スロットルやクラッチ、ドラムブレーキならブレーキなど、バイクのさまざまな動きをコントロールをするために使われているのがケーブルです。スチールやステンレスの細い線をより合わせてしなやかさと強度、耐久性を持つケーブルですが、日頃のメンテナンスによって作動性や寿命に大きな差が生じます。ケミカル類を適材適所で使い分け、ケーブルの能力を最大限に引き出しましょう。

想像以上に汚れているケーブル内部。注油の前にまず洗浄


クラッチレバーを握った時の重さが、クラッチスプリングの反力なのかクラッチケーブルのメンテナンス不足なのかは判断しづらい。だが「以前はこんなに重くなかったはず」「レバー操作が重い上に動きが渋い」のならケーブルのメンテナンス時期かも知れない。インナーケーブルの油分が切れ汚れた上に新しいグリースを塗布しても充分な効果を得られないので、まずはパーツクリーナーで洗浄する。しばらくメンテナンスを行っていなければ、ケーブルインジェクターを装着してクリーナーをスプレーするとクラッチレリーズ側から汚れやサビが大量に出てくるはずだ。


スピードメーターやタコメーターがケーブル式だったら、それらのケーブルも洗浄と注油の対象になる。スロットルやクラッチと違って回転するコイル状のケーブルなので、ケーブルのレイアウト次第ではインナーケーブルが切断してしまうこともある。それを防ぐのが適切なグリスアップだ。インナーケーブルが抜けるタイプなら、ケーブルをパーツトレイなどに入れて洗油やパーツクリーナーをスプレーして汚れを落とし、アウターケーブルはパーツクリーナーを充分にスプレーした後にエアーブローで汚れを吹き飛ばすと良い。

スチールからステンレスに素材が代わり、単より線から複より線に製法が変わることで、バイクに使われているケーブル類はサビに強く動きが滑らかになっています。雨ざらしのママチャリのブレーキや変速機のケーブルが真っ赤に錆びていることがありますが、同様に露天保管でもバイクのケーブルがそれほど錆びないのは、主に素材の違いが理由です。

製法の違いについては、1960~70年代頃までの主流だった単より線から複より線の勢力が拡大することで、曲げに対して強くなり、曲がった状態での作動性も格段に向上しています。またケーブルの外皮をポリマーコーティングすることで、アウターケーブルとのフリクションロスを軽減しつつ長寿命化を図っているものもあります。

絶版車用のリプロダクトケーブルで、アウターケーブルの見た目は当時物風でも、インナーを現代仕様に変更するだけで、スロットル操作やクラッチ操作が劇的に軽くなるという例もあります。現代のバイクに比べて絶版車はすべてが重いと思われがちですが、重さの原因は実はケーブルのフリクションロスだった、ということもあるのです。

操作系の伝達装置としてはいかにも古典的なケーブルは、素材や新技術によって着実に進化していますが、洗浄と注油という基本的なメンテナンスが必要なのは不変です。ケーブルはアウターとインナーの二重構造で、アウターケーブル両端のレバーやレリーズ部分でインナーケーブルが露出する場合が多く、ここから雨水やホコリや汚れが入り込みます。またあらかじめインナーケーブルに潤滑油が塗布してあっても、雨水や汚れによって使用過程でその効果が低下していきます。

ケーブルの汚れによるフリクションロスの増加は徐々に進行するため、なかなか変化に気づきません。しかし注油後には明らかに動きが軽くなることを実感できます。つまり油分が切れることでそれだけ操作性が悪くなるということです。

ケーブルにとって定期的な注油が有効なのは間違いありませんが、注油の前には洗浄を行うのが必須です。ドライブチェーンでもアクスルシャフトでも同じですが、汚れの上にグリスを塗っても大きな効果は得られません。

ケーブルインジェクターなどを取り付けてアウターケーブルとインナーケーブルの隙間にグリーススプレーを噴射する場合、グリースを塗布する部分が直接見えないので、事前の洗浄に意味があるのかどうか疑うことがあるかもしれません。しかしグリースの前にパーツクリーナーをケーブル内にスプレーすると、反対側から真っ黒く汚れたクリーナーが排出されます。インナーケーブルがスチール製なら、サビで赤茶色に変色したクリーナーが出てくるかも知れません。

カーブ部分のケーブル内部ではインナーとアウターが擦れながら作動しており、付着した汚れやホコリが研磨材のように作用して摩耗が進行します。汚れていても新しいグリースが行き渡れば作動性は改善されますが、研磨材が広く拡散した中でケーブルが動くのを想像するのは気分が良いものではありません。そう考えると、ケーブルに注油する前にはまず洗浄という意味が分かると思います。

POINT

  • ポイント1・ケーブル内の汚れは徐々に進行してフリクションロスの増大や摩耗が進行する
  • ポイント2・メンテナンスの際は先にパーツクリーナーで洗浄した後に油分を注入する

ケーブルの潤滑は専用ケミカルを使うのが安心


洗浄時と同様にケーブルインジェクターを使ってケーブルグリースを注入する。エンジンオイルやギヤオイルを注入する場合はケーブルを単品にして縦向きに吊して、アウターケーブルの上端にじょうご状にした小さなビニール袋などをテープで貼り付け、オイルを流し込むとケーブル内部に浸透する。


スロットルホルダー部分で大きく向きが変わるスロットルケーブルも注油が不可欠。潤滑不足でフリクションロスが大きいと、デリケートな操作が難しくなる。スロットルスリーブに巻き付くケーブルとタイコの接合部分はスロットル開閉時に繰り返し曲げ伸ばしされてストレスが加わるため、スプレータイプではなくペーストタイプのグリスを塗布しておく。

洗浄が終わったケーブルに注油する油分に何を使うか?ケーブル用潤滑剤には雨水などが付着した際の防錆性能、インナーとアウターケーブルが強く擦れる部分を保護する油膜強度、短期間で流出しない高い定着性、ケーブル動作に支障を与えない低フリクション性といった性能が求められます。

バイクで使われるケーブル類は大半に高低差があり、粘度の低い潤滑剤だと油分が定着しづらく流出してしまいます。だからといって粘度の高いオイルやグリスを使えば操作性に影響を与えます。またケーブル内に浸入する水に対しては、潤滑だけでなく防錆能力も重要です。

こうした条件に対する最適な解答が、ケーブルやワイヤー潤滑用に開発された専用グリースです。汎用性の高い防錆潤滑剤やグリーススプレーとは違い、ケーブルグリースはケーブル潤滑に的を絞っているだけに、安心して使えるのが魅力です。

ワイズギアから販売されているヤマルーブのワイヤーグリースの成分には、グリースとともにフッ素樹脂が含有されていることが明記されています。フッ素樹脂は摩擦係数の低さや滑り性の良さが大きな特徴で、屈曲部で当たりが強くなるケーブルの潤滑に適した素材といえます。油分であるグリースに加えてフッ素樹脂を加えることで、一般的なグリーススプレーよりケーブル向きであると言って良いでしょう。

先述したようにケーブルの油分低下の影響は徐々に現れるため、メンテナンスの時期を判断するのが難しいという面があります。ですから走行距離や期間など、自分なりに基準を決めて洗浄と注油を行うことで、スムーズな操作性と長寿命化を両立できると思います。

POINT

  • ポイント・高負荷で作動するケーブルの潤滑にはケーブル専用グリースが適している
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