駆動系の要であるドライブチェーンは、定期的な注油によってフリクションロスが軽減され伸びも予防できます。そんなチェーンが伸び始めると、その影響は他のパーツにも及びます。伸びてたるみが増えたら調整するのは当然ですが、スプロケットの歯先にも注意を払いましょう。鋭く尖っていたらチェーンと一緒に交換が必要です。

ドライブチェーンが伸びる=ピッチが広がるとたわみ量が増える


スプロケットの谷にドライブチェーンのローラーが収まり、エンジンがチェーンを引くことでスプロケットを介してリアタイヤが回転する。ドライブチェーンは内プレートと外プレートが交互に重なり合い、シールチェーンの場合はピンとブッシュの空間にグリスが封入され、このグリスが流出しないよう内外プレートの隙間にゴム製のシールリングが挟み込まれている。

加速時には正方向に引っ張られ、エンジンブレーキで逆方向に引っ張られるドライブチェーン。レース映像などを見ていると、コーナーからの立ち上がりでチェーンがたわみながら引っ張られているスロー画像を見ることもあります。

洗浄と注油を真面目に行っていても、またシールチェーンでもノンシールチェーンでも、走行距離が増えればドライブチェーンが徐々に伸びることは避けられません。ただ、シールチェーンとノンシールチェーンでは耐久性=伸びるスピードが異なります。その理由は改めて言うほどでもありませんが、シールチェーンには潤滑用のグリスが封入されているためです。

シールチェーンのグリスは、リンク同士を連結するピンと、ピンが貫通するブッシュとの間に押し込まれており、両者の間に恒久的な潤滑被膜を形成しています。バイクの加減速で引っ張られ、前後のスプロケット部分で強制的に曲げられるドライブチェーンにとって、ピンとブッシュの潤滑は重要です。そしてシールチェーンの方が有利ではあるものの、走行距離が多くなればピンとブッシュは摩耗します。

ドライブチェーンは小判型の外プレートと内プレートをブッシュとピンで連結することで、1周90リンクや100リンクとしており、リンク数の分だけピンが必要です。このピンのそれぞれがほんの僅かずつ摩耗してブッシュの内側で遊びが大きくなることで、100リンク分の遊びがたわみ量増加につながります。

ドライブチェーンのたわみ量を定期的にチェックするのはそのためです。先にピンとブッシュの間にグリスを封入したシールチェーンの方がピンの摩耗に有利と書きましたが、裏を返せばノンシールチェーンはピンとブッシュが直接接しているので、適切な油分がなければどんどん摩耗するということになります。

もちろん現在でもチェーンメーカーは現在でもノンシールを製品化しており、原付クラスを中心に装着している車両も少なくありません。しかしピンとブッシュの潤滑状況を考慮すれば、シールチェーンよりメンテナンスに留意しなくてはならないのは間違いありません。

POINT

  • ポイント1・ドライブチェーンの伸びはプレートを組み立てるピンの摩耗によって発生し、ローラーのピッチが広がることで周長が長くなる

ドライブチェーンが伸びるとスプロケットが削られる!?


伸びたチェーンのローラーが当たることでスプロケットの谷の幅が広がり、その分だけ歯先が痩せている。ピンが痩せてチェーンのピッチが広がる際、その割合はすべてのリンクで均等というわけではない。急加速や急減速など瞬発的な荷重が加わると、その部分だけが極端にピッチが広がる偏伸びが生じることもある。スプロケットは素材や製品によって、歯先部分の耐摩耗性を向上させるために高周波焼き入れを行うことがある。アルミスプロケットの場合は硬質アルマイトによって表面硬度が向上するが、硬化層が削られると摩耗の進行が早くなる。


歯先の摩耗によって谷部分が広くなり、ドライブチェーンのローラーに対して前後方向に遊びが生じてしまっている。加速時にはチェーンが先に進むためローラーは谷の前側に強く当たり、エンジンブレーキ時は後ろ側の壁に当たり、この谷の隙間の分だけスロットル操作に対する反応遅れが生じる。この状態でドライブチェーンだけを交換しても遊びは改善しないので、スプロケットも同時交換が必要。また外から見えやすいドリブンスプロケットの摩耗には気づきやすいが、スプロケットカバーで見えないドライブスプロケットでも同様の摩耗が発生するので、一方のスプロケットが摩耗していたらもう一方も必ず確認する。

ドライブチェーンが伸びてスイングアーム下でチェーンがダラダラに遊べば、よほど無頓着なライダーでない限り「チェーンアジャスターで調整しなきゃ」と思うはずです。

一般的なチェーンプーラーをスライドさせるタイプや、ひと頃のカワサキ車に多かったエキセントリックカム式、片持ちスイングアームなどのメカニズムによって作業手順は異なりますが、チェーンのたわみを減らすには後輪を車体後方に向かって引っ張ります。

この際にチェーンに偏伸び=一カ所だけでなくタイヤを回しながら数カ所でチェーンのたわみ量をチェックして、たわみ量に極端な差がないか調べると同時に、ドリブンスプロケットの歯先の状態を確認することも必要です。

