
ジェネレーターで発電した交流をレクチファイヤーで整流して直流に変換して、バッテリーを充電するためにレギュレーターで電圧を調整するのが充電装置の概略です。電気が苦手なライダーにとっては、この時点でちんぷんかんぷんかも知れませんが、絶版車の中にはレギュレーターを持たない機種もあったと言ったらどうでしょう。電圧を調整せずにどうやってバッテリーを充電するの?と疑問に思うのもごもっともです。
ジェネレーターの発電量次第ではレギュレーターは不要だが、バッテリー過充電のリスクがつきまとう

250ccクラスのヤマハ車用純正レクチファイヤーレギュレーター。ジェネレーターは三相交流タイプで、4ピンカプラーのうち3本がジェネレーターからつながり、残る1本がバッテリー充電用に直流に整流され電圧も制御されたプラスの出力となる。マイナスはケース自体を車体にアースする。

1960年代末に販売されていた90ccのヤマハHS1は、シートレール下にシリコン整流器(ダイオード)を用いたレクチファイヤーを装備。レギュレーターはなく、発電したすべての電気はバッテリー充電に使われる。

レクチファイヤーにつながる配線は3本。緑と白がジェネレーターから入力する交流で、赤がバッテリーを充電するために出力となる。レクチファイヤーをフレームに固定するボルトがアース端子で、フレームに固定されるバッテリーのマイナスリード線によって回路が成立する。
バイクや自動車に搭載されるバッテリーは私たちの身近にある乾電池と同じ直流電池で、プラス極とマイナス極は決まっています。これに対してエンジンと一緒に回るジェネレーター(オルタネーター)が発生する電気はプラスとマイナスが周期的に入れ替わりながら波のように発生する交流です。1960年代前半までのバイクや自動車の中には、直流を発電するダイナモを搭載したものがありましたが、その後はジェネレーターが主役となります。
ジェネレーターが発電するのは交流なので、直流であるバッテリーをそのまま充電することはできず、交流を直流に変換する整流が必要です。そのためのパーツがレクチファイヤーです。交流は時間経過と共に、0Vからプラスの電圧、プラスから0V、0Vからマイナス、マイナスから0Vと周期的に入れ替わっており、この流れにレクチファイヤーを加えることで、0Vから上のプラスの電気だけを取り出すして直流化でき、その直流でバッテリーを充電します。
レクチファイヤーとセットで使われるのが、電圧を制御するボルテージレギュレーターです。一般的な鉛バッテリーの場合、電池としての単位当たりの電圧はおおまか2Vです。これを1セルとして3つ直列につなげば6Vとなり、6つつなげば12Vバッテリーになります。
バッテリーは放電すると電圧が低下するため充電しなくてはなりません。とはいえ、バッテリーの電圧は6Vか12Vと決まっており、20Vで充電したからといってバッテリー電圧が20Vになることはありません。むしろ電圧が高すぎれば過充電となり、バッテリーに悪影響をもたらします。それを制御しているのがレギュレーターです。
交流を直流に整流するレクチファイヤーと充電電圧を制御するレギュレーターは一心同体のような関係性です。かつてはそれぞれが独立した電気部品として存在していましたが、半導体の普及によって現在ではレクチファイヤーレギュレーター(レギュレートレクチファイア)として一体化されています。
しかし原付クラス絶版車の中には、ボルテージレギュレーターを装備していないバイクもあります。発電自体は交流で行うので、直流へと整流するレクチファイヤーは装備していますが、バッテリー自体を電圧を制御するレギュレーターとして使っているのです。先に説明したようにバイク用のバッテリーは6Vか12Vで、それ以上の電圧を加えてもバッテリー自体が9Vや15Vにはなりません。だからバッテリーで作動するウインカーやブレーキの球が切れることはないのです。つまりレギュレーターとしての機能があるということです。
レギュレーター付き発電装置の考え方は、ジェネレーターは電圧を上げるだけ上げて、余分はレギュレーターでカットするというものですが、レギュレーターを持たない発電系はジェネレーターの発電能力とバッテリー電圧がバランスするよう設計することで過充電を防止します。
6Vでも12Vでもバッテリーを充電するには、バッテリー電圧より高い電圧を加えなければなりません。レギュレーターはバッテリーと車体各部の電気装置の需要と供給をにらみつつ、必要に応じて充電とカットを行いますが、レギュレーターがなければジェネレーターで発電した電気はとりあえずバッテリーの充電に使われます。この充電が電気装置で都合良く消費されれば釣り合いますが、例えばウインカーもブレーキもまったく点灯させずエンジン全開でジェネレーターが発電し続けたらバッテリーが過充電となり、絶版車用バッテリーに多い開放形だと電解液が揮発して機能不全に至ります。
走行中に車体各部の電球が次々と切れる怪現象に遭遇したことのある6V絶版車ユーザーは少なくないと思いますが、これは電解液の揮発に気づかず走行を続けたことでバッテリーがパンクして、電圧制御ができなくなった結果です。
- ポイント1・バイクや自動車の電気は交流で発電され、レクチファイヤーで直流に整流、ボルテージレギュレーターで電圧を制御してバッテリーを充電する
- ポイント2・排気量が小さい絶版車や旧車の中にはバッテリー自体で電圧をコントロールしてレギュレーターを装備しない機種も存在する
レギュレーターのない絶版車に現行用パーツを付けるだけで、充電電圧の制御が可能になる

