
最近のバイクのウインカーやテール/ブレーキランプにはLEDを採用する例が増えていますが、街中のバイクや自動車はフィラメントを使った電球仕様が数多く存在します。そんなライト類が点灯しなくなったら最初に電球切れを疑いますが、フィラメントが切れていないのに点灯しないこともあります。そんな時はさまざまな方向から接触不良を疑ってみましょう。
レンズのパッキン痩せがソケット腐食の原因になる?
ウインカーレンズを固定するビスをしっかり締めてもカタカタ動く場合、レンズとボディ間のガスケットが痩せている可能性がある。ただしこの部分のガスケットはすべてのウインカーやテールランプに入っているとは限らない。
反射鏡の下半分や電球の口金部分にもサビが発生している。この程度で作動不良となることはないが、放置すれば時間と共にサビの範囲は拡大していくので、分解してワイヤーブラシなどで取り除き、メッキの下の素材部分が錆びてしまっている部分は防錆のために薄くグリスを塗布してから組み立てる。
ウインカーやテールランプなどの灯具のソケットと電球の口金が接触すると回路ができて、電気が流れると点灯するというのが灯火類の基本的な仕組みです。ソケットと口金の種類や形状はさまざまです。円筒形の口金を持つ電球はソケット側も円筒状で、平らなガラスに銅線が剥き出しになっているウェッジタイプの電球のソケットはスリット状の差し込み口を持つ樹脂製であることが多いです。
円筒状のソケットに電球を差し込んでひねって固定する昔ながらのウインカーうやテールランプの場合、接触部分の導通が重要です。ギボシ端子やカプラーの端子に比べて電球の口金は接触面積が多いから接触不良はないだろうと考える人も多いでしょうが、必ずしもそうとはいえません。
ウインカーレンズやテールレンズとボディの間には、ゴムやウレタン素材のガスケットやパッキンが組み込まれていることがあります。これがレンズとボディの接触部分の摩耗を減らす目的もありますが、水分の浸入を防ぐ役割もあります。ボディとレンズの間だけでなく、ボディの外部に引き出される配線の根元にもシールパッキンが組み込まれている機種もあります。
経年劣化によってそれらが摩耗したり、硬化して痩せて気密性が低下すると、ボディ内部に水分が入り込みソケットや口金にサビを発生させ、それにより接触抵抗が増加して作動状態に影響を与える場合があります。
口金とソケット間の導通に問題がなくても、ソケットから車体につながるアース線の端子が腐食して導通不良を引き起こすこともあります。アース部分の腐食で接触不良を起こす例としてはホーンやウインカーリレーなども挙げられます。
作動不良時に電球切れだと判断してウインカーレンズを外して、ソケットや電球がサビだらけだと驚きますが、そんな時はサビを取り除くのはもちろん、他のウインカーもレンズを外してボディ内部を確認しましょう。不点灯となった場所だけが著しく錆びているようなら、ガスケットの切損やシールパッキンの脱落がないかをチェックします。
旧車や絶版車ですべてのウインカーボディ内部が同じように腐食している場合、経年劣化によるシール性の低下が考えられます。一度サビを取り除いてしまえば再び錆びが発生するまでは年単位の時間が掛かるでしょうが、ガスケット類は交換しておくのが無難です。
- ポイント1・フィラメントが切れていなくても、電球の口金とソケットの間に錆が発生することで接触不良を起こすことがある
- ポイント2・ウインカーやテールランプのガスケットやパッキンが劣化すると内部に湿気が入り金属部品に錆が発生する原因となる
中心電極のハンダ盛りで接触不良改善のカギとなる
ソケット側の電極に押しつけられ、車体の振動が加わることで摩耗した中心電極の一例。
中心電極にハンダを盛ることでソケット側との密着度が向上し、接触不良の軽減が期待できる。
ソケットや口金の腐食とは別に、接触不良や不点灯が断続的に発生することもあります。ウインカーやテールランプやブレーキランプが作動しないのに気がつき、フィラメント切れがないことを確認して電球を着脱した直後は点灯するのに、しばらくするとまた点灯しなくなっているというパターンです。
このような場合に考えられるのが、電球の中心電極の接触不良です。電球の中心電極はソケット底部の電極と接するよう盛り上がっていますが、接点のどちらかが摩耗することで導通不良を起こすことがあります。そうした不具合を起こさないよう、ソケット側の電極はスプリングなどで電球側に押しつけられていますが、それでも接触不良が発生する場合があります。特にテール/ブレーキ、ポジション/ウインカーなど、1個の電球に2本のフィラメントが組み込まれたダブル球の場合、電球側もソケット側も電極が2個になるのでどちらか片方で接触不良が起きると作動状態が不安定になることがあります。
そんな時に有効なのが電極のハンダ盛りです。電球側、ソケット側のどちらでも構いませんが(ソケット側の電極基板が引き出せなければ電球側に限られます)、電極にハンダを盛ってかさ上げすることで接触面積を確保するのです。
中古で摩耗した電極を盛るぐらいなら、新品に交換した方が気分が良いのは確かです。しかし電球が新品でも、ソケット側の状態によっては充分に密着せず接触不良につながることもあります。ソケットに電球をセットする際に、ロックピンを掛けても反発力が今ひとつ弱く感じる場合は、電極の当たりが弱いのかも知れません。このような場合、新品の電球にハンダを盛ることで状況が改善することが期待できます。
LEDのランプユニットは電球に比べて長期間使用できるのが特徴ですが、不具合が発生した場合は交換するしかありません。これに対してフィラメントを用いた電球は、アナログ方式の修理方法で機能を回復できることもあることを知っておきましょう。
- ポイント1・電球の中心電極とソケットの接点が経年変化により摩耗すると接触不良の原因となる
- ポイント2・電球の中心電極にハンダを盛りつけることで導通状態の改善が期待できる
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