング作業を先行で行なった。ペイントを載せたくない部分にマスキングテープを丁寧に貼り込む。機種によって異なるとは思うが、このメーターは底部分に塗料が載っていなかったため、ここへもマスキングを行った。今回は、部品にキズやダメージを与えないために、旧塗料を剥がす前に、敢えてマスキングを行ってみた。

地肌まで磨いてしっかり脱脂



旧塗装を剥がすために240番の耐水ペーパーを用意し、敢えて水を使わずに塗膜を磨いて剥離した。5分も磨いたらほぼ地肌になったので、その状態からペイント作業へ移った。磨き部品がメーターのため、耐水研磨では研磨水がメーター内に入ってしまうので良くない。結晶ペイントの仕上がり時には、下地のキズが目立たなくなるのも特徴である。ここでは魅力的な仕上がりになる結晶ペイントにチャレンジしてみよう。

色変更で「カスタム」もできる



カーベックが取り扱う結晶塗料は、有名パーツコンストラクターが自動車用部品の仕上げにも利用しているクォリティの高さと仕上がりが魅力。4色ある缶スプレーは各300ml入りで税込3080円。プロ向けとしてネタの販売も好評のようだ。

慎重に重ね塗りペイント



失敗しないコツは、ペイント直前にスプレー缶を「2分以上しっかり振る」こと。ペイント時は、一気に吹き付けず、薄く重ね塗りを繰り返そう。表面が自然乾燥したら、また重ね塗りするように万遍なく塗り込むのが成功への近道だ。塗り込みが薄ければチヂミが浅く、逆にある一定以上に厚く塗り重ねればチヂレは強くなる。塗膜を均一にすることでチヂレ具合も均一になる。またメーターは、逆さまに置く時間が長いと指針軸ダンパーオイルが流れ出てしまうこともあるので、逆さまにする作業は手早く行おう。

温度調整可能なCVジュニア





30分程度自然乾燥させたら、塗りムラが無いことを確認しつつ熱乾燥器で温め乾燥させる。乾燥前に塗りムラを見つけたら、もう一度、均一になるように重ね塗りペイントしておこう。乾燥時には、工業用のハンディヒーターも利用できる。ヒーターの場合は局所的に熱くなり過ぎるので、遠巻きかつ全体的に温めるのがコツのようだ。CVジュニアは簡易温度設定が可能でタイマーは最大で1時間。常時通電モードもある。また、アナログ式の簡易温度計が付属するので、実温度を確認しながら設定微調整することもできる。乾燥させる時にはケーブル接続部の突起を利用し、メーターは逆さまにしないこと。特に乾燥時は要注意だ。

「ビフォー⇒アフター」の比較



50年近く経過した塗装だと考えれば優秀だと思うが、やっぱり仕上げ後の結晶塗装面には独特な美しさと風合いがある。しっかり乾燥させて塗膜硬度が上がってから、部品の取り付けに入ろう。

POINT

  • ポイント1・ どんなペイントでも足付け磨きと塗る直前の脱脂は必要不可欠
  • ポイント2・ 缶スブレーだけに限らず、スプレーケミカルの混ぜ球入りは、しっかり振ってから利用しよう
  • ポイント3・ 結晶塗料は熱硬化と熱で変化する塗料なので、乾燥設備を準備しよう

メーカー純正仕上げでも採用例が多い「ちぢれ塗装=結晶塗装」。この風合い豊かな表情は、缶スプレーでの施工でも表現可能なのだ。メーター本体でもメーターカバーでも、実は、70年代当時から、採用例が多い結晶ペイント。一般的な黒色ペイントとは異なり、塗膜が「チヂレる」ことで独特な風合いを演出。そんな特徴をもつペイントだが、自動車ならエンジンのヘッドカバーや社内ダッシュボード周辺部品(灰皿の引手など)への利用が多く、バイクならメーター本体ボディやメーターバイザーなどで使用実績が多い。

結晶塗料には「缶スプレー」タイプとプロペインター向けの「ネタ」タイプの販売があり、我々サンデーメカニックにとって嬉しいのが「1液式」だということ。したがって缶スプレーの場合は、使用後に「逆さま吹き」すれば、缶スプレー通路を空吹きすることができ、比較的長持ちさせること=継続利用することができる。ネタ利用の場合は、スプレーカップから塗料缶へ無駄なく戻すこともできる。

均一なペイント仕上げをすることができれば、塗膜は均一にチヂレる=結晶化するため、塗膜厚のスプレーコントロール次第で、浅いチヂレや、深いチヂレを演出することもできる。ただし、浅くチヂレさせたいときでも、ある程度の膜厚が無いと(通常のペイント仕上げと比べると圧倒的に厚塗り仕上げになる)、まったくチヂレないこともあるのでこのあたりは薄く仕上げ過ぎないように要注意。一発勝負で仕上げたいのなら、違った重ね塗りのテストピースを使い、結晶度テストを行ってイメージトレーニングしてから本ペイントに入るのが良いかもしれない。

表面が自然乾燥してから熱を加えることでチヂレが始まるが、ここではカーベックが取り扱うサンメカ向けの小型熱乾燥器「CVジュニア」を利用した(70℃の設定で30分程度の乾燥でチヂレる。その後もしばらく焼くことで硬化速度は高まる)。ちなみに、ダンボールなどで囲った中にペイント済み部品を置き、工業用のハンディヒーターなどで加熱することでもチヂレは発生する。夏場なら、プラスチック製の透明衣装箱などの中にペイント済み部品を入れ、フタを閉じて直射日光で温めることで、チヂレが始まる様子を目視体験することもできる。実にユニークな結晶ペイントなので、その可能性をカスタムユースで試していただければと思う。

エンジンパーツとして利用する場合、組み付け直後のエンジン始動で結晶ペイント部品が温まると、塗膜が柔らかくなるケースが多いので、取り付け後に何度かアイドリングでエンジンを温め、冷やしてからまた温めを何度か行うことで、十分な塗膜硬度を得られる。エンジン部品ユースでは、慌てて使ってせっかくのチヂレ塗膜にダメージを与えないようにしよう。

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コメント一覧
  1. ちょま より:

    ネタ って何?
    塗料だけ、とかでいいと思うけど。

  2. 匿名 より:

    細かい…

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