「組み立て式」のクランクシャフトには、分解して、痛んだ部品を交換して「組み立て直せる」という利点がある。しかし、それは補修用の交換部品が供給されていればのお話であって、肝心の部品が無ければどうにもならない。修理できる技術があっても、部品が無ければどうにもならない。井上ボーリングでは、そんなThe KAWASAKIに正面から取り組んでいる

初期型Z1は2022年で生誕50年

国内モデルは750ccの排気量「自主規制」で750RS/Z2が1973年モデルとして登場した。そもそも世界最大のバイク市場である北米マーケット向けに開発されたモデルなので、先に市販されたCB750シリーズを上回るパフォーマンスモデルを開発し、排気量は900cc(903cc)となった。

分解前には現状コンディションをチェック



オーバーホール依頼を受けると、いきなり分解に取り掛かるのではなく、作業前のコンディションをまずは確認することから始まる。程度の良いものは全箇所5/1000mm以下の振れだそう。振れが無く芯が出ているクランクシャフトでも180度の位相が正しくなければエンジン性能を発揮できない。過去に分解履歴が無いクランクでも、コンロッドのピストンピン部にストレートシャフトが刺さらない=位相ズレしている例もあるそうだ。

分解プレートと油圧プレスの共演



クランクシャフト分解用のU字型固定プレートと押しピンを組み合わせることで手際良くバラされていくクランクシャフト。2ストエンジンの細いクランクピンと比べて、分解時のプレス圧力は当然に高い。全パーツを分解したが、このクランクはこの状態で依頼者に届けらることになった。何故なら、クランクピンやクランクジャーナルに深い虫食いサビが発生していたため、復元しても好結果が得られないと判断。依頼者さんと相談した結果、そのような対処になった。こうなると程度の良いクランクシャフトを、依頼者サイドで見つけなくてはいけない。

水没エンジンに多いサビ虫食い





両外側のサークリップを外してベアリング摺動部を点検。ここで暗雲が立ち込めた。ベアリングのアウターレースにもサビ跡が……。さらに分解すると、クランクジャーナルの一部に虫食いサビが発生していた。このクランクシャフトは、見た目も、分解前の精度も、申し分無かっただけに大変残念だ……

クランクピンのコンディション次第



手際良く分解作業は進んで行ったが、すべての分解を待たずして、このクランクシャフトのオーバーホールは断念せざるを得ない状況となった。2番3番の中央寄りジャーナルベアリング衝動部を始め、コンロッドを受ける各クランクピンベアリングが派手に虫食い状態だった。おそらくエンジン腰上を分解した状態で長らく放置された「水没エンジン」だったと推測できる。

交換用の特殊ベアリングを製作



今後の需要増を想定して特殊サイズのベアリングをメーカー純正部品のベアリングを供給するメーカーへ特注依頼。その精度や信頼性はメーカー純正部品と同じクォリティだ。コンロッドのサイドシムはiBで削り出し製作している。

職人技の組み立て作業

コンロッドの輝きはメーカー純正銅メッキ仕上げならではだ。純粋なるオーバーホールメニューのみならず、長年の利用で油汚れが染み付き、変色しているようなクランクシャフトでも、コンディション次第で見事なまでに蘇る。以前、コンロッドは再利用を前提、もしくは程度の良い部品取りコンロッドを利用したが、オーバーホール需要の増加を見越し、現在ではZ1用コンロッドも特注製作し在庫しているiB。Z1用は新規製作したが、コンロッドスパン(長さ)が異なるZ2用は再利用前提でオーバーホールを受注している。

取材協力:iB井上ボーリング Phone 049-261-5833

POINT

  • ポイント1・ すべての状況で分解オーバーホールが可能とは限らない
  • ポイント2・ ニードルベアリングとサイドシム交換で「現状最善」を図れる
  • ポイント3・ 運送時もしっかり梱包。衝撃が組み立て精度を狂わせる

クランクシャフトまでの修理となると、エンジン「腰下」すべてを分解しないといけないため、大掛かりな修理になる。爆発力を回転力に変えるクランクシャフトのコンディションを考えずに、エンジン性能、エンジンコンディションの良し悪しは語ることができない。簡単にオーバーホールできないため、「芯」が出ているか、曲がっていたり、歪んでいないか? コンディション確認のみ依頼されるケースがあるそうだ。

Z2/Z1用クランクシャフトは、各ベアリングサイズが特殊で、一般入手することができない。クランクのジャーナルベアリングもボールベアリングでなく、すべて於いてニードルローラーベアリングを採用。規格品や通常購入できる商品では適合品が無く、入手するには大きなロット数=膨大な数で新規発注するしか方法が無い。要するに特殊サイズのベアリングを「数多く在庫する必要」があったのだ。

ホンダNSR250Rシリーズのクランクオーバーホールに成功し、経験を積んできたiBでは、次の課題として需要を見込むことができるカワサキZ2/Z1系クランクシャフトの修理再生に取り組むべきと考えた。肝心のベアリングは大量発注&在庫する必要があるが、まずはこれから実現。将来的な「需要増」を見込んで乗り切れる!? と判断した。そのベアリングは痛む例が多いが、内輪側となるクランクジャーナルやクランクピン、そしてベアリングのアウターレースには強い熱処理(焼き入れ)が成されていて、幸いにも摩耗発生例は少なく、再利用できるコンディション部品が多いそうだ。

しかし、車両やエンジンの保管状態が悪かったり「水没」履歴のあるエンジンは、浸水によるサビで虫食いサビが発生している例が多い。そうなると再利用できなくなってしまうことも知っておこう。

残された課題はクランクジャーナルに施された滑り止め線の位置再現だ。この線が組み立て時の精度出しには大きな役割を果たしている。その一方で、当初の組み立て位置からズレて組み立ててしまうと、精度再現は極めて難しいものになってしまう。こんな問題にはカワサキZ系専用のクランク組み立て治具を造り、強制的に正しい位置を再現圧入できるように対策している。しかも治具製作には細かい部分で様々な工夫と試行錯誤があったらしいが、マシニングセンター用治具の製作経験も豊富なiBでは、すべて内製しているそうだ。

完成したZ系クランクシャフトは、納品時に「芯出し結果」や「精度」の管理表を添付。それだけではなく、検査用の純正クランクケースに仮組みして、ベアリングピンの合いやクランクシャフトの回転状況を確認してから納品する体制としている。まれに「最初は軽く回るけど、検査を繰り返すうちに軽い引っ掛かりが起きる」という問い合わせがあるそうだ。この事象はiBでも確認しているが、クランクケースにクランクシャフトを収めた状態で点検すれば事象はなくなるそうだ。寸法精度が出ているクランクシャフトでジャーナルベアリングを全体的に固定することで、正しい芯が出て、軸方向への微妙なベアリングアウターの移動が規制されてスムーズに回るそうだ。

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