
2ストロークエンジンは吸入空気量の増大によって、走りが大きく変わるもの。純正回帰主義の旧車シーンではあるものの、欲しくても純正部品が見つからないときには、同じ機能を持つ「高性能な部品」を取り付けたいものだ。そんな中で、吸入系の仕様が変わったり、純正マフラーからキットパーツなどのエキスパンションチャンバーへ交換したときなどには、軽く試運転してからプラグの焼け方を確認し、ざっくりでもキャブセッティングの方向性を確認しながら、全開試運転するように心掛けよう。
純正エレメントから低抵抗エレメントへ交換
パンチ力に欠けるエンジンフィール最大の原因は、減速比にあるのだと思うが、それと同時に吸入空気量が少ないことも判明した。エアクリーナーケースを取り外して比較走行したら、そのパワフル感がまるで違った!! 当初、吸入エアー量が不足していることに気がついたとき、純正エアクリーナーエレメントからターボフィルターに交換して走行確認してみたが、残念ながら体感的な違いは感じられなかった。カワサキトレールGシリーズ用のノーマルディスクカバー(キャブを取り付けるロータリーディスクカバー)にボルトオンながらメインベンチュリ口径が大きくなるのがKH250用純正キャブレターのようだ。内部パーツを組み換えて想定セッティングで走ってみた。その後、セッティングをさらに詰めていった。
ビッグキャブ化に合わせて高性能部品へ
エアクリーナーレスのままで走る気分には到底なれないので、サイズを調べてK&N社製フィルターの「取り付けられそう?」なものを購入した。総輸入元発売元のプロトさんに在庫があってラッキー!!メカニズムに詳しくないと「えっ!? なんでこんな場所にエアーフィルターがあるの?」と思われるかも知れないが、ロータリーディスクバルブ車の吸入エアー通路は実に複雑なのです。 大きく息を吸って~♪といった感じだ。クランクケースアッパーの吸入口径ドンピシャサイズは無かったが、やや小さいサイズの固定部分内径を加工して拡げ、取り付け寸法を合わせることで装着可能になった。
中古キャブの組み付け時はオーバーホール
吸入エアー量がさらに多くなれば「よりパワーアップするかな!?」などと素朴な疑問が湧いたので実践。純正流用でチョイスしたのがカワサキKH250用。当時のモトクロスシーンでは、カワサキGシリーズにS1/KH250用純正キャブを流用するのが流行ったそうだ。中古キャブの取り付け前には分解オーバーホールが必要不可欠。ガスケット類の調達に便利なのがキースターの燃調キットである。
キャブボディ改造テスト【自己責任で加工 】
クランクケースカバーの内側とキャブボディのインレット側が干渉したり、隙間がほとんどなくエアー吸入できないため、本来ならゴム製インレットパイプを差し込む接続部分を金ノコで大胆にカット!! 中古キャブはネットオークションでポチッと購入。エアーインレット部分をカットしたキャブボディを使い、ニードルジェット&ジェットニードル、各種ジェット、フロート&フロートチャンバーなどなどのパーツは、とりあえずノーマルキャブ用を移植。ロータリーディスクバルブ仕様のカワサキGシリーズ用キャブのエアースクリューはベンチュリ側の正面に付くが、KH250用キャブなのでボディ側面に付く。スロー系のスクリュー調整は、カバーを外して横からマイナスドライバーを差し込み行う。
- ポイント1・ 2ストロークエンジンは吸入空気量の変化でエンジン特性が変化しやすい
- ポイント2・吸気系、排気系を仕様変更したときには、いきなり全力走行するのではなく、軽めの試運転でキャブセッティングをまずは確認
- ポイント3・ 中古キャブを取り付けるときには、組み付け前に全バラ&洗浄オーバーホールを実践しよう
スズキ用ドリブンスプロケットを流用して、減速比を変更できたことで、ダッシュ力が良くなったカワサキトレール。しかしながら、もう少し、力強く走ってほしいのが正直な印象だった。そこで、エアークリーナーボックスを取り外し、試しに走ってみたら、これがなかなかイイ感じ!?今までの走りでは感じたことが無い、荒々しさがそこにはあった。エアークリーナーボックス付きでも、吸入空気量を増すために、吸入抵抗が少なくゴミやチリを濾過できるターボフィルターに交換すれば……。実践あるのみと考え、純正エレメントを取り外し、自作のパンチングメッシュ筒にハサミでカットしたターボフィルターを巻き付けた部品に交換。しかし、やっぱりエアーボックスが吸入抵抗になっているようで、元気な走りは影を潜めてしまった。
そこで、クランクケースのエアー吸入口に「K&N社製のエアーフィルター」を直接取り付けてみてはどうだろう!?といったアイデアが浮かんだ。K&N製品の国内総輸入発売元のPLOTカタログを見ると、ドンピシャサイズの口径商品は無かったが、ゴムパイプ部を少し加工すれば、取り付けられそうな寸法商品があった。早速発注して、手元に届いたK&N社製汎用エアーフィルターを加工し取り付けてみた。
試運転に出掛けると、これがいい感じ!! 明らかにパンチ力が増した走りになった。2ストロークエンジンは、吸入空気量でその走りが変わるものだと認識していたが、ノーマルマフラーのままでも、状況によっては吸入空気量の増大だけで変化を得られると改めて体感することができた。
そうなると、さらなる「パワーが欲しい!!」となってしまうもの。これまでの経緯をカワサキに詳しいバイクいじりの先輩にお話しすると「やっぱりビッグキャブ化だろうね。それと昔のモトクロスシーンでは、キャブボディに加工を施したこともあったよ」なんてお話を伺うことができた。ビッグキャブは、純正流用でボルトオンできた。この頃のカワサキ単気筒モデル(90~100CCエンジン)には、カワサキトリブルの末弟、KH250用がボルトオン可能なことが多いと聞き、早速、中古キャブを手配。確かにキャブマウント部分の口径は同じで、想像していたよりも簡単に取り付け流用することができた。セッティングも手持ちのパーツでどうにかなり、パワフル感はさらに増したのだった。せっかくビッグキャブ化できたので、当時のモトクロスシーンでよく行われていた、キャブボディの改造=吸入パイプ部分を金ノコでカットして、ヤスリで仕上げてみた。ロータリーディスクバルブ吸気車は、エンジンカバーが抵抗になってしまうため、カバー内側の空気通路を確保するために吸入口のパイプ部分をカットしたらしい。
一連のパワフル化チューニングによって、ほぼ満足できる走りを獲得できたような気がするカワサキ2ストトレール。バイクいじりは、本当に楽しいですね!!
この記事にいいねする