
ボルトナットを着脱する際にそれぞれのネジ山にゴミや汚れが付着したまま取り付けると、正しい締め付けトルクが得られなかったりネジ山を傷める可能性があります。そんな時に活用したいのがタップ&ダイスセットです。自分で部品を作るようなことがなければ出番はないと思われがちですが、ネジ山の補正や修正が簡単にできるので1セット持っておきたい工具です。
雌ネジを修正するタップと同様に雄ネジのゴミを取るダイスも活用したい

工具を掛ける頭部分はまったく錆びていないのに、湿気が入り込んでネジ部分だけが錆びているボルトは少なくない。クランクケースカバーやオイルフィルターカバーなど、カバー側に雌ネジがない=貫通穴だと水分が入りやすいようだ。もちろん、雄ネジと雌ネジが全周噛み合っていても、ネジ山が錆びてしまうこともある。

部品を自作する時だけでなく、ネジ山やネジ穴の修正にも重宝するタップ&ダイスセット。M5、M6、M8、M10サイズの使用頻度が高いので、各サイズを単品で購入するよりセット品を持っておいた方が便利。M10 はJIS規格の並目ネジだとピッチ1.5だが、バイクではピッチ1.25の細目を使用することもあるので、並目と細目が揃ったセット品を購入するか、単品で細目を用意しておくと良い。

ダイスでボルトの雄ネジを修正する際は、サイズが刻印された面をボルト側に向けてダイスホルダーにセットする。このダイスはM6サイズでピッチ1.0サイズ。
絶版車や旧車、年式が新しくても雨ざらしのバイクのボルトナットを着脱する際には、ネジ山の状態が心配で緊張するものです。すんなり緩めばラッキーですが、雄ネジと雌ネジの隙間に入った水分が原因で固着していたり、過去に誰かが無理矢理締め付けたせいでネジが潰れていたということも珍しくありません。
潤滑スプレーを吹き付けたりショックドライバーで叩いたり、ヒートガンで加熱するなどさまざまな手段でどうにか取り外したボルトやナットはネジ山の状態を観察することが重要です。錆びたボルトのネジ山がサビで埋まっていたり、外れたボルトのネジ山の一部が潰れていたり雌ネジの一部がコイルのように抜けてきてしまった時は、ボルト交換やリコイルによる雌ネジ補修が必要です。
また、交換するほどではなくてもネジ山の汚れが目立つ時は、タップやダイスでネジ山を清掃しておきます。タップは雌ネジ、ダイスは雄ネジを作る切削工具ですが、既に存在するネジ山を修正、清掃する際にも重宝します。ネジ山にサビや付着したボルトをダイスに通せば、ネジの谷の底まで汚れをきれいに取り除くことができます。これはネジロックが塗布されたブレーキローターボルトの清掃にも有効です。
同様に、錆びたボルトが締め付けられたナットやネジロックでブレーキローターが固定されたホイールハブの雌ネジは、タップを挿入することで汚れを取り除けます。ネジ山が露出するボルトはワイヤーブラシなどで清掃できますが、雌ネジの中にブラシは届かないので、ボルトの相手を清掃する際はタップが最適です。
ボルトでもナットでも、ねじ込む際に多少渋くてもメガネレンチやソケットレンチで強く締め付ければ大丈夫と考える人もいるかも知れません。しかし雌ネジが傷んだ状態でボルトを締め付けると、最後まで締まりきっていないにも関わらず途中でロックして回らなくなることがあります。プリセットタイプのトルクレンチが設定トルクに達してカチッとクリックしたのに、ボルトと部品の間にはまだ隙間が残っている……という最悪な事態も起こり得ます。それを無視してさらに強い力で締め付ければ、ボルトが折れたり雌ネジが上がってしまったりと、事態はさらに悪い方に進むこともあります。
そうならないためにも、サビやネジロックが付着したボルトはもちろんのこと、通常のトルクで外れたボルトナットも、取り付け前にはパーツクリーナーで洗浄してタップやダイスを通すことを習慣づけておくと良いでしょう。
- ポイント1・ボルトやビスのネジ部分にサビやネジロックが付着している場合は、タップやダイスでネジ山を清掃してから取り付ける
入り口近くで動きが渋ければタップやダイスでネジを修正するクセをつけよう

ダイスの刃にボルトのネジを合わせて時計回りに締めると、ネジ山の汚れやサビ、ネジロックのカスなどを取り除くことができる。ボルトの先端部分が潰れかかっていても、ダイスを通すことで修正できる場合もある。

ダイスがなければワイヤーブラシを使うが、ダイスに比べて作業効率は悪い。特にネジの谷に詰まったネジロックは、鋭い刃で掘り進むダイスの勢いにはかなわない。表面上の汚れならブラシで落とせるが、サビたボルトを再使用する際は必ずダイスで清掃する。

ダイスでボルトを清掃したら、雌ネジもタップでクリーニングしておく。ネジ山に異物が付着した状態では締め付けトルクが安定せず、不具合やトラブルが発生する原因にもなりかねない。
小ネジやボルト、スパークプラグに至るまであらゆるネジを取り付ける際は、最初は指先で回すのが原則です。ボルトやネジを取り付ける際に傷める最大の原因は、雄ネジと雌ネジの不一致です。雌ネジに対して雄ネジが傾いた状態で手で締めようとすれば、ほんの半周ほどで違和感に気づくはずです。
しかし最初からドライバーやソケットレンチなどの工具を使うと、多少の引っかかりを感じても締まってしまう場合もあります。細目ネジならなおさらです。ボルトの取り付け場所やスパークプラグ穴が深いエンジンの場合、指が届かず工具に頼らなくてはならないことも少なくありません。しかしそんな時でも、締め付けトルクが大きくならないようエクステンションバーの軸部でボルトを回すことでネジのカジリを早めに察知することができます。
ネジ山のサビやネジロックカスの残りと同様に、ネジやボルトの傾きによって締め付け初期に違和感を覚えたら、タップやダイスでネジ山を修正するために無理に進めず、必ず一度取り外しましょう。面倒に感じるかも知れませんが、回り道と思われる作業が近道となる例は少なくありません。
- ポイント1・ボルト取り付け時のトラブルを避けるため、締め付け時に違和感があればタップとダイスを通してネジ山を修正する
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