
ガソリン漏れトラブルの中で、一番多いのがオーバーフローだろう。キャブレターの設定油面が高過ぎたり、フロートバルブにゴミが詰まって閉じなくなることで、ガソリン漏れが発生してしまうこともある。ときには、想定外の原因からオーバーフロー=ガス漏れが発生することもあるので、分解したパーツは注意深く観察しよう。
真鍮製フロートは腐食パンクしやすい!?
何年もの間!?(知る限り20年以上)、バイク屋さんの倉庫で眠り続けてきたバイクのため、外観的に大きなダメージは無く、当然、エンジンカバー内部の見た目は大変キレイだ。しかしオーバーフローが止まらなかった。フロートチャンバーを外して、フロート本体を耳に寄せて揺すると、片側のフロート内からチャポチャポ音が……。フロートのパンクである。真鍮フロートは、長年の放置でパンクしてしまう例が多い。
パンクフロートは修理可能
患部を脱脂洗浄して内部のガソリンを抜き取ったら(ガスが出にくいときは穴を広げてしまうのも良い)、鈑金ハンダ用のフラックスを穴患部に塗布して、温まったハンダごてでジジュッとする。そして鈑金ハンダを溶解して患部に流そう。ハンダ付けを終えたらバケツに水を張り、フロートを沈めて揺すり、空気がポコポコ出て来ないか確認する。ハンダを盛り過ぎるとフロートの重量が増えてしまうので、最低限のハンダ溶かし量で修理するのがコツだ。
オーバーフローチューブのコンディション
パンクしたフロート修理は確実に補修できたのに、何故だかまだチタチタとガソリンが出てくる……。エンジンカバーで密閉されるキャブレターのため、バランスベンドパイプやオーバーフローパイプがすべてフロートチャンバーに集約される作りを採用。何と何と!? このバランスパイプに縦割りのクラックを発見!! スペア部品が無いので、このパイプもハンダで修理した。修理後はフロートチャンバーにガソリンを溜めた状態で、各パイプの排出側から逆に圧縮空気(少量に絞って)を送り込み、上側を指先で閉じたときにハンダ付けした部分から空気がポコポコと漏れないか? 注意深く点検しよう。
エアエレメントは自作可能!!
エアークリーナーエレメントは入っていなかったので、金属ネットの筒にデイトナから発売されている汎用のターボフィルターをカットして巻き付けて利用。乾燥状態で組み込むのではなく、2ストオイルを極少量染み込ませて組み込むことで、吸入粉塵をスポンジの湿気が吸い付けるようだ。
メンテ後の試運転は大切!!
修理完了後はエンジン始動と試運転は必須。2ストモデルの場合は、オイルポンプから噴射口までのエアー抜きも重要だ。透明なオイルチューブを使っていれば、エアーが抜けていく様子を目視確認することもできる。オイルポンプスロットルを全開にしてもオイルの流れが速まらないときには要注意。心地良くアイドリングを続けるエンジン。
- ポイント1・ オーバーフローには様々な原因があるので、特定箇所の不具合ばかり疑わない
- ポイント2・ 真鍮フロートはパンクすることがあるので要注意
- ポイント3・ 旧車再生時にキャブメンテナンスを実践した際にはエアークリーナーエレメントのコンディションを確認しよう
エンジンの焼き付き修理を終えた2ストエンジンを始めて始動する時には「混合ガソリン」を利用するのが理想的である。分離給油のオイルポンプが故障していたり、何らかの不具合があると、修理したばかりのエンジンに、再びダメージを与えてしまう可能性があるからだ。一般的に2ストエンジンの混合比=ガソリン対エンジンオイルの混合比率は、25~30対1。300mlのペットボトルで始動用ガソリンを作るときには、ペットボトル1本分のガソリンに対して、10cc強の2ストローク用エンジンオイルを混ぜよう。それを始動用の点滴タンクなどで供給すれば、段取りとしてはベストである。
そもそもこのエンジン、何故、壊れてしまったのかも不明である。もしもオイルポンプ不良で潤滑できない状況だったとしたら…… そう考えると怖い!! 早速、混合ガソリンを作って(オイル量をやや増やしてガソリン20対オイル1にした)、混合ガソリンをキャブレターに流し込んでみた。そもそも2ストエンジンは、キャブレターのマニホールド部分にオイルジェットノズルがある例が多いため(シリンダー壁面やキャブのチャンバーボウル内にオイル供給するタイプもある)、あらかじめエンジンオイルを混ぜた混合ガスを送り込めば、良い潤滑性能を期待することが。ちなみに普段から、ガソリン給油時の燃料タンクに2ストオイルをタラ~ッと少しだけ流し入れるクセをつけていれば、致命的な焼き付きトラブルを起すことは少ない。
試運転へ出掛けようとバイクを見ると、エンジンの真下に液漏れの跡が……。ガソリンがオーバーフローしていた。ここで試運転はお預けにして、キャブのオーバーフローシューティングを開始した。分解するとガス漏れの原因は2つあった。ひとつは真鍮フロートの片側がパンクしていて、ガソリンがフロート(浮き)の内部に流れ込み、フロートが浮かずに、その役割を果たせなくなっていた。そしてもうひとつがフロートチャンバー内に鋳込まれている真鍮製オーバーフローパイプ&ベンドパイプに、亀裂が入っていたことだった。これらのトラブルは、いずれもハンダ付けで修復することができた。修理によって得られる耐久性がどれほどなのかは不明だが、いつ同じようなトラブルが再発するかわからないので、機会があったらコンディションが良いスペアパーツを確保しておくのが良いだろう。また、キャブの分解時にオーバーホールが必要そうなら、キースター製燃調キットを購入すれば、オーバーホールに必要なガスケット類がすべて揃っていて、しかも燃調セッティングできるので大変便利かつ間違いなくリーズナブルである。
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