バッテリーから送り出された電気はハーネスを伝って車体各部の電装品に流れる中で、コネクターやスイッチなど各部の接点で少しずつ減衰します。絶版車ともなれば、ハーネスの配線自体の経年劣化も気になります。エンジンを好調さを保つための点火系チューニングは有効ですが、イグニッションコイルの一次側電圧が低下していたらせっかくの高性能パーツがもったいない。そんな時に追加したいのがイグニッションコイルのダイレクトリレーです。

ハーネスの末端に行くほどバッテリー電圧は低下する


絶版車の点火系チューニングパーツとして絶大な信頼を集めるASウオタニ製SPIIフルパワーキット。ハイパワーイグニッションコイルとコントロールユニットの組み合わせによって、ノーマルコイルの2次電圧が2~3万Vなのに対して約4万Vを発生。また放電電流、放電時間ともノーマルを大きく上回ることで、強い火花で燃焼状態を改善するのが特徴。ノーマルがポイント式の場合、無接点化することでメンテナンスフリー化も実現する。


ハイパワーイグニッションコイルはノーマルコイルと同様の位置に取り付ければ、純正ハーネスから電源が取れるので便利。しかし何も考えずに配線をつなぐと……。


バッテリーから長い道のりを辿ってきたメスギボシ部分では10V台しか出ていない。何ボルトまで電圧降下するとプラグから火花が飛ばなくなるのか試したことはないが、気分が良くないのは確か。エンジンが掛かっていればオルタネーターが発電し続けるから放電一方ということはないが、ノーマル配線だとヘッドライト点灯時にイグニッション電源と並列になっているのも、点火系チューニングの点から好ましいとは言えないだろう。

バッテリーに充電した電気を使って車体各部の電装品を動かすバイクや自動車にとって、電気は必需品です。12V車であればターミナル電圧が12~12.8であれば正常で、それ以下に低下するとスターターモーターが回らなくなったり、ヘッドライトが暗くなったりと不具合が発生します。

スターターモーターが回らなければエンジンが始動しないのでバッテリーを充電したり交換することになりますが、バッテリーは健全でも車体のハーネスや配線の接触不良や経年劣化で抵抗が増加して電圧が低下することもあります。

分かりやすい例の一つがヘッドライトの光量不足です。普段はちゃんと点灯しているし暗いとも感じないのに、車検に持っていったら光量不足で不合格になる絶版車は少なくありません。シールドビームや通常のハロゲンバルブをLEDバルブに交換するだけで光量が出ることもありますが、そもそもライトバルブの端子電圧が12Vから大きく低下してた、というは絶版車あるあるです。

バッテリーから流れ出た電気はヒューズボックスからイグニッションスイッチを通り、絶版車の場合はヘッドライトスイッチを通ってディマースイッチに入り、それからようやくヘッドライトバルブに到達します。ヘッドライトが必要とする電流を、いくつもの接点を通すのはロスがあるよなぁと思いますが、1970年代までの多くのバイクはそんなものです。そのため、バッテリーからヘッドライトバルブを直接つなぐバイパス回路を設け、ディマースイッチに流れる電流をスイッチとするダイレクトリレーの効果があるわけです。

車検付きバイクのヘッドライトの場合は光量という具体的なハードルがあり、それをクリアするために低下した電圧を補うリレーが有効ということになりますが、ヘッドライト以外にも電圧降下が性能低下につながる部品があります。それがイグニッションコイルです。

イグニッションコイルは一次コイルと二次コイルの巻線比によってバッテリー電圧を昇圧して、2~3万Vの二次電圧をスパークプラグに流します。ヘッドライトテスターのように、スパークプラグの電圧が2万Vなのか3万Vなのかを測定するチャンスはありませんし、1万Vもの差があるのならエンジンが止まらなければ問題ないという考え方もあるでしょう。

しかし昇圧の際の倍率が大きいほど一次側、つまりバッテリー電圧の減衰が二次電圧の大きな差になります。12Vの一次電圧が2万Vになると仮定すると、同じ倍率で一次側が11Vになると二次電圧は1万8000Vあまりに低下します。2000Vの差でスパークプラグが失火したり、エンジンパワーが低下したり、さらには始動が困難になることはないかもしれません。とはいえ、バッテリー電圧が12Vあるのに、イグニッションコイルの一次側でそれより電圧が低下していたらもったいない話です。

POINT

  • ポイント1・バッテリーが発生する電圧はハーネスやコネクターやスイッチ接点などで減衰し、車体全体で必ずしも同一ではない
  • ポイント2・バッテリー電圧をイグニッションコイルで昇圧してスパークプラグに火花を飛ばすトランジスタ点火方式では、バッテリー電圧の僅かな差が最終的な電圧では大きな差となって現れる

