ブレーキパッドが摩耗してもレバーやペダルの遊びが増えないのが油圧ディスクブレーキの特徴です。遊びが変わらないのはキャリパーピストンが徐々にせり出すためですが、露出したピストンが汚れると動きが悪くなり、パッドの引きずりやサビの原因にもなります。かすかに擦れ音が聞こえだしたら、ピストンの汚れをチェックして適切に清掃しましょう。

キャリパーピストンが露出する分、汚れによって戻りが悪くなる


パッドダストやホコリや砂利が付着したキャリパーはブレーキクリーナーや中性洗剤で洗浄する。バケツの水にキャリパーを丸ごと入れてブラシで擦っても良い。水で洗浄した後は、エアーブローガンなどでキャリパーピストン周辺に残った水分を完全に吹き飛ばしておく。


乾いたパッドダストが張りついているとパーツクリーナーが浸透しづらいので、ウエスで擦って落とした方が手っ取り早い場合もある。見えやすく手が届きやすい正面だけでなく、キャリパー本体に隠れる裏側も手を抜かず清掃することが重要。キャリパーピストンプライヤーがあれば、ピストンを回しながら作業できるので効率が良い。


ウエスで汚れを拭き取ったらパーツクリーナーで洗い流す。バケツの中で歯ブラシと中性洗剤で洗浄すればキャリパー自体の洗浄も可能だが、スプレータイプのパーツクリーナーにはガス圧で汚れを吹き飛ばせる利点があるので、適材適所で使い分けよう。

ブレーキローターとブレーキパッドのクリアランスは常に必要最小限であることが重量です。レバーやペダルを離した時にキャリパーピストンが大きく戻り、ローターとパッドのが大きく離れると、次にブレーキを掛けた際にレバーやペダルのストロークが深くなり、タイムラグも生じます。転倒や接触などでブレーキローターが僅かでも曲がると、回転時の横振れでパッドが押し広げられ、ブレーキを掛けるたびにエア噛みしているかのようにレバーが深く入ってしまうこともあります。

両者のクリアランスを決めるのに重要な働きをしているのが、キャリパーに組み込まれてピストンと接しているピストンシールとダストシールです。ブレーキフルードがピストンを押し出す際に、シールはピストンに引っ張られて僅かに変形します。そしてレバーやペダルを離してキャリパーから液圧が抜けると、変形したシールが元に戻る力でピストンがキャリパー側に戻り、パッドとローターに僅かな隙間が生じます。

ワイヤーやロッドで作動する機械式ドラムブレーキは、ライニングが摩耗すると遊びが増えるので手動による調整が必要です。しかし油圧ディスクブレーキはパッドの摩耗が進むにつれて、キャリパーピストンのせり出し量も増加することで一定の遊び量で推移するため、レバーやペダルの操作感は変わりません。

キャリパーピストンとシールの関係に注目すると、パッドが充分に残っている間、ピストンは同じ位置で出入りを繰り返します。しかしパッドが摩耗すると、ブレーキローターとの隙間が増えるためピストンはキャリパーからせり出した位置で押さなくてはなりません。その結果、パッドの摩耗量が増えるほどピストンはキャリパーから大きくせり出すことになるのです。

ピストンがキャリパーに収まっている間、ピストン外周はブレーキフルードで潤滑されています。シールとピストンの接触部分にもフルードが付着しており、スムーズな作動に役立っています。

ところがピストンがせり出すと、ブレーキフルードが付着したピストンがキャリパーから外部に露出します。シールがワイパー役となるため滴るようなことはなく、雨天走行などで水分が付着すればある程度は洗い流されます。しかし僅かなフルードや水分がピストンの汚れの原因になる場合もあります。ブレーキパッドが摩耗して粉状になった一部が付着したり、走行中に巻き上げた砂利やホコリが張りつくこともあります。

