塗装とは異なる、金属ならではの重厚感と光沢がクロムメッキの最大の特徴であり魅力です。旧車や絶版車のクロムメッキ仕上げの前後フェンダーの質感は、樹脂を成型してペイントしたフェンダーとはまったく異なります。しかしクロムメッキには、何も処理をしていない鉄素材と同様に「錆びる」という弱点があります。なぜメッキで表面処理しているのに錆びるのか? 錆びたメッキ面はどのように手入れをすれば良いのか? そんな問題にプロの立場から取り組んできたのがメッキ工房NAKARAIが開発した「サビトリキング」です。

クロムメッキの表面にはそもそも無数の穴がある


軽量化や経年劣化、製造コストや作業時の環境問題などを考慮すれば、バイクのパーツでクロムメッキ仕上げのスチール素材より塗装仕上げの樹脂素材が主流になるのは致し方ない。だが絶版車や旧車のメッキ部品には重厚感があり、簡単に樹脂部品に置き換えるのは難しい。だからこそクロムメッキのコンディションをいかに維持するかが重要な問題となる。

バイクの部品に使用される金属には、鉄(スチール)、アルミニウム、ステンレス、チタンなどいくつかの種類があります。このうちフレーム、ガソリンタンク、フェンダー、ハンドル、マフラー、ホイールリムなど広範囲で使われているのが鉄です。アルミフレームやアルミタンク、ステンレスやチタン製マフラーもありますが、絶版車や旧車に属するバイクにとって、鈑金部品においてはアルミやチタンなどの軽金属より鉄素材が多数派です。

空気中の酸素や水分と接する事で、酸化還元反応を起こしてサビが発生するため金属には一般的に防錆処理が必要で、鉄素材にとっての二大防錆技術が「塗装」と「メッキ」となります。どちらも鉄の表面を覆って酸素や水分を遮断するのが本質的な目的であり、その上で装飾的な役割が与えられます。

メッキに注目すれば、純粋に防錆目的の亜鉛メッキがあり、そこに若干の光沢を持たせたユニクロメッキがあり、外装パーツなど人の目に触れる部分に施行するクロムメッキがあります。亜鉛メッキの中には、溶解した亜鉛に部品を漬け込む溶融亜鉛メッキという手法もありますが、クロムメッキに関しては、電気を使った化学反応に鉄素材に密着しています。

少し詳しく説明すると、鉄素材に対して下地として銅メッキ、ニッケルメッキを行い、3層目にクロムを施工することで美しい光沢のクロムメッキになります。塗装に喩えれば、最初にサフェーサーを吹き付け、次にカラーペイントをスプレーし、最後にクリア塗装を行うようなものです。

クロムメッキの場合、電気を使って幾重にも金属皮膜を重ねているにも関わらず、雨ざらしで保管したり手入れが悪いとメッキ表面にサビが発生することがあります。クロムメッキをサビさせないようにするには、日頃からのメンテナンスが重要なのはもちろんですが、一方でクロムメッキ固有の特性もあります。

我々が肉眼で見るクロムメッキの表面は滑らかで光沢は均一で、まるで鏡のようです。しかし顕微鏡レベルで観察すると、クロムメッキの表面にはミクロン単位の穴が無数に開いているのです。穴径は大きなものでも8?ほどなので目では見えませんが、施工不良や欠陥ではなく、すべてのクロムメッキの表面には細孔と呼ばれる穴が存在します。

クロムメッキの素材である金属クロムは、それ自体は耐摩耗性、耐衝撃性、耐食性に優れ光沢も美しいといった特性があります。しかし表面に存在する穴によって、水分やホコリがクロムメッキ層の下に入り込み、そこで発生したサビがクロムメッキの穴を通り抜けて表面に現れるのです。

デリケートなクロムメッキを傷つけず錆に反応するサビトリキング


メッキ工房NAKARAIがメッキングを商品化した際、ユーザーから「新品部品ならメッキングが使えるが、サビたクロムメッキはどうすればいい?」という声が上がり、そのリクエストに応えて開発したのがサビトリキング。140gの標準サイズと大容量260gの「デカキング」がある。どちらも汚れ拭きクロスが付属する。


気づいていてもなかなか手入れできないうちに、クロムメッキのサビはどんどん進行する。目には見えない表面の極小の穴からも水分は浸入して、クロム層の下でサビが発生。ツブツブの赤サビが大きくなる前にサビトリキングで処理しよう。


