
キャブレターはガソリンエンジンを動かすために必要な混合気を作るための要となる部品です。長年に渡りキャブレターのパーツを開発、製造してきたキースターでは、そのノウハウを活用してさまざまな製品を生み出してきました。ここではキースターが展開しているバイク向けのキャブレター用パーツとそれぞれの特徴を紹介しましょう。
純正キャブをセッティングできる上に、メンテナンスやオーバーホールに必要なパーツも入った燃調キット
エアークリーナーボックスをパワーフィルターに交換したり、排気効率の高いマフラーを装着して純正キャブレターのセッティングが合わなくなった時に燃調キットが活躍する。また長期保管、長期放置車のキャブを清掃、オーバーホールする際にも、ガスケットやOリング類などがすべて揃う燃調キットは、バイクメーカーのパーツリストから1点ずつリストアップする手間が省けて便利。
画像では4個だが、燃調キットのメインジェットはノーマルを中心に6サイズ。キャブセッティングにおいては、メインジェットのサイズを大きくすればより多くのガソリンが流れてパワーアップするというものではない。あくまでキャブレター内を流れる空気とジェットから供給されるガソリンをバランスさせることが重要。
上部のストレート部の直径と、中間から先端にかけてのテーパー角度の組み合わせによって、スロットル開度1/8から3/4の範囲のガソリン流量を決めるのがジェットニードルは、純正ニードル相当を中心に4サイズが揃う。このニードルはピストンバルブにセットした際の高さが常に一定だが、機種によってはEクリップの位置でセット位置が変更できるものもある。その場合、ストレート径とテーパー角度と合わせてさらに細かい混合比調整が可能となる
ピストンバルブキャブレターはスロットルでピストンバルブを直接作動させるが、負圧キャブレターのピストンバルブは吸入負圧によって作動するため、スロットル全開=負圧ピストン全開とならないこともある。したがってジェットニードルのセッティングをスロットル開度だけで判断するのは難しい。
今でこそフューエルインジェクションが主流ですが、内燃機関が誕生した時からインジェクション登場以前の時代のバイクや自動車のエンジンはすべて、キャブレターで作られた混合気によって動いていました。
可変ベンチュリー型と呼ばれるバイクのキャブレター内部にはパイロットジェット、メインジェット、ジェットニードルといった部品が組み込まれており、スロットル開度に応じて変化する吸入空気量に合わせて適切なガソリンを計量しています。
バイクメーカーが新車を製造する際は新品のエンジンと新品のキャブレター、新品のマフラーを組み合わせて開発を行い、その組み合わせで最善のエンジンパフォーマンスが得られるように仕様を決定してます。
しかし走行距離が増えて経年変化が加わることで、エンジンのコンディションが変化したり、カスタムの一貫として排気効率の良いマフラーや吸気効率が向上するエアクリーナーを装着すると、エンジンが吸い込める空気量や排気効率が新車状態から変わり、キャブレターの中でも変化が生じます。
そうした場合に必要なのがキャブレターのセッティング変更です。例えば純正状態より多くの空気がキャブレターを通過できるようになった場合、その空気に見合ったガソリンを供給しなくては混合気のバランスが崩れます。逆に経年劣化によってエンジン自体のコンプレッションが低下して吸い込める空気量が減った場合、それに応じてガソリン量を変化させることが必要です。
バイクメーカーではエアークリーナーボックスやエアクリーナーエレメント、マフラーといった吸排気系パーツの組み合わせを決めてキャブレターを開発します。もちろんエンジンも新品です。ここで決めたセッティングは、経年変化を見越したある程度の変化に対応できる許容範囲がありますが、そのレベルを超えてしまうと混合気が濃すぎる、あるいは薄すぎるといった不具合が生じます。
そんな時に重宝するのが、キースターの製品ラインアップ中で主力アイテムとなるのが「キャブレター燃調キット」です。
バイクメーカーの純正キャブレターはあくまで新車かつノーマル状態で開発を行っており、後からユーザーがセッティングすることまでは考慮していません。したがってほとんどの機種ではジェットやジェットニードルのサイズは単一で変更できません。唯一ジェットニードルは純正部品でクリップ段数の変更ができる場合もありますが、それにしても変化の幅は限定的です。