キャリパーピストンに付着した汚れはピストン自体のフリクションロスをを増加させ、キャリパーへの戻りが悪くなったピストンはパッドとローターの引きずりの原因にもなります。ブレーキレバーから手を離しても、パッドとローターが擦れているような音がする場合は、パッドとキャリパーピストンを確認してみましょう。そしてピストンに汚れが堆積している時は、中性洗剤やブレーキクリーナーで丁寧に清掃します。

POINT

  • ポイント1・ブレーキキャリパーピストンはキャリパーシールの弾力と復元力でパッドとローターの適正な隙間を維持する
  • ポイント2・キャリパーピストンに汚れが堆積するとスムーズな動きが妨げられ、パッド引きずりの一因となる

清掃後は適切な潤滑剤で動きを改善してサビも防止


メタルラバーはブレーキキャリパーやマスターシリンダーのメンテナンス時の定番ケミカルといっても過言ではない。潤滑剤の中にはゴムを膨潤させてしまう成分を含むものもあり、ブレーキパーツに使用するには慎重なチョイスが必要。メタルラバーはゴムへの影響がなくグリコール系のブレーキフルードに溶解するので、キャリパー内部でフルードと接触しても安全。逆にシリコン系フルードを使用するブレーキには使えないので要注意。


メタルラバーを塗布したらキャリパー内にピストンを押し戻し、シール表面にも潤滑成分を行き渡らせる。キャリパーピストンを出したり戻したりする揉み出しを行うことで、キャリパーツールがなくても指で押し戻せるほど滑らかに動くようになる。

ブレーキング時にブレーキパッドの熱が伝わるため、キャリパーピストンの汚れは比較的乾燥した状態にあります。しかしブレーキフルード自体は湿気を呼びやすい液体なので、メンテナンス状況や保管状態によってはピストンにサビが発生することもあります。

錆びやすいのはキャリパーシールが接触する境界部分や汚れが多く堆積した部分です。硬質クロームメッキで処理されたピストンですが、メッキの表面には目に見えない?単位の穴が無数にあるため、運悪くそこから水分が浸透するとメッキの下でサビが進行してしまうのです。

そうならないためにも清掃が重要なわけですが、中性洗剤やパーツクリーナーで脱脂洗浄を行うと防錆作用もなくなり無防備になってしまうため、表面保護と作動性向上のためのケミカルを塗布します。

ここで使用するのは金属とゴムの接触面の潤滑に効果のある潤滑剤です。代表的な製品として知られているのがシーシーアイのメタルラバーです。MR20の品番で知られるメタルラバーは、ブレーキや油圧クラッチなどの組み付け液として優れた潤滑性を発揮するケミカルです。金属に対して防錆作用があり、ゴムや樹脂を傷めずグリコール系のブレーキフルードに溶解するのも特徴です。

メタルラバーを使用する際は、キャリパーから脱落しない程度にピストンを前進させた状態で外周にまんべんなくスプレーし、滴るような余分を拭き取ってからキャリパー内に押し戻します。メタルラバーが付着した状態で押し戻すことでダストシールとピストンシールの表面にも行き渡り、ピストンの作動性も良くなります。

キャリパーピストンの清掃と潤滑は新品ブレーキパッド装着時はもちろん、使用中のパッドでも有効です。しかし摩耗が進行したパッドを装着するとピストンのせり出しが多くなり汚れが付着しやすくなるため、露出部分にメタルラバーが残りすぎないようウエスなどで拭き取っておくと良いでしょう。

POINT

  • ポイント・清掃後にゴムシールに適した防錆潤滑ケミカルを使用することでキャリパーピストンの作動性が向上する

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    いやもう・・・勘弁してくださいよ・・・
    こんな記事をさも正しいメンテ方法と言わんばかりに紹介するもんだから、酷い状態の車両が増えるんだ(涙)

    こんなんやるぐらいならキャリパーOHしましょう。
    その技術が無いなら素直にバイク屋に依頼しましょう。

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