
スペアの中古外装パーツを購入したので、カラーリング変更を楽しみたいと考えたが、ガソリンタンク各所に凹(へこみ)があったため、ペイント前に可能な限り補修チャレンジしてみることにした。ここでは「鈑金ハンダを使って凹を引っ張り出す実践作業」の様子をご覧いただこう。
エンジン用特殊工具で引っ張り出せる!?
カワサキZ400FXの兄貴分として登場したカワサキZ550GPの1981年モデル用ガソリンタンク。右エンブレム部分やタンク上面に数箇所の凹があるが、このぐらいの凹なら「ハンダ鈑金で引っ張り上げられるのでは?」と考え、実践してみることにした。果たして、どうなることやら……。当然ながら鈑金のプロショップでは、プロ専用の工具を利用して作業進行しているが、ここでは同じ専用工具でも、エンジン用専用工具を転用して(空冷ドゥカティ用ロッカーアーム引き抜きツール)、凹部分を引っ張り出せるかどうか?試してみようと考えた。以前にスライディングハンマーを利用したことがあるが、小さな凹ならプーラー利用の方が、作業性が良いのでは?と考えた。長ナットでフックを固定してみた。
鉄板地肌にハンダ盛りで金具を固定
ペイントのままではハンダ処理できないので剥離作業から始める。液体のハクリ剤を利用するのではなく、不織布180番の磨き棒をリューターにチャッキングして患部周辺だけをハクリした。鉄板地肌をムキ出しにしたら鈑金用フラックスを2~3滴垂らして表面処理し、鈑金ハンダの密着性を高める。密着が弱いとハンダ付けするプレートと一体化できず、すぐに剥がれてしまうことに。大型ハンダ(ここでは200W仕様を使った)を用意してタンク鈑金に垂らしたフラックスをジュジュッとさせながら、剥がした鈑金面全体に広げていく。こてはしっかりタンクスキンを温めよう。ハンダごてがしっかり温まったらタンクの患部に鈑金ハンダを盛りつける。ここで利用したのはヤニが入っていなハンダ棒。ペイントを剥がした部分の全体に広げた。
ワッシャ状の金具を固定すれば!?
ハンダ付けするプレートは、ホームセンターなどの建築資材売場で購入してきた亜鉛メッキの角型ワッシャー。ハンダ付けする周辺裏表のメッキ処理部分を事前にサンダーで削って鉄板地肌にするのがコツ。専用工具本体のエッジで、逆にタンクを凹ませないように底面へはスポンジシートを接着した。プレートにフックを引っ掛け、ゆっくりハンドルを回していくと凹部分が徐々に戻っていく感触あり!!
複合プレス部分は引っ張りにくいが……
一番の懸案部分が右タンクエンブレム前方の凹である。このままパテ修正したらプレスライン合わせが大変。また、エンブレムの取り付け状況も決して良くないはずだ。そこで鈑金引っ張り出しにトライ。エンブレムを挟んで上下にそれぞれ50mmほど凹んでいるが、下側を引っ張り上げればエンブレム上側の凹も一緒に持ち上げられるのではないかと考え、まずは下側だけペイントを剥離して作業進行。
現状最善を目指して引っ張り上げ
ハンダの冶金強度を超えると、むしられるように接合部分に亀裂が入って剥がれてしまう。何度か繰り返し作業進行することで、作業前と比べてかなり復元できた。これでパテ修正は、最小限のパテ入れで済むはずだ。鈑金フラックスが流れ落ちないように繰り返し作業進行しよう。フラックスをジュジュッとしたら、ハンダを溶かして患部に盛り上げて、を繰り返す。角度的にはわかりにくいが、凹っていた部分の8割以上は引っ張り出すことに成功!!タンクエンブレムをネジ止めして、プレスラインのカーブを再確認し、必要に応じて作業を繰り返した。
- ポイント1・ 現代は高性能なポリパテがあるが、できる限り凹みは引っ張り上げたい
- ポイント2・ フラックスはサビの原因になるので作業後幹部はお湯+洗剤で洗い流そう
- ポイント3・ 難しいものはヘタに手を付けず鈑金塗装のプロへ依頼しよう
お気に入りバイク、カワサキ「ミドル空冷Z」の現状ガソリンタンクは、コンディションが良かった。それでも外装パーツを塗り換え、気分一新したい気持ちがあった。そこで、中古部品の外装一式をネットオークションで見つけて(ガソリンタンク、左右サイドカバー、テールカウル)、ペイントのプロショップへオールペン依頼することにした。カワサキの初代Z550GPには、フューエルゲージ(燃料の残量計)が装備されており、タンクボトムにはセンサー取り付け用の穴が開いている。同じタンク形状のZ400FXやZ550FX用と比べて、中古部品の流通数は圧倒的に少ない。それでも何とかスペアパーツを見つけて、オールペンで気分一新!!「着せ替え人形」のように外装カラーチェンジを楽しんでみたかった。
待つこと1年以上……。初代Z550GP用外装パーツを発見!!運良く落札購入することがきた。程度は今ひとつだが、ライバルが少なかったのは良かった。肝心のガソリンタンクには、目立つ凹が数箇所あり、タンク内部はサビサビ状態。まずはサビ取りケミカルを利用し(花咲かGタンククリーナー)、なんとかタンク内のサビは除去することができた。
ペイント依頼の前に、目立つ凹部分を「DIY鈑金補修で修理してみたい」なんて考えた。高性能なポリパテで修正可能な凹かも知れないが、バテを盛り過ぎると、後々亀裂や割れ発生の原因になってしまうことがある。特に、タンクエンブレム部のエッジにヘコミがあるため、ペイント依頼前に、ある程度は補修しておきたいと考えたのだ。
ハンダ鈑金の作業には納得できたが、やっぱり鈑金作難しい……。作業後の感想としては、プレートをハンダ付けする際には、タンク側の鈑金患部だけではなく、地金を露出させたプレート側もしっかり脱脂すること。またプレートは、L字型に曲げることでハンダ固定面積を広げることができる。鉄板地肌を露出したら、双方にフラックスを塗って、しっかり下処理を行ってからハンダ作業に入るのが良い。引っ張り上げたプレートが外れて再ハンダ固定する際には、双方のハンダを温めて流し落し、もう一度最初から、フラックス処理⇒新しいハンダでプレートを取り付けるのが良い。その方が、常に強固にハンダ付けできるようだった。
引っ張り上げるときには、凹み患部の周囲全体を軽くハンマーリングするのもコツである。凹み部分を引っ張りつつ、周囲をコツ、コツッとハンマーで叩いて振動を与えることで、凹んだ鈑金が元の方向へ戻りやすいのだ。今回は、使えそうな特殊工具を転用してリフトアップ作業に挑んだが、前述したように、スライディングハンマーでも同じような作業を実践することができる。作業完了後は、やかんで沸かしたお湯や湯沸かし器を利用し、フラックスを塗布した部分をしっかり湯せんする。その際には、ステンレス製ワイヤーブラシでしっかり磨き洗いするのが良い。このお湯洗い仕上げを行うことで、大敵のサビは発生しにくくなる。
スライディングハンマー
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