
鋳物部品のバリ取りや表面磨きの方法として、金属加工業界では、よく使われているバレル研磨機(ウエットバレル研磨機)。用途に応じて機械の大きさも様々だが(一般的には機械を見ることなど無いが……)、磨き魔にとっては魅力的なバレル研磨機を、自作=DIYで作ることができないものか!?ここでは、おじさん小学生!?による「夏休みの工作&実験!?」的な様子をご覧くださいませ。
研磨石と部品が擦れて輝くバレル研磨
セラミックメディアの中に洗浄ケミカルを投入した水と磨きたい部品を入れて、メディアと部品をガラガラかき混ぜて、部品を磨くのが一般的なバレル研磨機の仕組み。実は、このコンクリートミキサーの前に、不要になった二層式の洗濯機を利用したこともあった。放置している間に部品がピカピカに仕上がれば嬉しいと考えたのだ。世の中、甘くありませんね……
効率良く混じる角度を目視検証
キャブクリーナーを使った漬け込み洗浄用として買ったつもりの口広半透明容器の中にアーモンドとピーナッツを投入。ただの「おやつ入れ」のつもりでしたが、斜めにして回したり、真横にして回すことで、内部のおやつの動きが「どうなっているのか?」これを試したときにピピッと来ました。コンクリートミキサーへのヒントだったのです。
真横に寝かせても液漏れしない容器作り
傾斜地面を使っても、真横でミキシングできなかったコンクリートミキサー。家庭菜園ブームの中で、腐葉土や肥料を混ぜるためにコンクリートミキサーへの需要が生まれたらしい。工具ショップで購入してきた。固定円盤のロック位置を追加する? もしくは円盤の締め付け部分を長穴にして、本体を真横にできるように改造してみました。
水道水+洗浄液の処理水
洗浄水の量も研磨力に大きく関係するわうだ。多過ぎても少な過ぎてもダメみたい!?また、硬水よりも軟水の方が、輝きが増すとプロから伺うこともできた。利用した洗剤=液体コンパウンドの量は、このミキサー本体なら100ml程度で十分な泡立ちを得られるようだ。容器を真横にしてもメディアや洗浄水が漏れないように、ゴムパッキン付きのフタを固定できるように改造してみた。
下地作りが何よりも重要
4連キャブレターのトップカバーとフロートチャンバーを磨いてみることにした。油汚れを落としした後に、バフモーターを使ってあらかじめバフ仕上げ。青棒を使って輝かせてみた。なかなか良い輝きだが、ウエットバレル研磨のような「フラット感のある輝き」ではなく、輝く光に少なからずムラがある。
長時間磨きで輝いた!!
我々はガレージ内で撮影進行しながら、屋外ではコンクリートミキサー改ウエットバレル研磨機がゴロゴロ回り続ける……。ガラスドア一枚へだてているが、かなりの騒音。真夜中にはガレージ内でも使えないだろう。約5時間強、回し続けてこの仕上がり。写真では比較しにくいが、バフ仕上げで輝きにムラがあった部分は、フラットな輝きに仕上げることができた。研磨メディアが部品の様々な穴に詰まりやすいので、対策も必要である。
- ポイント1・ 容器からの液漏れ対策はしっかりしないとだめ
- ポイント2・ 容器が金属だとガラガラうるさく騒音が大きい
- ポイント3・ あるていど磨いて輝かせたあとの最終仕上げと考えよう
効率が良い施工を安定的に行なうための「明確な条件」を発見することが、安定した仕上がりには重要なことだろう。そうは簡単に、好結果を得られるものではない。テストを繰り返し「行き詰まり感」があるときには、お手本になる本物=市販のバレル研磨機を参考にするのが手っ取り早い。気になっていたのが回転容器本体の傾き角度だった。知り合いの工場で見た本物のバレル研磨機は、容器が「真横」になっていて、斜め式ドラムの洗濯機や中華チェーン店の「自動チャーハン炒め器」のような斜めドラム式にはなっていない。
そんなことを考えていたとき、目の前にあった「おやつの半透明容器」をグルグルすることで理解できた。容器を斜めにすると上の方のピーナッツとアーモンドはガサガサと位置移動するのに対し、底から1/3くらいまでは、容器の回転とともに、一緒になって回っていることを発見!? 一方、容器を真横に寝かしてグルグル回すと、すべてのアーモンドやピーナッツがガラガラと回りながら全体的に位置移動することがわかった。そこで、自作バレル研磨機の容器本体=工具ショップで購入した小型コンクリートミキサー容器を改造することにした。
本物のウエットバレル研磨機の容器形状は、このコンクリートミキサーのような円筒形状ではなく、四角柱もしくは八角柱が多い。つまり内部のメディアがガサガサ移動しやすい設計となっている。また、容器内部にはラバーシートが貼り込まれているが、これは騒音対策とメディアの不要な移動=滑り防止だと思う。以上のことから、円筒容器だと回転中のメディアが容器の内側に沿って滑りやすいことが判明した。
そこで、トラックのアオリなどに取り付けられている、中空のカマボコ型ゴム棒をミキサー容器の内側4箇所に接着して、研磨メディアが滑らないように、四角柱の回転容器と似た効果を得られるように改造。様々な実験を繰り返しながら自作バレル研磨機を利用して、カワサキ空冷Z用のミクニ製4連キャブのトップカバーとフロートチャンバーを研磨処理実験してみた。下地コンディションを可能な限り仕上げておかないと、美しい仕上がりにならないので、ここでは事前にバフモーターでパーツを磨き、そのうえでウエットバレル研磨にチャレンジしてみた。研磨途中に洗浄水や洗剤(液体コンパウンド)を入れ換えるなど、様々なテストを行いながらガラガラやること約5時間。仕上げメディアだけの作業ながら、求めていた「しっとり感のあるフラットな輝き」を得ることができた。言わば「純正新品部品のような輝き」で、如何にも「バフで仕上げました!!」といった印象ではなくなった。
この後にも様々なテストを繰り返してみたが、そもそもコンクリートミキサー自体の使い勝手が今ひとつだったのと、金属容器=騒音問題が大きなネックとなってしまった。また、その後も可能な限り様々なテストを行ってみたが、部品の仕上がりがより良くなることは無かった。実験的には楽しかったのだが……。
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モトメンテナンス111号
約9年前の掲載内容、写真そのまんまですね。