部品交換する際に、その部品ばかりが気になってしまい、周辺部品の注文を忘れてしまうことがある。また、販売中止になっているモデルの場合は、独自に自作部品で対応することもある。その代表例と呼べるのが「各種ガスケット」ではないだろうか?ここでは、シリンダーベースガスケットの自作例をリポートしよう。

美しく仕上がってきたシリンダーホーニング



仮に、4ストローク4気筒エンジンなら、ピストンが4つもあるのでそうは簡単に分解実践できないエンジン腰上メンテナンスだが、2スト単気筒エンジンでしかも空冷なら、その気になれば道端で部品組み換えも可能だろう。今回は、新品オーバーサイズピストンとピストンリングを用意し、内燃機加工のプロショップでボーリング&ホーニングを依頼した。ピストンクリアランスは、メーカー規定値で指定。サービスマニュアルなどを参考に数値決定しよう。いつみてもiB井上ボーリングによるプラトーホーニングとポートの面取りは美しい。最終仕上げの直前にポートエッジを面取り加工してから最終ホーニング仕上げが行なわれる。ピストンクリアランスは40~45/1000mmで指定した。仕上がったシリンダー内に新品ピストンリングを挿入してピストンで押し込み、リングの合口隙間をシックネスゲージで測定。新品時のデータを測定しておくことで、後々の減り具合がより明確になる。標準隙間は0.2~0.35mmくらい。

新品ガスケットセットを持っていた、はず!?



以前に購入しておいたガスケットセットがあるから安心していた。ところが、シリンダーベースガスケットだけ、すでに使ってしまったことを、忘れていました……。ガーン!!仕方ないので、汎用ガスケットシートで手作り決定。デイトナから発売されている汎用ガスケットシートを利用して自作。この商品は本当に便利。厚さには種類があって、セッティングも可能になるる。今回は、手元にあった0.5mmを使ってベースガスケットの自作にトライしてみよう!!

まずはスリーブの出っ張りΦ径を決定







シリンダー本体から突き出ているスリーブ外径をノギスで測定するとΦ58mmほどだった。まずはこの大きな丸穴を作ることで、その後のガスケット加工が楽になる。サークルカッターがあれば容易にカットできるが、ここではコンパスを使ってΦ59mmほどのケガキ線を入れた。ケガキ線の上なぞるように切れ味鋭い小型R刃ハサミでカット。切れ味鋭い小型R刃ハサミは、様々な場面で活躍するので工具箱の中に1つ入れておくと便利だ。缶ジュースのアルミ缶やスチール缶も余裕で切ることができるので、工作作業時には最適である。微調整しながらシリンダースリーブにガスケットがスムーズに入ることを確認したらスタッド穴の切り取りだが、実寸測定だと穴ズレする可能性があるので、ここでは無理にカットしなかった。

光明丹で「転写」してみた



バルブ擦り合わせ時の確認用に使う光明丹をシリンダー本体のベース側へ綿棒で塗ったら、ガスケット紙を押し付けて形状を転写する。決してキレイではないが、この程度に転写できればハサミによるキリヌキも楽々だ。刃先が鋭いハサミの威力が素晴らしい。光明丹が転写された境界線をハサミで切り抜き、スタットボルトの穴は、穴抜きポンチを利用して、木板を下敷きにしてハンマーでガツンと打ち抜く。

こんな手作りガスケットでも使える!!





汎用ガスケットシートにも種類があり、厚さもあるが、エンジン用としては高密度紙で崩れにくいタイプがベストだろう。ガスケットの自作に要した時間は10数分。スタッドボルトの位置が僅かにズレてしまったが修正可能な範囲なのでOK。ボアアップキット用シリンダーでベースガスケットを作る際には、純正ベースガスケットのシリンダー穴を拡大することで自作可能。こうしてクランクケース側へガスケットをセットしてみるとシリンダー側の掃気通路とクランクケース側の通路形状が一致していないことがわかる。修正可能な箇所はハサミで微修正しよう。

POINT

  • ポイント1・ 部品交換時には周辺部品や消耗部品の注文も忘れずに!!
  • ポイント2・ガスケットシートには厚さが異なる数タイプがあるので、エンジンメンテナンス好きなら常備しておこう!!
  • ポイント3・

次の週末にメンテナンスしよう!!部品交換して絶好調を目指そう!!次はクラッチディスクを交換しよう!!などと考え、パーツリストを見ながら部品を注文……。急加速時や追い越し加速時に「クラッチの滑り」を感じやすいモデルが多いが、メンテナンス時にケチってしまい、フリクションディスクだけ購入。いざ分解したら「クラッチプレートが焼けていた……」といった経験のあるサンデーメカニックもなかにはいるはずだ。また、フリクションディスクとクラッチプレートをすべて新品部品に交換したのに、いまひとつ滑り感が……?なんて感じることもある。そんなことにないためにも、はじめからクラッチスプリングを新品部品に交換するのがベターである。

このように、新品部品に交換する際には、周辺部品のコンディションにも気を配ることが大切だ。さらに大切なのが「消耗部品」の注文を忘れないことである。湿式クラッチ周りをメンテナンスするには、クラッチカバーを取り外すことになる。そんなメンテナンス時には、クラッチカバーガスケットが消耗部品になるので、カバーガスケットも部品注文しなくてはいけない。運良く切れずに剥がすことができたとしても、ガスケットは新品部品に交換するのが原則。突発的な分解修理の際には「液状ガスケット」を手持ちしていると助かるケースも多い。この液状ガスケットにも用途適正があるので、通常の「シリコン系」だけではなく「耐ガソリン性」や「耐熱性」も常備しておくのが望ましい。

ここでは空冷ストエンジンの腰上オーバーホールを展開しているが、こんな作業時にも事前に準備しておきたいのが、各種ガスケットである。空冷2ストエンジンなら、シリンダーベースガスケット、銅板やアルミ板(社外品にはアルミヘッドガスケットがあるが吹き抜けやすい)のシリンダーヘッドガスケット、インテークマニホールドガスケット、エキゾーストガスケットなどがある。リードバルブ付きエンジンなら、リードバルブ用ガスケットも必要だろう。今回は、アフターマーケットのガスケットキットが手持ちにあったので、それを使おうと思ったら、以前にシリンダーベースガスケットだけ使っていたのを忘れていて、慌ててベースガスケットだけ自作することにした。

こんなときに利用できる便利な部品がベースガスケットシートだ。以前に購入しておいたガスケットシートがガレージにあって良かった!!中古ガスケットがあれば、それを複製することもできるが、今回は部品から採寸して、ベースガスケットを切り出すことにした。こんな方法があることも、知っていただければと思う。

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