絶版車や古い原付クラスのバイクの中に、テレスコピックフォークのスプリングがインナーチューブの外側に付いている機種があります。ピストンメタル式と呼ばれるクラシカルなタイプですが、一度取り外したフロントフォークを取り付ける際にアウタースプリングの張力が邪魔になることも。そんな時はインナーチューブにネジ棒を取り付けて、トップブリッジの上から引っ張り上げるのがお勧めです。

フォークブーツや円筒形のカバーで隠されたアウタースプリング


トップブリッジとアンダーブラケット間のヘッドライトステーと、アンダーブラケット下のフォークスプリングカバーによって、インナーチューブが完全にカバーされている1960年代後半のヤマハAT90。チェリアーニ式フォークを採用するカワサキZ1やホンダCB750フォアなど1970年代中盤以降でも、インナーチューブにかぶせるタイプのヘッドライトステーを採用する機種がある。


インナーチューブの外側にフォークスプリングが付くピストンメタル式フロントフォーク。チェリアーニ式フォークでもスプリングを外せばインナーチューブは抵抗なくアウターチューブ内に入ってしまうが、アウタースプリングは車体に組み付けない限りインナーチューブは常にスコスコと動いてしまう。


アウターチューブ上端のねじ込み式オイルシールホルダーを外すと、インナーチューブを引き抜くことができる。フォーク内部にはスプリングもシートパイプ(ピストン)もなく構造はとてもシンプル。

今どきのフロントフォークはプリロードや減衰力などの調整機能が装着されたものも多いですが、1970年代後半までのバイクにはそうした機能は皆無でした。そればかりか1960年代後半までは、フォークスプリングがインナーチューブの外側に付くピストンメタル式と呼ばれる構造を採用した物も少なくありませんでした。というより、テレスコピック形式でピストンメタル式の進化版として登場したのがチェリアーニ式という流れなので、ピストンメタル式の方が先輩格にあたります。

ピストンメタル式フォークにはインナーチューブ内にピストン(シートパイプ)がないため構造がシンプルで、チェリアーニ式が普及して以降も原付クラスやビジネスクラスを中心に用いられました。例えば2000年代半ばまで製造されたヤマハYB-1のフロントフォークもピストンメタル式で、スプリングはインナーチューブの外側に付いていました。

インナーチューブ外側に装着されたスプリングはそのままでは見た目がイマイチなので、カワサキW1のようにゴム製の蛇腹フォークブーツや円筒状の金属製カバーなどが装着されています。ちなみに、ホンダCB750フォアのフロントフォークにも蛇腹のフォークブーツが付いていますが、フォークの構造としてはスプリングはインナーチューブ内に収まるチェリアーニ式となります。

チェリアーニ式フロントフォークのスプリングは、機種によってはカラーが入ることもありますが、インナーチューブ内のピストンとキャップボルトで押さえられています。そのためオーソドックスな正立フォークのキャップボルトを緩めていくと、ボルトが外れる瞬間に飛び跳ねようとするので注意が必要で、取り付ける際にはスプリングを押し縮めなくてはならないので、ボルトのネジ山かじりに気をつけなくてはなりません。

対してピストンメタル式のアウタースプリングは、インナーチューブをクランプするアンダーブラケットとアウターチューブ上端で押さえられています。そのためアンダーブラケットのクランプボルトを緩めると、スプリングが伸びてフロントフォークを取り外すことができます。スプリングはこの時点で外れているので、キャップボルトはフォークオイルの蓋にしか過ぎず、ボルトを外す際にどこかに飛んでいくことはありません。

POINT

  • ポイント1・アウタースプリングのピストンメタル式フロントフォークは、一度車体から取り外すと取り付け時にコツが必要

アウタースプリングのフロントフォークはインナーチューブをネジ棒で引き上げる


原付クラスの実用車に多いプレス成型のスチール製トップブリッジは、インナーチューブの上端をトップブリッジ裏側に突き当て、上部からトップキャップを締め付けて固定する。ホンダエイプやCD50もスチール製トップブリッジという点では同じ構造だが、フロントフォーク自体はスプリングがインナーチューブ内に入るチェリアーニ式となっている。


