シリンダーヘッドやクランクケースに取り付けられたスタッドボルトは組み立て時にガイド役となってくれますが、分解時やオーバーホール時には邪魔になることもあります。そんな時に活用したいのが、ダブルナットやロッキングプライヤーより安全確実にボルトが抜けるスタッドボルトプーラーと呼ばれる専用工具です。

取り外しに失敗すると途中で折れることもあるスタッドボルト


M6、M8、M10、M12サイズに対応したスタッドボルトプーラーセット。ディープソケットのような本体内部にローラーが組み込まれ、反時計回りに回すことでボルトに食い込み緩めることができる。締め付け時にローラーが移動できる範囲が限られているため、M8用のプーラーをM6サイズのスタッドボルトにセットすると空回りしてしまう。だからある程度の幅をカバーできるセット工具を所有しておきたい。


ソケット内部には3本のローラーと位置決めの用のリテーナーが組み込まれており、スタッドボルトに被せて反時計回りに回すとローラーの締め付け力が高まり、ボルト自体を反時計回り=緩めることができる。

マフラーやインテークマニホールドのフランジ部分をはじめとして、エンジン各部に組み付けられているのがスタッドボルトは、組み立て作業の効率をアップしてくれる部品の一つです。アルミニウム製のクランクケースやシリンダーヘッドにボルトをねじ込む際は、柔らかいアルミにダメージを与えないよう注意深く作業することが必要ですが、スチール製のスタッドボルトが先にねじ込まれていれば、ナットを締め付けるのは容易です。4気筒エンジンのエキマニ部分がスタッドボルトなら、フランジを引っ掛けられるので仮付けも楽にできます。

その一方で、トラブルやダメージによる影響が大きいのもスタッドボルトの特徴です。絶版車でありがちなのが、カワサキZ1系エンジンでありがちなエキマニスタッドボルトの折損です。社外品の集合マフラーを取り付ける際に、M6の細いボルトにストレスが掛かった状態で締め付けることでねじ部から折れることがあり、ボルトの場所によってはシリンダーヘッドの着脱が必要になることもあります。

またボルト自体が折損することがなくても、エンジンオーバーホールや内燃機加工の際にスタッドボルトが邪魔にになることもあります。代表的なのがクランクケースにねじ込まれたシリンダースタッドボルトです。フライス盤で面研削する場合はもちろん、ガスケットを剥がしてオイルストーンで面をならすだけでも、スタッドボルトがない方が作業はスムーズにできます。

植え込まれたボルトが細ければ、突き出たねじ部分に2個のナットを重ねて締め付けて緩めるダブルナットという手法で取り外せることもあります。M6やM8サイズのスタッドボルトをアルミ部品にセットする際の締め付けトルクは10Nm前後だからです。しかし抜け止めのためにねじロックが併用されていたり経年変化で固着しているような場面では、ダブルナットではスリップして緩まないことも多々あります。

オーバーホール作業が勢いに乗ってくると、手持ちの工具だけで何とか緩めてしまおうと無理をしがちですが、ダブルナットやロッキングプライヤーなどに頼りすぎるとボルトにダメージを与えるリスクもあります。好調にするのが目的なのに壊してしまっては元も子もありません。

POINT

  • ポイント1・ダブルナットでスタッドボルトを緩めるのは一般的な手段だが、ボルトの状態によってはまったく緩まず、ねじ部を傷めるだけになりかねないので注意が必要

スタッドボルトの軸部を複数の点で締め上げてトルクを伝達する


エキゾーストスタッドボルトにすっぽり被せることで、シリンダーヘッドに近いねじが切られていない軸部分を保持することができる。細いスタッドボルトの先端部分にダブルナットを掛けると、経年劣化が進んだボルトではねじ部だけが折れてしまうこともあるので、根元を回せるプーラーが有効なのだ。


3本のローラーでスタッドボルトの根元を締め付けることで、折損することなく無事に取り外すことができた。プーラーをセットで買うほどでもないが……というサンデーメカニックでも、インテークマニホールドやエキゾーストマニホールドに多く使われているM6サイズのスタッドボルト用だけは持っておいて損はない。


軸部が長いシリンダースタッドボルトは、ヘッド側のねじ部分に工具を掛けて緩めようとしても中間でねじれてトルクが逃げてしまうことが少なくない。


そんな時でもローラー式のスタッドボルトプーラーなら、ねじのない中間部分で回せることがある。ねじ部と軸部の直径差によっては、ローラーが引っかからない場合もあるので、作業前の確認が必要。

スタッドボルトプーラー、スタッドボルトリムーバーと呼ばれる工具は、デリケートなスタッドボルトを安全に取り外すためのアイテムです。スタッドボルトを緩めるための仕組みは、ボルト雄ネジ部分にねじこんでフリクションを与えるダブルナット方式と、ボルトの軸部分にローラーを押しつける方式に大別されます。

ダブルナット式はローラー式に比べて工具自体がコンパクトに収まる傾向がありますが、ねじロックが効いているボルトに対してはローラー式の方が有利なようです。

内部に複数(主に3個)のローラーが組み込まれた、ディープソケットのような形状のプーラーをスタッドボルトに被せて反時計回りに回すと、ソケット内部のスロープに沿って転がるローラーがボルトに食い込んでいきます。そして緩め方向の力が大きくなるほどローラーが強く食い込むため、スタッドボルトが緩み始めるというのがスタッドプーラーの仕組みです。

ダブルナット方式ではスタッドボルトのねじ部分を引く力で緩めようとするため、ボルトが掛かる数山のねじ部分に力が集中する傾向にあります。これに対してローラー方式はローラーの長さ分とローラーの個数分だけ接触面積を稼ぐことができるので、緩めトルクを効率良くスタッドボルトに伝えることができます。

またダブルナット方式と異なり、ソケット内部のローラーはねじのない部分でも保持できるという利点もあります。中間部分にねじがないシリンダーのスタッドボルトのシリンダーヘッド側にダブルナットを付けて緩めようとしても、ボルト全体がねじれるばかりでクランクケース側のねじにトルクが伝わらないことがあります。

そんな場面でもローラー式のプーラーなら、長い軸部を貫通させてスタッドボルトを保持できる可能性があります。ねじ部と軸部の直径差が大きいスタッドボルトの場合、ローラーが軸部を保持できず空振りしてしまうこともあるため、事前にスタッドボルトとプーラーの対応範囲を確認しておくことが必要です。しかし長いボルトの根元近くを保持できれば、その分トルクのロスを減らすことができるので作業を有利に進めることができます。

ただし、ローラーをスタッドボルトのねじ部に強く押し当てると、ねじが傷んでナットがうまく入らなくなる場合があるので、プーラーを使って外したスタッドボルトは再使用せず、新品に交換するのが前提となります。

スタッドボルトは日常的なメンテナンスでは取り外す機会は少ないですが、いざという時には確実に緩めないと後が面倒になります。ダブルナットやロッキングプライヤーだけでは太刀打ちできないと感じたら、スタッドボルトプーラーやリムーバーなどの専用工具を用意してから作業に取り掛かるようにしましょう。

POINT

  • ポイント1・専用工具のスタッドボルトプーラーを使うことで、スタッドボルトに対して効率的に緩めトルクを伝えることができる

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    ネジ部喰えるとネジ山全部潰れます

  2. 細川タカシ より:

    買わないほうが!良い?
    アストロプロダクト行くわ!

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