スプロケットの歯先形状は、ドライブチェーンのローラーが谷間にピッタリ食い込むようにできています。これはチェーンのピン間の距離=ピッチが一定だからできることです。しかしピンが摩耗してチェーンが伸びる時、ピン間の距離は僅かずつ広がります。

スプロケットの立場からすると「さっきまで相性ピッタリだったのに、少しずつ広がろうとしてるんじゃないの?」ということになります。チェーンのピッチが広がることで、ローラーはスプロケットの歯先の谷底で噛み合うのではなく、谷の側面に当たるようになります。

エンジンの駆動力は強力なのでその状態でも走行は可能ですが、チェーンの伸びが増えるほどピッチが広がり、スプロケットの谷の側面も摩耗は増加します。側面が削れることで隣の谷に徐々に接近し、それによって歯先はどんどん細くなって行きます。その最終形が歯先が鋭利に尖った「剣山」「手裏剣」と呼ばれる状態で、さらに悪化すれば細くなった歯先がなくなり全体的に緩い凹凸が並ぶ「ナルト」となって駆動力が伝達できなくなります。

ハーフタイプのチェーンケースで、ドライブチェーンとスプロケットが目視できるスポーツタイプのバイクでは、さすがにナルトまで進む例は稀ですが、ビジネスバイクのような全面カバータイプのバイクだと、たるんだチェーンがケースに合ってガチャガチャ異音が出るたびにアジャスターで引くだけ引いた末にスプロケットが摩滅する例も稀にあります。

スプロケットの剣山化を避けるには、ドライブチェーンとスプロケットをセットで見ることが重要です。機種によっては、スイングアームやチェーンプラ-にドライブチェーンの使用限度が記されている場合があります。これは繰り返したわみ調整を行って限度に達したらチェーン交換を促すためのものですが、スプロケットの歯先の形状も同時に確認します。

谷の側面の摩耗が進行しているのにチェーンだけ交換すれば、新しいチェーンとスプロケットのピッチが合わず、回転方向に遊びが生じることがあります。せっかく交換したチェーンの性能も十分に発揮できません。中古車を購入する際に「チェーン交換済み」というコメントがある場合も単純に喜ぶのではなく、スプロケットのコンディションが良好か否かの確認を行うぐらいの慎重さがあると良いでしょう。

POINT

  • ポイント1・ドライブチェーンのピン間距離=ピッチはスプロケットの谷と一致しているが、チェーンが摩耗してピッチが広がることでスプロケットの谷を摩耗させて歯先が細くなる

リアタイヤを外したらホイールベアリングの状態も合わせてチェック


ドライブチェーンやスプロケット交換でホイールを外した際はベアリングのチェックを行うが、その前にアクスルシャフトにサビが発生していないか、カラーやベアリングとの摩擦で段付き摩耗が発生していないかなどを確認しておく。アクスルシャフトのチェックが本題でないとしても、ついでに行うことが予防的メンテとなる。

指で内輪を回すのは古典的なベアリング確認方法だが、この時点でところどころ引っかかるような感触がある時は見過ごさず対処する。作業をガレージ内で行い、ホイールを外したまま置いておけるなら、ベアリングを注文して交換するのがベスト。走行距離が多い車両なら、交換前提で手配しておけばなおさら良い。


精密ドライバーなどでゴムシールが外せるシールタイプのベアリングなら、ホイールに圧入された状態で内部のグリスを入れ替えることができる。低フリクション高潤滑タイプのグリスを使用することで、フリクションロス軽減も期待できる。

使用限度まで伸びたドライブチェーンや歯先が尖ったスプロケットの交換で、リアタイヤを外した際にやっておきたいのがホイールベアリングのチェックです。ベアリングの転がり具合を確認するためだけにホイールを外すのは面倒ですが、チェーンやスプロケット作業の「ついで」にやるのなら気も楽です。

内輪や外輪が多少錆びていても、グリスが不足していても、慣性重量が大きいタイヤによって回されることで嫌々回っているベアリングも、内輪に指を突っ込んで回せば本性が現れます。ホイールベアリングトラブル事例としてリテーナーが崩壊してボールが脱落するパターンがあります。その際、トラブル発生しばらく前から異音が発生することもありますが、とりたてて違和感がなかったのに突然症状が出ることもあります。

「それまで普通に走っていたのに……」というのはトラブルに遭遇した時にありがちなコメントですが、路上の釘を踏んで突然パンクするのと違って、ホイールベアリングの劣化やドライブチェーンのたわみやスプロケットの摩耗は、劣化が徐々に蓄積していくものです。

ベアリングを回してみてゴロゴロした感触が伝わってきたり、ホイールハブ左右のベアリングの間にセットされたディスタンスカラーへの当たりが強くて回転が重い時は、原因を追及した上で対策が必要です。

POINT

  • ポイント1・ドライブチェーンやスプロケットの交換でリアタイヤを取り外したら、アクスルシャフトやホイールベアリングのチェックも合わせて行う
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