アンダーブラケットに円筒形のスプリングカバーをセットしてフロントフォークを通して、インナーチューブ上部にねじ込んだネジ棒を引き上げる。アウタースプリングがアンダーブラケットに接するとインナーチューブを引き上げるのに必要な力が増すが、このテンションがフォークに加わるプリロードとなる。この画像はトップブリッジを取り付けずに引き上げているが、トップブリッジ付きの場合はヘッドライトステーを通してトップブリッジ部分まで引っ張り、アンダーブラケットを仮止めしてネジ棒をキャップボルトに交換してから微調整する。


フォークオイルは油面高さではなく容量基準となっているので、指定量を注入する。


スプリングカバーはフォークブーツになり、インナースプリング式になることで一部の装飾的装備以外はインナーチューブが露出するようになった。ヘッドライトステーも貫通式からトップブリッジとアンダーブラケットで挟み込むタイプが一般的となり、画像のようなフルカバータイプは絶版車特有のクラシカルな装備となった。

ピストンメタル式もチェリアーニ式も、スプリングで荷重を受け止めダンパーで減衰力を発生させるため、フォークオイルの定期交換は必要です。ピストンメタル式フォークを車体から取り外すとその時点でスプリングも外れるため、インナーチューブは抵抗なくアウターチューブ内に収まります。

それ自体はスプリングを抜いたチェリアーニ式でも同様ですが、車体に組み立てる際にピストンメタル式ならではの特徴があらわになります。チェリアーニ式はフォーク単体でオイルを入れ替えて油面を調整した流れでキャップボルトを締めれば、スプリングの反力によりインナーチューブはストロークしないため、アンダーブラケットやトップブリッジに簡単にセットできます。

しかしピストンメタル式は内部にスプリングがないため、アンダーブラケットにインナーチューブを差し込もうとするとアウターチューブ側に入ってしまいます。アンダーブラケット上まで差し込んだら横から引き上げれば良いのですが、インナーチューブにすっぽりかぶせるクラシカルなヘッドライトステーを装着する機種では、インナーチューブを掴む手段がありません。

画像で紹介しているのは1960年代のヤマハAT90のフロントフォークで、トップブリッジとアンダーブラケット間のヘッドライトステー、アンダーブラケット下のスプリングカバーとも金属製で、インナーチューブ自体を掴んで引き上げることができません。この構造はYB1やスプリングに蛇腹カバーが付くカワサキW1も同様です。

こうした機種では、ヘッドライトステーを取り付ける前にインナーチューブ上端をトップブリッジより上まで引っ張り上げてアンダーブラケットを仮止めして、ヘッドライトステーを通してからトップブリッジを取り付け、アンダーブラケットのボルトを緩めてトップブリッジを下げてステムシャフトに組み付けるという手法もあります。

しかし原付クラスの機種なら、もっと簡単にアウタースプリング仕様のテレスコピックフォークを組み付ける方法があります。

主に小排気量車で多い、トップブリッジにプレス成型したスチール板を使用している機種では、トップブリッジ越しにキャップボルトを締め付けているものがあります。この場合、ボルト穴から長いネジ棒を差し込んでインナーチューブ上端にねじ込み、ネジ棒を引っ張ることでインナーチューブを引き上げられます。

この方法なら、インナーチューブにスプリングカバーやライトステーが付いていても、トップブリッジやアンダーブラケットの所定の位置に楽にセットできます。また組み付け作業中にアウターチューブを押すことがないので、不用意にフォークを縮めて内部のオイルを噴出させる心配もありません。

上から下までインナーチューブがカバーされていても、スプリングがインナーチューブ内にあって常に伸びきろうとする力が加わっているチェリアーニ式なら、このような手間やアイデアは不要です。またアウタースプリングであっても、アンダーブラケットのボルトを緩めればアウターチューブが押し下げられて組み立て時に面倒そうだと想像が働かせれば、不用意にフロントフォークを外さないという選択肢もあります。

それでもメンテナンスや修理で取り外す場合は、組み立て時にお手上げにならないよう、事前に道具を準備したり作業手順を検討しておくようにしましょう。

POINT

  • ポイント1・インナーチューブ上端に雌ネジがある小排気量車用のアウタースプリング式フロントフォークは、ネジ棒をインナーチューブにねじ込んで引っ張り上げて取り付ける

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