黒色樹脂素材の色をそのまま生かした、プラスチック樹脂成型部品を数多く組み込んでいるバイクやスクーター。チェーンケースやインナーフェンダーなどがその例だが、小型スクーターなどでは、ボディパーツの多くが黒樹脂色のまま仕上げられている例もある。ここでは、メーターパネルが白っぽくなり始めたので、「PP樹脂ブラック」を利用したペイント仕上げにチャレンジしてみた。また、白色で明記された各種表示は、白色ペイントで筆入れ&文字修正してみた。ここでは、そんな作業テクニックをリポートしよう。
汚れたメーターパネルと白文字を復活させる!!
長年の歳月で文字がカスレてしまい、読み取りが不可能に近くなってしまうようなメーターインジケータパネルもある。修正方法には、何通りかの手段があるそうだが、ここでは、直接的に文字をタッチアップ修正することにした。画像からもわかるように、メーターパネルやインジケータバネルの細部はゴミや汚れで汚い状態。こんな状況から脱し、仕上げ作業に入れるコンディション作りを始めよう。
何よりも大切な段取りが作業前の部品洗浄
樹脂部品をリフレッシュするときのお約束は、中性洗剤や「かんたんマイペット」
などの家庭用汚れ落とし洗剤を使った洗浄だ。他の製品と比べ、この洗浄剤は樹脂パーツに与える影響が少ないらしく、この作業を行っているモデルクリエイトマキシでは、好んでこの洗剤を使っている。全体的に洗浄&クリーニング後は、インジケータパネルの水分をしっかり蒸発させた後にマスキングを行う。隅々までしっかりテープを添付できるように、画材工芸道具のスパチュラを利用すると良いそうだ。
いい感じの風合仕上げ「PP樹脂ブラック」
ハンディヒーターを使って乾燥させたら(熱風は近づけないで離して送風)、デイトナ製PP樹脂ブラックペイントで、メーターパネルを薄く薄く重ね塗りする。塗膜が薄く、樹脂部品の特徴であるシボ感を再現できるペイントなのだ。樹脂製チェーンケースやインナーフェンダーのリフレッシュにも使える。一般的にPP樹脂製部品は弾力性があり、塗膜の密着が今ひとつ良くないことでも知られているが、その名の通りPP樹脂ブラックは密着性が高まる成分が入り、良い仕上がりを得られるとして人気のケミカルだ。ペイントを終えたら、さらにハンディヒーターで熱風を避けながら乾燥させる。局所的に強く熱風が当たってしまうと塗膜表面がダメージを受けてしまうので要注意。
筆先を整えて白文字の筆入れ
メーターパネル中央のインジケータ部分は溶着されていて分解できなかったため、タッチアップで文字修正することにした。まずは極小筆の毛先をデザインナイフで整え、筆のコントロール性を高める。ウレタンペイントの白色を利用し、文字が欠け部分や罫線の薄れている部分に筆毛先をタッチさせてペイントを載せていく。書く(文字を引く)というよりも、筆先でタッチしているような印象だった。筆先でタッチするだけでも、さすがに白ペイントが太く、はみ出てしまう箇所はある。タッチアップが乾燥したら、デザインカッターのエッジで、文字ライン通りに削ぐように、はみ出た部分を修正していく。なるほど!! 「IGNITION」のような凸文字部分の上端面は、筆先コントロールだけで文字入れすることができた。
- ポイント1・ 金属部品でも樹脂部品でも、どんな部品を仕上げる時にも大切なのが事前段取り。まずは部品のクリーニングが重要だ
- ポイント2・ 黒樹脂部品の風合いが蘇るスプレーケミカルでお化粧直し
- ポイント3・ 細かな筆入れ文字の再生時は、筆先の刷毛をカッターで整えてから作業進行しよう
メーター文字盤のカスタマイズやデザイン復刻を行ないたいなら、パソコンに実データを取り込み(スキャンやデジカメ画像をベースに)、文字修正もしくは文字を新たに作って印刷することで、完成形を目指すことができる。
ここでは、黒樹脂部品のメーターパネルを化粧直ししつつ、インジケータパネルに書かれた一部の文字を補修してみよう。メーター本体のプラスチックボディは、樹脂製チェーンケースやインナーフェンダーなどの「補修ペイント」として高い実績がある、デイトナ製「PP樹脂ブラックスプレー」を利用。美しさ回復を目指してみた。以前、ヨーロッパ仕様のカワサキ空冷Z550GPで、ロングタイプのリアフェンダーの化粧直しを実践したことがあったが、そのときの印象も良かった。
経年変化と劣化で、本来の黒色が白っぽく=白化してしまっている部品を見かけることは多い。そんな白化しつつある樹脂部品に、デイトナ製「PP樹脂ブラックスプレー」を利用し補修することで、黒色樹脂部品の美しさが復活する。テクニックとしては、ヒートガンを使って、スプレー前に樹脂部品を温めておくと、塗料の密着性が高まるようだ。ペイント施工後、2年以上経過した部品もあるが、普段の手入れだけで、その美しさは保つことができている。そんな経験があったので、メーターパネルへの施工でも、迷うことなくPP樹脂ブラックスプレーを利用し、仕上げてみることにした。
作業時に大切なことは、ペイント前の「部品クリーニング」である。
どんな作業時でも、段取りがしっかりしていないと、その後の作業が思い通りに進行しないのだ。樹脂部品は、シンナーやアセトンなどの溶剤で拭き取り、汚れ落としするのではなく、中性洗剤やクリーニングケミカルと不要になった歯ブラシや綿棒などを利用し、細部を優しく擦って洗浄しよう。部品の汚れを落とし、完全に脱脂してからペイント作業に入ることで、塗膜に弾きが出ることなく上手に仕上げることができる。
インジケータパネル上の擦れて消え欠けている極小文字の復活にもチャレンジしてみた。仮に、メーターパネルから、半透明のアクリル製インジケータパネルを取り外せるのなら、取り外したパネルをスキャンしてデスクトップで文字データを作り、その後、パネル表面をバフ掛けで仕上げて輝かせてから、データ文字で復活させれば、かなりの仕上がりを期待できる。しかし今回は、クリアパネルを取り外すことができなかったので、フリーハンドで文字修正にトライしてみた。
このような方法でも、メーターパネルはリフレッシュすることができる。機会があるときには、是非、チャレンジしてみよう。細かな部分の輝きが積み重なることで、バイクの見栄えは大きく変わるものだ。
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