右のレクチファイヤーレギュレーターはジェネレーターから入力する交流が3本で出力が1本なので4ピンとなるが、入力と出力の関係は左の半世紀前のレクチファイヤーと同じ。4ピンのレクチファイヤーレギュレーターで入力と出力でどのピンを使うのかは、車体側ハーネスの配線色や車体配線図などで確認が必要。

これはヤマハHS1のレクチファイヤーの結線図。電流を一方向だけに流すダイオードを組み合わせることで、プラスとマイナスを交互に出力する交流からプラス側だけを取り出して直流化する。図の例では、緑と白は周期的にプラスとマイナスが入れ替わるが、赤からの出力は常にプラスとなりバッテリーを充電できる。

HS1のジェネレーターは発電コイルから緑と白の2本の配線が出る単相交流と呼ばれるタイプなのに対して、この配線図のジェネレーター(図ではACマグネトー)は3本の配線がレクチファイヤーレギュレーターにつながる三相交流タイプ。三相は単相に比べて発電効率が良く、同じ電力を発電する際にもジェネレーターを小型化できる。

車体側の配線と流用装着するレクチファイヤーレギュレーターをつなぐカプラーを用意する。HS1の配線色に合わせた緑と白が交流の入力で、赤が出力となる。

シートレール下のスペースにレクチファイヤーレギュレーターを装着。取り付けの際に重要なのは、ケースを確実に車体アースすること。ここでは取り付けビスからバッテリーのマイナスターミナルに直結する専用線を設置した。レギュレーター機能が追加されたことで、バッテリーの状態が良い時には充電をカットして過充電を防止できるようになった。
レギュレーターが付かない時代のバイクのジェネレーターは、それで充放電バランスが合うように設計されていますが、実際には過充電で干上がるバッテリーは少なくありません。そうならないよう、電解液の量を定期的にチェックすれば良いのは確かですが、今のバイクの感覚では面倒臭いのも事実です。
解決方法として有効かつ現実的なのがレギュレーターの追加です。具体的には絶版車に装備されているレクチファイヤーを、今のバイクに装着されているレクチファイヤーレギュレーターに交換するのです。レギュレーターが付くことで、バッテリーが過充電になるような電圧はカットされるので、オーバーチャージの心配から解放されます。
考え方はシンプルですが、いくつかの注意点もあります。まず第一に6V車には6V用、12V車には12V用のレクチファイヤーレギュレーターが必要です。6V用のレクチファイヤーレギュレーターは4ミニ系のパーツを取り扱うネットショップなどで販売されています。
12V車の場合、車体側の照明系統の回路によって必要な部品が異なります。原付クラスの12V用レクチファイヤーレギュレーターでポピュラーなのは、キャブレター時代のホンダモンキーを代表としたヘッドライトやテールランプを交流で点灯させる機種用の互換部品です。
それらの機種では、レギュレーターで発電した交流のうちバッテリーを充電する分はレクチファイヤーレギュレーターで整流と電圧制御を行いますが、ヘッドライトやテールランプ用に発電された分は交流のまま電圧のみ制御されて使われます。この方法は6Vの原付車でも一般的な発電方法です。
そして12Vでレギュレーターを装備しない絶版車の中には、ここで紹介する1960年代のヤマハ90ccのように、中型車以上と同様に発電した電気をすべてバッテリーに充電して、ヘッドライトやテールランプもバッテリーで点灯する機種もあります。こうしたバイクはほとんど生き残っておらず圧倒的に少数派ですが、電気系のアップデートは有効です。
発電した電気をすべて充電に使うタイプの絶版車では、モンキー系のような交流ヘッドライト車用ではなく、中型車以上向けのレクチファイヤーレギュレーターを流用します。中型車以上のジェネレーターは三相交流タイプが主流で、原付クラスとはジェネレーターコイルの構成が異なりますが、部品自体は使用可能です。
半導体を用いたシリコン整流器といっても、半世紀以上前のバイクのレクチファイヤーはサイズも大きく無骨です。それに比べればレクチファイヤーとレギュレーターが一体化した現行部品はコンパクトで、バッテリーに優しいのが魅力です。
電気が苦手なライダーにとって、座学だけでそれを理解するのは難しいと思います。過充電でバッテリーが干上がるといった不具合や不満があり、レギュレーターの未装備が原因であることを知り、それを解消するための対応策を考えることで電気系統に対する苦手意識も徐々に解消できるかも知れません。
- ポイント・絶版車のレクチファイヤーを現行車用のレクチファイヤーレギュレーターに交換するとバッテリー充電電圧の制御が可能になる
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