キャブレター燃調キットが画期的なのは、これまで変更不可能とされてきた純正キャブレターのセッティングを可能としたことです。キャブレター内でガソリンを計量するパイロットジェット、メインジェット、ジェットニードルの3つの部品がセッティングの要となりますが、キースターではこれらのパーツを独自に製造しています。
現在、燃調キットは原付クラスからオーバー750ccのビッグバイクまで500機種以上にわたり、バイクごとのキャブレターの純正データをベースに、3サイズのパイロットジェット、6サイズのメインジェット、4サイズのジェットニードルを基本に構成しています。バイクメーカーの純正パーツにはないジェット類を独自のノウハウで製造することで、混合気の濃さを自在に調整できるのが大きな特徴です。
もうひとつ、オーバーホールやメンテナンスに使えるパーツが含まれている点も見逃せません。ジェットを交換する際にはフロートチャンバーを着脱しますが、年式が古いバイクではフロートチャンバーガスケットが硬化してシール性を保てない例は少なくありません。また4気筒用キャブレターでは隣り合うボディでガソリンを行き来させるフューエルジョイント部のOリングが劣化していることもあります。
燃調キットにはゴム部品をはじめパイロットスクリューやニードルバルブ、フロートチャンバーのドレンスクリューやスタータープランジャーなど、キャブレターを分解した際に交換しておきたいあらゆる部品が含まれています(パーツ構成は機種によって異なります)。そのため細々としたパーツのリストアップは必要なく、機種を指定するだけで必要な部品が一度ですべて揃うので、メンテナンス用キットとしても魅力的です。
純正キャブレターと同様に機種別に設定されているFCRキャブレター用燃調キット
FCR燃調キットは車両1台分のパーツがセットされ、2気筒車でも4気筒車でも1セット購入すればよい。画像はカワサキGPZ900R用φ37ホリゾンタルFCR向けの燃調キット。3種類のパイロットジェットと6種類のメインジェット、4種類のジェットニードル、フロートバルブやバルブシートやガスケットもすべて4つのキャブレター分入っているので、純正キャブ用の燃調キットより内容量が断然多い。
ボディ下部からねじ込む筒状のニードルジェットに対して、スロットルバルブにセットしたジェットニードルが入り込む。ジェットニードルのセッティングを行うにはニードルジェット上部の穴径が重要で、4連キャブのジェット上部の穴径が腐食や摩耗でまちまちだと、4本のニードルを揃えてもガソリンが吸い出される隙間のサイズがバラバラになってしまい、セッティングが揃わない。長期保管でニードルジェットが腐食しているような場合は交換が必要だ。
メーカーもこの部分は非分解としており、補修用の部品も設定していない。しかしインターミディエイトにはご覧のような細くて複雑な形状のゴム製ガスケットが組み込まれており、空気とガソリンの流路を区画している。不用意にゴムが膨潤するようなクリーナーやケミカルを使うと、目に見えない箇所で不具合が発生してセッティングに影響することもあり得る。長期間使用された中古のFCRキャブは、セッティング前のオーバーホールでこのあたりのガスケットを交換しておくと良いだろう。
スロットルレスポンスの良さと全開時の圧倒的なパワーフィーリングで、チューニング&カスタム好きがこぞって装着するのがケーヒン製FCRキャブレターです。元来レース用として開発されたFCRは、ベンチュリー口径と組み立てピッチを任意に設定できる汎用パーツであり、機種を問わず多くの4ストロークモデルに装着できるのが特徴です。そのため純正キャブと異なり、パイロットジェット、メインジェット、ジェットニードルなどのセッティングパーツがケーヒンから数多くリリースされています。
ただ、どんな機種にも取り付け可能な汎用キャブレターといっても、現実的にはパーツコンストラクターや取り扱い代理店が機種ごとにセッティングを決めて商品化し、カワサキGPZ900RオーナーならGPZ900R用の、ホンダCB400スーパフォアオーナーならスーパーフォア用にプリセットされたFCRキットとして購入するのが一般的です。
