
プラスチック部品の割れや亀裂や破壊は、部品を大切にしているオーナーさんにとっては大問題。新品部品があり、購入できるのならまだ良いが、ちょっと低年式モデルや旧車ともなると、コンディションに関わらず、適合部品自体を見つけ出すのが大変になってしまうもの。樹脂部品の修理と言えば、単純に「接着剤」を思い浮かべるが、実はそれ以上に効果的!?な修理方法に「溶着」がある。ここでは樹脂部品の本格修理に注目してみよう。
プラスチック材質の見極め
ハンドルを取り外す際に気がついたフロントカバー&ライトケースの固定部分の片側が、完全に割れ落ちてしまっていた。樹脂部品が劣化すると締め付け部分、締結部分周辺に割れや破壊が出やすくなってしまうが、この部品はそんなん象徴的な例とも言える。樹脂部品の修理時には、素材が何なのかを知ることも重要で、現在の部品には素材が明記されている。プレス文字でppやPEやABSなどの表記があるが、旧車時代の樹脂部品には表示義務が無い。60年代はPE系が多く、70年代になるとABS系が増え、ガソリンの付着が考えられるような部品にはPP系素材が利用されるようになっている。
芯を埋め込み強化補修する道具
工具ショップのストレートで販売されているプラスチックリベアキット。ウェーブ状でコの字型した針を熱で温めて樹脂を溶かしながら埋め込む。作業後に露出した部分はニッパでカット。抜群の強度を誇る。明らかに部分強度が高まる「金属の骨」には期待できる。
ピアノ線を熱で埋め込み補強
欠落部分を指先で保持しつつ押し付け、その状態で、まずは針一本を埋め込み施術する。たったこれだけの短時間で作業進行。上下左右裏側などなど、徹底的に針を打ち込んでいく。打ち込みと同時に小型のヘラ(スパチュラなど)で押さえることで、密着強度はさらに高まる。
不要な部分をカット&仕上げる
露出した針の両側をニッパで切り落とし、さらに出っ張った残りをベルトサンダーで削り落として仕上げ完了。パーツを締め付けたときに樹脂への影響が最小限になる金属カラーを押し込んでから車体へ復元した。これだけ針を埋め込めば強度は十分なはずだ。
ハンダは温度管理仕様がベスト
ハンダごてにも様々な種類があり、最近はユニットになった温度調整式ハンダも塩梅されている。数値は具体的な温度数値と考えず、相対比較時のデータと考えれば良い。通常のハンダごてと比べて、定温維持できると樹脂が溶焼けて炭化しにくく作業性が圧倒的に良い。
- ポイント1・ 亀裂や割れた部分を溶かし合わせて接着する
- ポイント2・ 同じ材質の樹脂部品切れ端が溶着棒としてはベスト
- ポイント3・ ハンダごてを代用することで修理は可能
プラスチック樹脂部品の割れや亀裂の本格修理は難しい。単純に「割れてしまった……」と言っても、その部品の材質やコンディションによっても、修理内容が異なることがある。仮に金属部品なら、かなりの勢いで凹ってしまっても、リペイントを覚悟すれば、板金修理することで何とかなってしまうケースが多い。
新品部品に近い高年式モデル用の樹脂部品なら、素材自体に弾力性があるので、修理後の強度もある程度は期待することができる。しかし、旧車用樹脂部品となると、いわゆる「風邪ひき」状態になっていることが多く、衝撃が加わると「木っ端微塵!?」といった言葉が似合う破壊状況へ至ってしまうケースが多々ある。
そんな樹脂部品の亀裂修理に効果的なのが「プラリペア」だろう。樹脂粉末に溶液を浸すことで、亀裂の入った樹脂断面を溶かしながら接着する強力な樹脂充填接着剤だ。かなりの強度を期待することができるし、欠落した部分には樹脂粉を堆積接着することで、充填効果も高い。「プラスチックねんど(例/デイトナ製型取くん)」を併用すれば、完全欠落した部分でも、複製修理が可能になる。そんな高性能接着剤を利用することで、高品位な修理が可能になるが、ここでは、もっとお手軽なこともある「溶着修理」に注目してみよう。
亀裂部分の母材同士を温めて溶かし、その熱で亀裂部分を接着するのが、溶着修理の基本的な考え方だ。修理箇所によっては、裏側の見えない部分から肉盛りしたいケースもあるだろう。そんなときに利用するのが溶着棒だ。亀裂の入った部品=母材と同じ材質の樹脂棒を準備することで、より効果的な接着が可能になる。模型の世界では古くから溶着技術が進んでいて、母材に合わせてABS樹脂やPP樹脂、PE樹脂などの溶着棒が模型専門ショップなどで販売されている。仮に、同じ部品で不要なもの、例えば、路面に擦れてガリガリに削れてしまったような樹脂部品があるのなら、そんな部品を短冊状に切り出すことで、それを溶着棒代わりに利用できる。市販の溶着棒は黒や白色が一般的だが、同じ部品から作った溶着棒なら、同じ樹脂色を再現することも可能になる。
さらに亀裂が入った患部に強度を持たせたいときの修理方法として注目したいのが、「金属芯」を埋め込むプラスチックリペアの利用だろう。ここで利用している商品は、工具ショップのストレートで取り扱う「AC100Vプラスチックリペアキット」だが、真っ二つに割れて欠損してしまったような締結部分の修理再生でも、威力を発揮する修理機器である。細いピアノ線を芯に、そこに電気を流して高温を保ち、その状態で樹脂の亀裂部分に埋め込み、患部を修理するといった道具だ。自動車の世界では、樹脂バンパーを取り付け固定するブラケット修理などで、広く普及している修理方法だ。
樹脂部品の修理方法は様々で、さらに応用によって、より一層高い接着効果を得ることができる。本気で樹脂部品の修理に取り組みたい際には、まずは素材を調べ、次に周辺コンディションを把握し、より確実な方法を選んで補修作業に臨んでみよう。
取材協力:ストレート https://www.straight.co.jp/
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全くもって誤字が酷く読み辛い記事
動画が有れば判り易いのに、文章のみ
の解説で判りにくい。
動画が有れば判り易いのに、写真と文章だけの解説では判りにくい。
リペアキット知りませんでした。選択肢が増えありがたいです。
個人的には分かりやすく良記事でした。