バイク全体の印象に大きく影響する足周り部品。研磨仕上げのフロントフォークのアウターチューブが腐食すると一気にみすぼらしくなりますが、そんな時は地道に磨くことで輝きを取り戻せます。目の粗いペーパーで深く傷つけないよう注意しながら作業を進めましょう。

サビがクリア塗装の下で進行している時は剥離が必要


新車当時はアルミ地肌が美しい光沢を放っていたアウターチューブも、時間の経過と共にアルミ素材の腐食が進行していくのはよくある光景。市販車の場合は研磨した上からクリア塗装が施されているのが一般的で、機種によっては紫外線によって塗装が劣化して黄色く変色するものもある。

正立フロントフォークのアウターチューブはバイクの足周り部品の中でもかなり目立つパーツです。タイヤやホイールと同じく、雨水の跳ねやブレーキダストを清掃するだけでグッと引き締まりますが、表面仕上げの劣化は洗車だけではどうしようもありません。

アウターチューブの表面仕上げは黒やゴールドなどの塗装仕上げと、アルミ素材を磨いた研磨仕上げに二分されます。研磨仕上げの場合も、市販車の多くは研磨後にクリア塗装で表面を保護しているので、塗装仕上げの一部に含まれるかも知れません。

表面が色の着いた塗装であってもクリア塗装であっても、素材のアルミ合金自体には塗装が密着しづらく、酸化しやすいという特性があります。そのため、研磨した上にクリア塗装を施したアウターチューブは、塗膜の下で腐食が進行しがちです。これは研磨+クリア仕上げのアウターチューブだけでなく、実は黒やゴールドの着色塗料でも同様で、経年変化で塗膜がパリパリと剥がれてしまうことがあるのは、塗膜の下でサビが進行して密着不良が起きていることが原因となっています。つまり、塗装がクリアだから内部のサビが見えるだけで、色の着いた塗装でもその下では腐食は進行しているのです。

錆が発生したアウターチューブの修復には、再塗装か研磨のいずれかで対処します。いずれの場合も劣化したクリア塗装は剥離剤やサンドブラスト、サンドペーパーによる研削などで取り除きます。再塗装する場合はアルミ素材にサフェーサーやプライマー処理を行い、上塗り塗装を行います。上塗り塗装で着色するため、サフェーサーやプライマーが有色であってもかまいません。

POINT

  • ポイント1・アルミ製アウターチューブの表面仕上げには塗装と研磨の二種類がある
  • ポイント2・研磨仕上げのアウターチューブの腐食を修復する際は、表面保護用のクリア塗装を剥離する

粗い目のペーパーで深く傷つけないことが重要


クリア塗装がひび割れている場合は剥離剤が浸透しやすく、簡単に地肌を出すことができる。腐食痕で荒れている時は、サンダーなどの電動、空動工具で表面を研削するのが効率的。研磨パッドの裏にスポンジなどの緩衝材がついた物を選ぶことで、ペーパーが面で当たり削りすぎを防止できるメリットがある。


#600程度からはじめて、ここでは#1500のペーパーを水研ぎで使用する。水研ぎすることでペーパーが詰まりづらく、研磨粉が絡みづらくなるメリットがある。下研ぎから中研ぎ、仕上げとペーパー目を細かくする過程で、1工程前のペーパーで擦った痕が消えない時は、一度目の粗いペーパーに戻って研磨すると症状が改善することがある。

一方、カスタム感を演出するためアルミ素材を研磨するという選択肢もあります。この場合、クリア塗装を剥離した後にサビを取り除き、アウターチューブ自体を磨いて光沢を出していきます。

アルミ合金は配合される成分によって光沢の出やすさに差はありますが、研磨することで輝きが増すことは確かです。クリア塗装を剥離した後、メタルポリッシュなどのケミカルで磨くだけで光沢が出れば良いですが、すでに腐食が発生している場合は下地を作り直すことが必要です。

その際はサンドブラストやサンドペーパーで表面を研削するのが一般的で、深く傷つけないことが要注意ポイントとなります。プライマーやサフェーサー、上塗り塗装を重ねる再塗装であれば、多少の研削傷は埋めることができますが、研磨仕上げの場合はアウターチューブの素材表面が露出してしまうためです。またアルミ合金自体が鉄素材に比べて柔らかいため、粗い目の研磨材を使うと深い傷が入ってしまいます。