イグニッションコイルの一次側電源をスイッチにしたバッ直リレーを追加する


ホーンやフォグランプを増設する際やヘッドライトダイレクトリレーでも使用する電源リレー。青線と黒線にわずかな電流が流れるとリレー内部のコイルに磁力が発生、大電流に耐えられる接点がつながりバッテリーに直結した電流が黄線から電装品に流れる。このリレーは12V20A(240W)までの電装品に対応する。


ノーマル配線のコイル一次側ギボシにリレーの青線をつなぎ、リレーの黄線の先に二叉ギボシをかしめてSPIIハイパワーイグニッションコイルの電源を差し込む。イグニッションコイルリレーはカプラーオンなので、必要に応じていつでもノーマル配線に戻すことができる。電圧降下の改善を目の当たりにすれば、ノーマルに戻す気は起きないだろうが。


ノーマル状態と同条件で電圧を測定すると2V近くも上昇しているが、これが本来のバッテリー電圧であり、ノーマル配線が明らかに電圧降下を起こしていることが分かった。イグニッションスイッチやエンジンストップスイッチ(キルスイッチ)端子のちょっとした腐食や接触不良も、電圧降下の原因となるので要注意。ダイレクトリレーを設置すれば、リレースイッチ作動用の微弱電流があれば、ロスのないバッテリー電圧をイグニッションコイルに流すことができる。


ダイレクトリレーはスターターリレーやカプラーが収まる左サイドカバー内の隙間に取り付けた。ほんの小さなパーツだが、点火系のコンディションアップに効果絶大だ。

機種によってまちまちですが、装備がシンプルな絶版車ほどハーネスはシンプルな傾向にあります。逆に言えば、インジェクションやABSなどの装備が増えるほど電気系統も複雑になっていきます。複雑より単純な方が良いように思われるかも知れませんが、単純=一度にいろいろ動かさなくてはならない、と言うことになります。

ここで実践例を取り上げるカワサキKZ900LTDの場合、イグニッションコイル一次側の電源はバッテリーからイグニッションスイッチに入り、コネクターを通ってエンジンストップスイッチ(キルスイッチ)を通過して流れます。これだけなら割とシンプルですが、イグニッションスイッチ後の配線がメインハーネスの中でも動脈のような役割をしており、前後のブレーキスイッチやホーン、メーター内インジケーターの電源もここから分岐されています。

さらに言えば、途中にヒューズが入って別系統扱いにはなっていますが、ヘッドライトとテールライトの電源もイグニッションコイルの一次側と並列に配置されています。

コネクターやスイッチの接点がある上に他の電気装備と電源を共有するのですから、電圧降下もそれなりに発生します。4気筒なので2個あるイグニッションコイル一次側の電圧を測定すると10.3Vしかありません。点火系強化のためにASウオタニ製SPIIフルパワーキットを装着しているにもかかわらず、肝心のイグニッションコイルの電圧が低下しているようではいけません。

こうした電圧降下の改善に最適なのが、イグニッションコイル専用リレーの増設です。ヘッドライトリレー用のバッテリー直結リレーと同様に、バッテリーとイグニッションコイルの間にリレーと置いてダイレクトに電源をつなぐのです。ヘッドライトリレーの場合はディマースイッチをリレースイッチに使いましたが、イグニッションコイルリレーの場合は純正配線のコイル電源をリレーのスイッチとして使います。

カプラー付きの電源用リレーはホームセンターやネット通販でも簡単に入手でき、4本の配線をそれぞれバッテリープラス、ボディアース、スイッチとなる純正イグニッションコイル用ハーネス、SPIIの一次側に接続するだけなので取り付けも簡単です。万が一の時に備えて、バッテリーとリレーの間にヒューズを忘れず取り付けます。

作業としては後付けリレーを1個追加しただけにも関わらず、イグニッションコイル一次側の電圧は12.29Vに上昇しました。というより、純正ハーネスでロスしていた2V近くを取り戻すことができたのです。

この電圧ロス低減によって、吹け上がりが良くなるとか最高出力が上がったかと言えば、そうした分かりやすい変化は残念ながら感じられませんでした(アイドリングが安定したといった声もあります)。

しかし専用リレーの設置によるデメリットは何一つとしてありません。むしろタコ足配線のように並列接続している中からイグニッションコイルを独立させることで、他の電装品にとってもひとつの負荷を分離して安定化させる点で有効です。

スパークプラグやプラグコード、さらに点火ユニット自体の交換を通じて点火系のリフレッシュやチューニングを行うのなら、イグニッションコイルの一次側電圧に注目し、必要に応じてバッ直リレーの取り付けを検討してみましょう。

POINT

  • ポイント1・ヘッドライトダイレクトリレーと同様にイグニッションコイルのダイレクトリレーも電圧降下低減に有効
  • ポイント2・バッテリーとリレー間の電源配線にヒューズを組み込む
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