メッキ表面の汚れやホコリを洗い落としてから、汚れ拭きクロスにサビトリキングをたっぷりつける。クロスで擦るのではなく、クロスとメッキ表面の間にクリーム状のサビトリキングを挟んで滑らすようなイメージで、優しく撫でるように塗り広げる。取れたサビがクロスに付いた状態で擦ると傷になるので、常にきれいな場所で拭く。


力を入れなくても、クロムメッキ表面のサビをきれいに取り除くことができた。ゴシゴシ擦っていないのでメッキ表面に新たな傷も付いていない。前後フェンダーやホイールリム、ハンドルパイプなどクロムメッキ仕上げの部分を探して磨きたくなるほどの落ち具合だ。


全面が錆びて使う気にならないメッキボディのバックミラーに、半分だけサビトリキングを使ってみたところこの通り。赤サビのツブツブはクロムメッキの細孔を通過して出てきた、クロムメッキ層の下から出てきたサビだ。メッキに傷をつけないよう、大げさなぐらいヌルヌル状態で磨くと良い。磨き好きはもちろん、クロムメッキのサビの取り方が分からないというビギナーも、簡単に使えるのがサビトリキングだ。

クロムメッキそのものが錆びるのではなく、メッキ層の下から発生したサビに対してどのように対処すれば良いのか? その答えとして、クロームメッキに精通したメッキ工房NAKARAIが開発したのが「サビトリキング」です。

サビが発生したクロムメッキパーツを観察すると、メッキ表面に花が咲いたように点サビや赤サビができていることが分かるはずです。サビの深さや範囲にもよりますが、まず第一にクロムメッキに悪影響を与えず、パーツ表面のサビを取り除くことが目標となります。

前述の通り、クロムメッキ被膜自体は耐摩耗性や耐衝撃性が優秀で傷が付きづらい特徴があります。そのため、通常の洗車用スポンジで擦った程度では簡単に傷は付きません。しかしクロムメッキ表面に発生したサビはそれ自体が酸化した金属であるため、ウエスなどで安易に擦るとザラザラのサビによってクロムメッキに傷が付きます。目の粗いサンドペーパーでメッキ面を擦るとどうなるか、誰もが簡単に想像できるでしょう。サビ落とし用のケミカルを使う際も同様で、硬い研磨材を含む製品を使えばサビは落ちやすいですが、やはりメッキ表面に傷を付けてしまいます。

クロムメッキの施工部門を有するメッキ工房NAKARAIは、そもそもメッキ業者として創業したメーカーであり、前回紹介した「メッキング」にも今回紹介する「サビトリキング」にも、メッキのプロとしての知見とノウハウを活用しています。つまりここまで説明したようなクロムメッキの特性を知り尽くした上で、弱点であるサビを除去するケミカル開発を行っているのです。

クリーム状のサビトリキングは、一見すると金属磨き用のコンパウンドのような感触です。しかし付属の汚れ拭きクロスにサビトリキングをたっぷり付けてクロムメッキに塗布すると、サビが溶けるように浮き上がるようにメッキ面から除去されます。クロムメッキ面に押しつけることなく優しく撫でるうちにサビが落ちる理由は、サビトリキングがサビだけに反応する薬品を含んでいるからです。ここが物理的に擦ってサビを削り落とす他のケミカルとの大きな違いです。

クロムメッキ層の下にサビが進行する前にサビトリキングを使えば、何事もなかったかのようにメッキならではの光沢が回復します。たっぷり塗布することでメッキを傷つけないので、スクラッチの心配もありません。

一方、サビが深くまで進行して、サビを取り除いた後にもメッキ面にツブツブの痕跡が残る場合、その点サビはクロムメッキ層にできた穴となるので、それ以上の回復は望めません。ただしその場合でも、メッキ表面のサビは取り除くことができ、その際にメッキに傷をつけることはありません。詳しくは後述しますが、明らかに錆が目立つ場合は、再メッキを選択することをお勧めします。

サビトリキング自体の性能もさることながら、クロムメッキに傷を付けないという点では汚れ拭きクロスの役割も重要です。柔らかく厚手のクロスはクロムメッキに対する当たりが柔らかく、取れたサビをクロス自体にからめ取る能力があります。着古したTシャツなどを使うと、素材が薄いためサビ落としとは別に擦り傷が付くやすくなります。

せっかくサビトリキングでサビが浮いても、そのサビでメッキ面を引っ掻いてしまっては台無しです。そんなトラブルを避けるためにも、サビトリキングを使用する際は必ず汚れ拭きクロスを使いましょう。