ここで問題となるのが、純正キャブレター用燃調キットの説明でも触れた、吸排気系の仕様によるキャブセッティングです。機種別に設定されているとはいえ、セッティングを決める際のマフラーが純正なのかアフターマーケット品なのか、吸気系がエアーファンネルかのかパワーフィルターなのかエアークリーナーボックス仕様なのかによって、ジェットやニードルの選定は変わるはずです。厳密に言えば、製品として販売されているFCRキットのセッティングがすべてのユーザーにとってベストとであるとは限りません。
レーシングキャブといってもセッティングのストライクゾーンには一定の幅があり、多くのユーザーが不満を感じない状態で販売されているパターンがほとんどです。しかし中にはカムシャフト交換や排気量変更などにより、市販状態のセッティングでは本来のパフォーマンスを楽しめないことがあるかもしれません。
そんな時に役立つのが、FCRキャブレター用燃調キットです。先述の通り、レーシングキャブであるFCRにはジェットやニードルが豊富に用意されています。しかしキースターでは、機種別に存在するFCRキットをベースにジェットやニードルの入組を決めているのが大きな特徴です。
ベンチュリー径φ37mmのホリゾンタル4連キャブを例に挙げても、ZRX1200R用なのかGPZ900R用なのかゼファー1100用なのかGSX1100S用なのかでピッチが異なるのはもちろん、ジェットやニードルの仕様も異なります。
そこでキースターでは、機種別キットの標準セッティングを参考に、燃調キットで培ったノウハウを活用して独自にジェットやニードルのセッティング幅を決めています。FCR燃調キットには3種類のパイロットジェット、6種類のメインジェット、4種類のジェットニードルが含まれます。この入組内容によって、エアーファンネルやパワーフィルター、マフラーの仕様やエンジン本体の仕様に対して、幅広く対応できるようになっています。
さらに特筆すべきポイントは、キャブボディの完全オーバーホールに対応するオリジナルパーツが含まれている点です。
FCRキャブはメインボディ、インターミディエイトボディ、フロートチャンバーの三層構造となっていて、メインボディとインターミディエイトボディは非分解設定となっています。そして両ボディの間には特殊な形状のゴム製ガスケットが挟み込まれています。このガスケットは吸気やガソリンの通路を区別する重要な部品ですが、メーカーで非分解となっているため部品の設定がありません。
ところが、汚れたボディの洗浄やオーバーホールの際に使用するケミカル類の性質によってはガスケットのゴムが膨潤、劣化することがあるのです。1990年前後に登場したFCRキャブは中古パーツとなっても人気が高く、外観の見栄えを良くするために強力な溶剤でクリーニングされる場合もあります。その際に内部のガスケットがダメージを受けると、ジェットやニードルでセッティングを行ってもどうしても調子が良くないということもあり得るのです。
この部分のガスケットを独自に製作したことで、傷んだガスケットの交換が可能となり、完璧なオーバーホールができるようになったのです。キースターでは以前からゴム製のフロートチャンバーガスケットを社内で製造しており、耐ガソリン性ゴム素材の取り扱いについて知識と経験が豊富なので、デリケートなガスケット製造にも問題はありません。
機種ごとに必要なジェットやニードルと、フルオーバーホールに必要なオリジナルパーツを組み合わせたFCR燃調キットは、緻密なキャブセッティングと充実したオーバーホール&メンテナンスを両立させる製品です。
FCRキャブの弱点であるボディの摩耗を独自の手法で修復する逆転蘇生キット
手前のケースに入ったFCR逆転蘇生キットは、常に後方のFCR燃調キットとセットで販売される。キャブセッティングも必要だが、樹脂製ベアリングの軌道上の段付き摩耗も気になるなら、セット購入がおすすめ。
ボディ内側の角部分近くに見える筋状の凹みがベアリングローラーによる段付き摩耗。スロットル全閉時、エンジンからの脈動でスロットルバルブに吸引、開放の力が繰り返し加わることで、樹脂製のローラーがアルミニウム製のボディを凹ませてしまう。
コの字に鈑金された極薄ステンレス製ローラーガイドをFCRのボディ内に取り付ける。側壁にしっかり押しつけないとローラーが擦れてフリクションロスの原因になるので、キースターではボディ下部のインターミディエイトボディを取り外してからガイドを取り付けるよう指示している。
