
マフラー交換やパワーフィルターの装着によって、吸排気コンディションに変化が生じると、キャブセッティングが合わなくなってしまい、スロットルレスポンスが今ひとつ調子悪くなってしまうことがある。ここでは、セッティングがビシッと出ると乗りやすくなる「ジェットニードルの働きと受け持ち領域」に注目し、セッティングを見直してみるのも一考だ。
目次
4連キャブの脱着時は慎重に
エンジン腰上のオーバーホール時に、ラバーインシュレータやインレットパイプを新品部品に交換していたので、想像以上にスムーズかつスピーディに脱着することができた4連キャブレターASSY。ゴムが劣化して硬いと脱着しにくいので、ヒートガンで優しく温めることで脱着しやすくなる。ケミカルも併用しよう。
スロットルバルブを抜かないと外せない!?
スロットルバルブからジェットニードルを抜き取るには、残念ながらスロットルシャフトを完全に抜き取らなくてはいけない。こりゃ面倒な設計のキャブだ!! 実は、事前にそれを知っていたので、ジェットニードル交換=燃調セッティングが延び延びになっていた。ビスが固着気味のときには小型のショックドライバーで緩めるのが良い。スロットルシャフトに固定してあるビスやボルトをすべて抜き取ったらシャフトを抜き取る。マイナス溝にマイナスドライバーを押し当てながら右側へ押し抜いた。
スロットルバルブに差し込まれるニードル
ジェットニードルの抜き取り&交換作業は、1気筒ずつ確実に進めていこう。一度にバラしてしまうとごちゃごちゃになって面倒なことになってしまうので慎重に進めよう。スロットルバルブに組み込まれるジェットニードルの固定は、リンク先端ブロックに押し付けられつつ固定されている。分解したパーツが磨耗していたり、キズが無いかも確認しよう。
ストレート径の違いはマイクロメーター測定できる
モデル別燃調キットの説明書には、ジェットニードルの寸法仕様が明記され、それに合わせて打刻もあるのでしっかり確認しよう。手元にマイクロメーターがあるときには、その違いを測定してみると良い。ストレート径の比較を瞬時行いたい際には、マイクロメーターで寸法測定するのではなく、ノギスで同じ箇所を挟んでズレ落ちる方が細いと判断することもできる。あくまで正確な太さはマイクロメーターで測定しよう。5/1000mm違えば、セッティングは大きく変化するのだ。ノーマルに対して1ランクストレート径が細いジェットニードルをチョイスしてみた。クリップ段数は同じにした。
静的4連同調は太い針金や溶接棒がベスト
ジェットニードルを交換して組み立て終えたら、スロットルバルブの全閉&全開操作を繰り返し行い、作動性を確認したら、やや太目の針金(または溶接棒など)で4連スロットルバルブの開き量を確認調整しよう。トップカバー内の調整機能と同じ太さの針金でバルブの開き量を均一に調整する。
「シャッターの窓」付いてますか?
同調確認がとれたら各部を増し締めして、4連スロットルがスムーズに作動するか確認してみよう。次に、チョークシャッターを閉じて、4つすべてが確実に作動しているか目視確認する。実はカワサキミドル系キャブレターは、シャッターの「D字型の窓」が外れて無くなっている例が多い。分解時にはチョーク周辺も確認しよう。
- ポイント1・アイドリング域や全開域ではなく、スロットルコントロールで重要なのは「開け始め」のセッティング
- ポイント2・ マルチキャブレターの場合はバランスも重要
- ポイント3・ ジェットニードルの「ストレート径」で乗りやすさ、乗り難さが決定する
寒波襲来で早朝のエンジン始動時には、なかなか始動できず「困ってしまった」といったお話を聞くことがある。始動不良原因のひとつには、キャブセッティングがある。エンジン始動できても、なかなかエンジンが温まず、アイドリングが安定しないのも、キャブセッティングに由来することが多い(すべてがそうだとは限らない)。通常なら、スターターチョークを利用して、チョーク=シャッターを全閉にしてエンジン始動。一般的な始動手順としては、チョークレバーをフルに引いてからエンジン始動。その直後には、レバーをほんの僅かだけ戻してスロットルを少しだけ開いてエンジン回転をキープしながら暖機開始。しばらく待ってから暖機感を得られたら、チョークレバーを半分まで戻して、優しい空吹かしを数回。普通なら、この空吹かし後にチョークレバーを全戻しにして、その後は「低回転で走りながら暖機する」のが、旧式バイク=旧車エンジン始動儀式である。2ストエンジンの場合は、可能な限りチョークレバーもしくはスターターレバーを早く戻し、スロットル操作で暖機進行した方が良い。
実は、真冬に入る前から、エンジン始動の際に「ややガス薄感」を得ていたのがカワサキZ550GPだった。特に、寒波の中でエンジン始動すると、空気密度(寒い日は空気密度が高くなる)に対して、ガス薄症状が顕著になり、始動直後にチョークを半分も戻せば、即座にエンジンストールしてしまう状況だった。騙し騙しチョークレバーを引くことで暖機運転を続行できるが、あまりにも時間が掛かってしまう状況だった。ちなみに標準装備されるTK製キャブは、チョーク機能(シャッター)とファストアイドル(ガソリン供給機能)が連携していて、シャッターを全閉域にすると強制開閉のスロットルシャフトが作動し、スロットルが少し開く仕組み=高めのアイドリングをキープできる。そんな機能があっても、暖機コントロールしにくいセッティングになっていた。
そんな面倒な症状は、キャブセッティングをしっかり出せば解決できる。おそらくジェットニードルの「ストレート径を現状より細く」すれば、スロットル開け始めが僅かに濃くなり、ストール症状は減るはずだ。ちなみにストレート径をワンランク細くすれば(モデルによって異なるが1~2/100mm程度の違いで症状が改善されることも)、間違いなく効果体感できるはず……。ノーマルキャブからスペシャルキャブ(CRスペシャルやFCRなど)へ交換した際に、このような症状が起こりやすい。過去に何度か似たような経験があったので、今回の原因も「そこにあるはず!?である」と考えたのだ。
キャブASSYを取り外してジェットニードルを交換。スロットル開け始め時のガスの濃さが変わる、ストレート径がワンランク細い仕様に「キースターの燃調キット」で交換。スロットルバルブの静的同調を終えてから復元すると、これまでと違ってエンジン始動直後の暖機安定性が著しく向上!! 始動直後にシャッターチョークを大きく開けてもエンジンはストールしなくなったし、チョークレバーの角度調整によってエンジンの暖機回転数を増減できるようにもなった。夏場になるとガスが濃くなる可能性もあるので、そんなときにはニードルクリップの段数調整で微調整すれば良いだろう。
ちなみに酷暑時の真夏には、異常なほどのオーバーヒートに悩まされたことがあった。キャブセッティングが薄いと、オーバーヒートになりやすいことも知っておくと良い。油温計を取り付けて、通常走行時に120℃に達したので、明らかにオーバーヒートだった。そこで、メインジェットを5番大きくしたら、その他に変更は無いのに、同条件の走行で油温表示は105℃になった。真夏の市街地走行でアベレージ105℃なら決して悪くない。渋滞時でも120℃前後だったことを考えれば「燃料冷却の効果」は大きく、メインジェットの変更後でも「スパークプラグが真っ黒にかぶる」ことも無かった。つまり当初のセッティングがガス薄だったのだ。燃調キットと油温計の装備で、より楽しく走ることができるようになった。
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