サビトリキング後はメッキングでクロムメッキ表面をコーティング


クロムメッキの保護剤として10年以上に渡って高い人気を維持しているメッキング。特殊シリコーンと光沢剤の働きで、クロムメッキ上に強力な被膜を形成する。メッキのコンディションが最も良好な新品時点で施工するのが最適だが、サビトリキングでサビを除去した後で、サビがこれ以上進行しないように塗布するのも良い。付属の史上“最鏡”クロスで、薄く均一に塗り広げるのが使用上の重要ポイント。


新品パーツでもサビ取り後でも、目に見えない細かい穴が表面に無数にあるクロムメッキは無防備状態。史上“最鏡”クロスは高級メガネ拭きの100倍以上のキメの細かさで、塗り残しや拭き残しなく塗布できる。虹色のムラが出ないよう薄く塗り広げると5~10分ほどで硬化が始まり、24時間で完全硬化する。なお完全硬化するまでは水分が付着しないよう注意する。


ハンドル周りにクロムメッキパーツが多いのも絶版車の特徴。サビが出る前にメッキング被膜で保護できれば最善だが、すでにサビが発生している場合はサビトリキング後にメッキングを塗布しよう。メッキング前に汚れや油分を除去するのは当然だが、サビトリキングの油分も密着不良の原因になるため、しっかり脱脂を行ってからメッキングを使用する。


汚れ取りクロスはサビトリキングに、史上“最鏡”クロスはメッキングにとって不可欠な専用クロス。製品購入時に付属するが、サビで汚れたりメッキングで硬化した場合はクロス単品でも購入できる。

クロムメッキ表面には元来目に見えない穴があり、そこから入った水分がサビの原因になっていることは説明した通りです。サビトリキングはサビの除去に有効ですが、これだけでは新たなサビを予防する効果はありません。

ここで有効なのが、前回紹介した「メッキング」です。特殊シリコーンを主成分とするメッキングを塗布することで、クロームメッキ表面に無孔性の保護被膜が形成されます。水や空気を通さない食品用ラップでメッキ面を覆うようなイメージです。

史上“最鏡”クロスで薄く塗り広げることで、メッキングは最高の性能を発揮します。穴の開いたクロムメッキ面をコーティングするのなら、できるだけ分厚く塗り重ねたいと考えるのが人情ですが、メッキングは薄く塗るのが重要なポイントです。具体的には、容器からクロスに垂らした1~2滴のメッキングで、10×10cmまで塗り広げます。余計に塗布すると虹色のムラが出るので、ムラがなくなるまで薄く塗り広げることが重要です。

クロムメッキ面に透明のメッキングを薄塗りするだけで、本当に有効な被膜になるのか心配に思うかもしれませんが、手順を守って施工したメッキング被膜は耐候性、耐酸性に優れ光沢もアップします。また細かなスクラッチを埋めることで、傷を目立たせなくする効果もあります。

サビトリキングによってサビを取り除いたクロムメッキパーツは金属光沢を取り戻しますが、防錆能力としては無防備状態です。ここでメッキングを施工することで、新たなサビの発生を抑えながらクロムメッキならではの光沢を維持することが可能になります。

クロムメッキパーツのサビに悩むバイクユーザーは、サビトリキングとメッキングのセットでメンテナンスを行うのがベストです。

サビトリキングで取り切れない頑固なサビはメッキ工房NAKARAIで再メッキ


サビトリキングで拭いた部分は周囲に比べて点サビが目立たなくなっている。しかしクロムメッキ裏から進行したポツポツとしたサビの痕が消えることはない。新品時の平滑なメッキ面を望むなら、メッキ工房NAKARAIに再メッキを依頼しよう。

サビトリキングはクロムメッキのサビ取りに高い効果を発揮しますが、万能ではありません。メッキの下のサビがクロムメッキを剥がしてしまうほど成長している場合、サビトリキングでは対応できず、再メッキを行うしかありません。

再メッキとは、現在のメッキを剥離して素地を露出させ、サビや傷を研磨して取り除いてからもう一度メッキする作業です。クロムメッキの場合、クロムの下にニッケルメッキ被膜、銅メッキ被膜があるので、電器や薬品によってそれらをすべて落として、鉄素材を露出させます。

再メッキを行うにはメッキ施設が必要です。メッキ工房NAKARAIはサビトリキングやメッキングを作っているメーカーでもありますが、祖業はメッキを行う工場でした。そして現在でも再メッキ作業を行っています。

絶版車や旧車のレストアでは、傷んだクロームメッキパーツに接する機会が増えるものです。サビトリキングで対処できないほどのサビは、メッキ工房NAKARAIに再生を依頼するのが良いでしょう。

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