
メーカー純正部品は、一定の年数でメーカーとしての部品保有期間が切れるため、「未来永劫に純正部品は供給されるものではない」。在庫切れと同時に、販売中止部品となってしまうのが一般的だ。今後しばらく乗り続けたいモデルと巡り合ったときには、スペア部品を購入しておきたいもの。大切な部品であるにも関わらず、意外と忘れてしまいがちな部品のひとつに「ラバー系&ゴム系の部品」がある。ここでは、ボロボロになっていて、現在では入手できないウインカーレンズのマウントゴムを自作してみよう。
目次
ボロボロになったレンズ用マウントゴム
ホンダのスーパーカブC100シリーズや初期ボディモデルのリアウインカーは、フレームボディに直接レンズを締め付けるようなデザインを採用している。当時のゴム素材が良くなかったのは明らかで、ガスケットでありパッキンとなるゴム部品がボロボロになってしまっている例は数多い。雨天時に走ると、フレームを伝わった雨水が隙間から染み込んでしまい、金属部品がサビてしまうことでも知られている。そんなゴム部品を何とかできないものか……。ここでは自作複製にトライしてみた。
ゴム板と「靴底修理材」を利用!?
一般的に購入できるNBR製のゴム板と「靴底修理ゴム」として販売されているケミカルを準備した。靴底修理ケミカルは、想像以上に様々な商品が販売されているため、修理需要は想像以上にあるのかも知れない。サンスター製は、茹でることで形状硬化させるのが特徴だった。ここでは作業時間をコントロールできると思ってサンスター製を購入したが、自然乾燥させる商品も販売されていた。
ウインカーボディサイズの型紙作りから開始
ウインカーベースとなる金属部品の輪郭をコピー用紙へ転写し、さらにレンズ内への水分侵入を防ぐ土手を形成する部分の寸法輪郭も加味して型紙を製作した。コピー紙のままではヨレヨレで型紙として使いにくいので、PP樹脂製のクラフトシートを切り出し、コピー紙の型紙を補強することにした。
PPクラフトシートを併用して型紙強度アップ
型紙サイズをコピー紙に転写したら、寸法ピッタリではなく大きめにカットした型紙の裏側へのりスプレーを吹き付け、表面が乾燥したらクラフトシートへ接着。しっかり添付できたことを確認したら、切れ味鋭いハサミでクラフトシートごと型紙をカット。締め付け部分や配線を通す穴は、穴あけポンチを利用して打ち抜いた。打ち抜き加工時には、型紙の下に板を敷き、ハンマーでガツンと打ち抜こう。
レンズと一体化して土手製作
ボロボロになったゴム部品とゴム板から切り出した製作途中のゴム部品を比較してみた。これで土手を形成できれば、かなりいい感じの複製部品ができるのだが……。土手盛後のウインカーレンズとの離型がスムーズになるようにマスキングテープをレンズに添付したが、この作業は不要だったのかも知れない。
靴底修理材のゴムで土手づくり
使い終わったり、折れた金ノコの刃部をディスクグラインダーで削り落とし、自作したヘラを使って靴底修理ゴムを土手状に盛り付ける。靴底修理ゴムは意外と硬く、盛り付け修理自体は比較的容易に行うことができた。お湯で茹でない限り簡単には硬化しないので、納得できる形状になるまでヘラで修正しても良さそうだ。形状成型できたら、鍋に張ったお湯に部品を沈めて、規定の温度、規定の時間で靴底修理ゴムを茹でて硬化させる。
お湯で「茹でて」硬化する修理材
パッケージに記載がある通り、熱湯5分で硬化するが、作業中は固まらないのがサンスター製の靴底修理ゴムケミカルの特徴だ。ゆで上がった頃合いに鍋から出してツメ先で触れてみると、表面はしっかり硬化し、弾力性も感じられた。熱湯で7~8分程度茹でてみたが、十分に硬度アップしている様子だ。ボロボロになった純正部品と比べて、しっかりした印象がある手作りゴム部品。土手を盛った部分とゴム板はしっかり接着されていて、簡単に剥がし取ることはできなかった。
ゴムスプレーで仕上がり風合い向上
靴底修理ゴムケミカルで盛った土手部分は、ゴム表面が艶消し状に仕上がるようだ。仮に、型にハメてゴム成形すれば、仕上がり表面にある程度のツヤはでると思うが、このあたりは仕方ないことだろう。そこで、プラスティデップと呼ばれるゴムスプレーの黒色を用意して、完成したゴム部品に適量吹き付けてみた。すると露出部分が半艶状かつ、いい感じに仕上げることができた。こんな自作複製ゴム部品作りもアリだろう。
- ポイント1・ 出来栄えうんぬんを懸念する以前にゴム部品としての機能を回復させよう
- ポイント2・ 図工工作のつもりで気楽にトライしてみよう。思いつくアイデアは即実践してみよう
- ポイント3・ ゴムスプレーを吹き付けることで仕上がり時のフィット感が良くなる
特殊形状のゴム部品の場合は、ワンオフで作るのは極めて大変。程度が良い部品を調達だきたときには、それをベースにシリコンゴムで型作りを実践。ウレタンゴムを流し込むことで、複製部品を作れないこともない。しかし、それは大変なことである。
しかし、単純な形状だとすれば、ゴム部品を自作複製できないことも無い。そんな具体的な実践が、ここでリポートしている、ウインカーベースゴムの自作だろう。
ここで利用している素材は、市販のゴム板(NBR=アクリロニトリル・ブタジエンゴムと呼ばれるゴム板素材。1ミリと2ミリ厚を準備した)と、やはり市販の「靴底修理ゴム」。我々の世界では、歯磨き粉だけではなく、スプロケットやブレーキローターのメーカーとしても知られるのがサンスターだ。そんなサンスターでは、靴底修理ゴムも製造している。このような靴底修理ゴムにも様々なタイプがあり(何種類か利用してみた)、最終的にはお湯で茹でることでゴム硬度をアップさせる、この商品が使い易い印象だった。黒色ゴムと白色ゴムの商品があったが、ここでは黒色ゴムを利用することにした。
型紙を作ってゴム板を切り出したら(厚さ2ミリ板を利用)、ウインカーバルブをホールドする金属部品とレンズを一体化する。レンズをホールドする土手となるレンズのフチを靴底修理ゴムで成形。柔らかいペースト状のゴムは、お湯で茹でることでしっかり硬化し形状が維持される。見た目が艶消し状になったので、部品にゴムスプレーを吹き付け、半艶仕上げとして完成。このような平面形状のゴム部品なら、比較的容易に自作できることがわかった。純正部品とは明らかに異なる形状だが、それでも機能的には、十分満足のいく部品を自作することができた。
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