コの字に折り曲げられたガイドの短辺が段付き摩耗部分に蓋をするように作用し、専用ベアリングローラーを組み付けたスロットルバルブは全閉から全開まで滑らかに開閉する。
FCRキャブレターの「F」とは、吸入空気が流れるベンチュリーの通路長を短縮するために採用されたフラットタイプのスロットルバルブの頭文字に由来します。そして吸入負圧が大きい4ストロークエンジンで使用するにあたり、スロットルバルブの張りつきを防止するために採用されたのが、バルブ側面の樹脂製ベアリングローラーです。
ベアリングローラーによってバルブとキャブボディが直接接触することがなくなり、スロットル操作性も改善されましたが、ローラーとボディの接触部分で新たな問題が発生しました。それがボディの段付き摩耗です。
スロットルバルブはエンジンが発生する吸入負圧によって、ボディ内部で常にエンジン側に引っ張られています。さらに細かく見れば、ピストンが吸入行程ではエンジン側に引かれるだけでなく、吸気バルブが閉じた際はピストンに加わる吸引力はなくなります。つまり、スロットルバルブは非常に速いスピードで前後に脈動しながら開閉しています。
ここでFCRキャブに共通する持病、致命傷である段付き摩耗が発生します。スロットル全閉時、バルブに加わる負圧は最大になりエンジン側に強く引きつけられます。この状態からスロットルを開けていくと、負圧が掛かったバルブを支えるローラーも大きな力でボディに押し当てられつつ転がります。そしてスロットル開度が大きくなると、空気の流量が増加するのと逆に、スロットルバルブを原因とした吸気抵抗が減少するため負圧は徐々に低下していきます。
この動作を繰り返すことで、スロットルバルブの開度が低い領域を中心に、ボディにはローラーが食い込みわだちのような凹みができていきます。このわだちは走行距離が増えるほど大きくなり、アイドリング近辺でのスロットルバルブの脈動も大きくなり、FCRキャブレター特有の浮動バルブのカチャカチャ音も増大します。
FCRキャブはレース用部品として開発されたパーツなので、ボディに摩耗が生じたら交換するのが前提で、そもそも街乗りのようにアイドリングや低開度を多用するような使い方をしないため、大きな問題にはなりません。
しかし街乗りメインでスロットルバルブがボディ内で余計な動きをすることで、アイドリング付近での安定性が低下したり、スロットルの開け始めや閉じ終わりの違和感の原因になることもあります。
こうした症状を改善するためいくつかの製品が市販されており、キースターは独自の手法で段付き摩耗問題を解決しました、それがFCR逆転蘇生キットです。
逆転蘇生キットでカギとなるパーツは、厚さ0.1mmのステンレス製ローラーガイドです。コの字型に成型されたガイドをボディ内に挿入し貼り付けることで、わだちを塞いで段付き摩耗を解消するという発想が、先行品との最大の違いでありこのキットの個性です。新たにセットするガイドに合わせてスロットルバルブ側面の樹脂製ベアリングもキット専用パーツとなり、ボディ内部での適正なクリアランスを確保します。
実際に段付き摩耗したFCRに逆転蘇生キットを組み込むと、違いは歴然です。摩耗状態で感じられた、ローラーがわだちに入る時とわだちから出る際の2モーションのような動きがなくなり、スロットルバルブは全閉からスムーズに開くようになり、アイドリング時の浮動バルブのカチャカチャ音のレベルも明らかに低下しました。
ボディの段付き摩耗を解消するには他の方法もありますが、キースターの逆転蘇生キットは使用過程でステンレスレースが摩耗、消耗した際にレール自体を交換すれば性能が回復するのが特徴です。
唯一のハードルは、ローラーガイドをボディ内側に確実に取り付ける際に、インターミディエイトボディを分解しなくてはならない点です。このため逆転蘇生キット単品では発売されず、必ずFCR燃調キットとのセット販売となります。すなわち、キースターのFCR関連は「FCR燃調キット」と「FCR燃調キット&逆転蘇生キット」の2本立てということになります。ボディ内側にベアリングローラーによるわだちがなく、セッティングのみを行いたいなら燃調キットを選択し、経年劣化も気になるようならFCR燃調キット&逆転蘇生キットを選択すると良いでしょう。
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