サンドペーパーで磨く場合、腐食の程度によって最適な番手は左右されますが、傷の入り具合を確認する上で#600ぐらいのペーパーで様子を見るのが良いようです。これで凸凹の腐食痕が均されるなら良いですし、アウターチューブ側のコンディションが悪くペーパーの食いつきが悪いようなら#400ぐらいまで目を粗くしても良いかも知れません。とはいえガサガサに腐食して荒れているからと言って、最初から#240などの粗い目を使うのはおすすめできません。粗いペーパーは研削力は高いものの深い傷を付けてしまうため、その傷をならす作業が大変になるからです。

最初はまったく削れる気がしない、手応えが希薄と感じるかもしれませんが、#600または#800ぐらいのペーパーで磨き始め、それで削れなければ徐々に目を粗くしていくのが深い傷を付けず効率良く作業を進めるカギとなります。

POINT

  • ポイント1・金属磨き用のケミカルだけで光沢が出る場合は、サンドペーパーによる研磨は必須ではない
  • ポイント2・表面の腐食痕を取り除く際は、深い傷を付けないよう目の細かいペーパーを使用する

回転バフがあればなお良いが手磨きでも見違えるほど輝く


メタルポリッシュ系のケミカルを利用することで、鏡面仕上げにすることも可能。ウールバフを付けたベンチグラインダーに押しつけることで、トルクと熱が加わり研磨効率がグッと向上する。細かい部分に届きづらいので、全体をピカピカに仕上げたいなら、キャリパーサポートやフェンダーステーなどの細かい部分は先に手磨きしてから全体を機械で磨くと良い。


サスペンションとしての性能は変わらなくても、アウターチューブが輝くことでグレード感が大幅に向上する。フロントフォークのオーバーホールと合わせて行うのが一般的だが、アッセンブリー状態でもアウターチューブだけ磨くことができるので、フォークの分解組み立てには自信はないがきれいにしたい、というライダーも実践できる。

例えば#600のペーパーで腐食痕が磨き落とせたら、次は#1000、#1500と目を細かくして磨き傷を目立たなくしていきます。この時、傷が消えるとともにアルミならではの光沢が出てくるので、ペーパーで擦った後をウエスで拭いながら確認します。

#1500程度のペーパーで錆びも傷も目立たなくなったら、アルミ磨き用のケミカルで仕上げを行います。ここではウールバフを強い研磨力を得られるバフモーターで回していますが、ペーパーの研磨傷が目立たないレベルに仕上がっていれば、ウエスによる手磨きでも鏡面近くまで輝かせることが可能です。

半光沢で止めるか鏡面仕上げまで磨き上げるかは好みによりますが、ひとつ問題があるとすれば、研磨仕上げの場合は表面保護のクリア塗装が難しいという点があります。バフ研磨を行う場合、研磨用のケミカルにワックス成分や油分が含まれていることが多く、シンナーやアセトンなどで脱脂洗浄を行うことで光沢が鈍くなることがあります。

またアルミ合金自体、塗装が密着しづらい素材なのでサフェーサーやプライマーを使わず直接クリア塗装を行っても硬化が長続きしないという難点があります。

ケミカルを使わないバレル研磨で鏡面仕上げを行い、透明度の高いアクリルクリアのパウダーコーティングを施せば光沢が維持できますが、これはどちらもプロに依頼しなければできない作業です。自分の手で愛車を磨きたいというサンデーメカニックであれば、ペーパーで錆を落としケミカルで光沢を出した後も、定期的に磨き続ける必要があります。

ただ、一度手間を掛けて下地から磨きだしておけば、日頃の洗車の際に金属用ケミカルで軽く磨くだけで輝きは回復するので、磨き好きにとっては大した苦労にはならないでしょう。

POINT

  • ポイント1・研磨力が強い電動工具を活用することでペーパーの磨き傷を短時間で消して光沢を出しやすくなる
  • ポイント2・金属磨き用のケミカルを使って光沢を出した場合は、輝きを持続させるために定期的に磨く

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