
旧車や絶版車だけでなく、ドライバーやスパナの掛かりが浅い状態で力を加えただけでもボルトやビスを破損することがあります。そんな時に頼りになるのがタガネです。金属の切断や剥離、ハツリ作業用などいくつかの種類がありますが、スロットタガネと呼ばれる鈑金用はボルトやねじに鋭く食い込み、緩め方向への力を効果的に伝達できます。
ショックドライバーよりダイレクトでセンターポンチより鋭く食い込む
十字穴が潰れたマスターシリンダータンクキャップの皿ねじを緩める際に、スロットチゼルの鋭い刃先が重宝する。皿ねじで力を加えすぎると座面にダメージが及ぶことがあるので、緩みづらいからといってやみくもに叩いてはいけない。
角が丸くなったボルトを緩める際はスロットチゼルを斜めに当てて緩め方向に打撃する。インパクトレンチと同様の効果で、頭に加わる衝撃によって固着が緩むことが期待できるが、細いボルトだと刃先が食い込みすぎて頭が切断してしまうこともあるので要注意。
固着したり錆び付いたボルトナットやねじを緩める際にはダラダラ、ジワジワと力を加えるのではなくある程度の勢いと力があった方が良いのは、インパクトレンチやショックドライバーの存在からも明らかです。
十字穴からドライバーの先端が外れようとするカムアウトが致命的な弱点であるプラスビスは特に、押しつけながら一気にグイッと力を加えることが重要であり、貫通ドライバーのグリップを緩め方向に回しながらハンマーでガツン!と叩くと緩みやすいのも、衝撃が効いているからです。
しかし一気に力を加えるということは、その前提としてしっかり狙いを定めておくことが重要です。どうせブン殴るのだから……と、工具の掛かりが浅かったり斜めの状態で力を加えると、かえってねじやボルトを傷める可能性が高まります。
プラスねじの十字穴が潰れたりボルトナットの六角部が丸くなった時、例えばボルトナットであれば花びらのような開口部がボルトナットに食い込む「ターボソケット」と呼ばれるような特殊な工具を使って緩めることができます。そうでなくても、ねじやボルトの頭をロッキングプライヤーでガッチリ掴んで、強い力を加えるのも効果的です。
それよりもっと直接的に衝撃を与えられるのが、以前紹介したセンターポンチや今回の主役であるタガネです。センターポンチもタガネも、ドライバーやソケットが引っかからないようなねじやボルトを叩いて回せるのが特徴です。しっかり食いついたロッキングプライヤーやボルトから外れない利点がありますが、手で回すため力の立ち上がりは緩やかです。しかしポンチやタガネはハンマーで叩くため一気に強力な力を加えることができます。
タガネは金属の切断やコンクリートのハツリや成型、溶接時のスパッタを除去する際に使用する工具ですが、切れ味の鋭いスロットチゼルをうまく使えば頭が潰れたねじやボルトを緩めるのに重宝します。ねじの頭を緩め方向に回す際にマイナスの貫通ドライバーを用いることもありますが、そもそもドライバーとタガネは用途が異なり、切断に用いるタガネの方が圧倒的にシャープに相手に食い込みます。
マイナスドライバーをタガネのように使うと素材に粘りがないため軸先が割れてしまうことがありますが、タガネは簡単には割れません。できればあまり多用したくない工具ではありますが、工具箱の備えておけばいざという時にとても頼りになります。
- ポイント1・さまざまな種類があるタガネの中で鈑金作業用のスロットチゼルは切れ味が鋭く固着したねじやボルトナットを緩める際に使える
「食い込み力」「回転力」の組み合わせとバランスが重要
六角穴付きボルト=キャップボルトとヘックスレンチの掛かりが浅い、あるいは斜めになった状態で回そうとすると、六角穴の角がなめてしまうことがある。ロッキングプライヤーで掴めない時は、ボルトの頭にすり割り溝を作ってしまうのも有効。スロットチゼルなら鋭いマイナス溝を作ることができる。
ここでは垂直に溝を切っているが、ボルトの頭に対してスロットチゼルを斜めに叩き込めば緩め方向の力を加えることができる。溝を掘りすぎるとボルトの頭が割れたり取れたりするので、状況を見ながら作業する。
ショックドライバーのマイナスビットがしっかり食い込むぐらいの溝ができれば、固着したボルトも緩めやすくなる。通常のヘックスレンチが大きくしなるぐらい力を加えてもボルトが緩む気配がなければ、早めにショックドライバーやインパクトレンチに切り替えた方がダメージを小さく抑えられる可能性が高い。
ショックドライバーのグリップを緩め方向に回しながら、エンド部分をハンマーで力強く打撃する。グリップ内部のカム構造で打撃力を回転力に変換するのがショックドライバーの特徴なので、一発で緩める意気込みで躊躇せずガツンと叩く。
金属の切断に使えるだけあって、切れ味の良いタガネは使い方に注意が必要です。なめた頭に対して直角に叩き込むだけでは、細いねじでは頭だけが切断される危険性があります。一方でねじを回す意識が強すぎてタガネを寝かしすぎると、刃先が食い込まず滑ってしまう恐れもあります。
タガネの刃先を頭部に食い込ませながら回すには、食い込みと回転の力をバランス良くコントロールします。難しいようですが、ボルトやねじに対してタガネをおよそ45度傾けた状態で叩き込めば、刃先が食い込みつつ緩め方向への推進力を与えることができます。センターポンチと同様の使い方ですが、先端が尖ったポンチよりも当たり面が広く確保できるため効率良く力を加えられるのが利点となります。
タガネ単体でねじを緩めることもできますが、鋭い刃先を使って他の工具が使えるような工作もできます。例えばプラスねじの十字穴が潰れた時には、マイナスドライバーが引っかかるような溝を作ることも可能です。
この使い方は、六角穴がなめてしまったヘキサゴンボルトを緩める際に有効です。ヘキサゴンボルトは十字頭のなべねじに比べて頭部の肉が少ないため、タガネの鋭い刃先が食い込むと裂けてしまうこともあります。それを避けるため、ショックドライバーのマイナスビットが食い込むよう、あえてマイナス溝を切っておくという手段があります。
ねじやボルトを緩め方向に叩くことで緩み始めればラッキーですが、タガネの刃先が食い込むばかりで緩む気配がいっこうにない場合は、他の工具(ここではショックドライバー)が使えるように方針転換できるのも、鋭い切れ味を持つタガネならではの活用方法と言えます。
- ポイント1・タガネを使う際はねじの頭部に食い込ませる力と回転させる力を意識して角度を調整する
この記事にいいねする
あまりにも、しょうもない記事、素人が切れ味鋭いタガネを、使うことの注意事項画なし。プロでも失敗が起きやすいのに、大切なバイクも、使う者にも被害が大きいのに、なにかの提灯記事?
サラビスでタガネ使うのってかなり難しい。よっぽどもドリルで揉んで部品取ってからプライヤーで挟んで取る方が楽じゃないか?
潤滑油でビタビタにして2〜3日放置したあとにエキストラクターか逆回転ドリルビットを使った方がいい。
タガネで叩くとかプロでも難しいうえに原始的なやり方を素人が真似したら危険なだけ。
ショックドライバーのマイナスをかませる為の溝を掘るにしてもリューターとか使った方が安全で早い。