バイク経験が少ないものにとっては「こんなものだろう……」なんて思っていた走りが、経験豊富なバイク仲間に試乗してもらったら、あそこが、ここが……と、様々な指摘を受けることがある。乗りっぱなしにしていたため、コンディション低下に気が付かないこともある。ここでは、点火時期の確認とキャブセッティングの具体的な作業手順を再確認しておこう。

公道での試運転は登録後に実践

バイク屋には試乗用ナンバープレートがあるが、われわれ一般ユーザーは、登録しないと公道での試運転ができないので、そのあたりはしっかり肝に銘じないといけない。50ccモデルなので原付一種の白ナンバーを取得したが、排気量変更申請と理由書を作成すれば、黄色や桃色の原付二種ナンバーで登録することもできる。

小型車はローター内側にポイントがある





キック始動のホンダ横型エンジンの場合は、左側クランクケースカバーを取り外すことでアウターローターフライホイールが露出する。ローター側面には楕円穴があり、それがサービスホールとなっているので、その楕円穴からポイント(時計の針で50分あたりにレイアウトされている)を覗き込み、閉じているときに短冊に切って2つ折りにしたコピー用紙を挟んで接点クリーニングを行うと良い。ポイント接点がただれているときには、600番のサンドペーパーを同じく短冊切りの2つ折りにして接点に挟み、引き抜く作業を繰り返して接点両面を同時に磨くと良い。アイドリング時に回転するフライホイール楕円穴を覗き込むと、ポイント接点から火花が出ているか否か!?確認することができる。ポイント接点をクリーニングしたらエンジン始動。タイミングライトで点火時期が正しいか確認する。アウターローターフライホイールの場合は、ポイントギャップの微妙な調整で点火タイミングを調整することができる。

燃調キットでセッティング





キースターの燃調キットを購入し、オーバーホールついでにキャブセッティングにトライ。ノーマルの純正セッティングはノーマルエンジン=ノーマルコンディションに対応したものなので、走行距離を重ねたことやチューニングによって、エンジンコンディションは少なからず変化するもの。そんなときにありがたい味方となるのが燃調キットである。各種ガスケット類も同梱されているので、サンメカにとってはありがたいパッケージと言える。

スロットルは開け始めの印象が大切



なんとなく走るから大丈夫だと即決するのではなく、ギヤをシフトしてアイドリングからゆっくりスロットルを開始めた時や、ラフに開けた時の印象もチェックしたいのがキャブセッティングだ。ごく開け始めに息つきするときには、パイロットスクリューの調整で補正することもできるが、開け始めから加速段階で息つきやボコ付きがある場合は、ジェットニードルのクリップ段数やストレート径の変更によって、さらなるアップコンディションに導きたいもの。変更調整によって、驚くほど乗りやすくなることもあるが、逆に、的を外すと「あらら……」なんて結果にもなるので、セッティング作業は繰り返し行う気持ちで作業進行しよう。

スクリュー調整は極めて重要

スロットルストップスクリューでアイドリング回転数を気持ちだけ高く設定し、それからパイロットスクリューもしくはエアースクリューで、アイドル域におけるスクリュー調整を行おう。キャブコンディションが良くね二次空気を吸っていなければ、スクリュー調整でアイドリングがチカラ強く回転がやや高まる位置を見つけ出すことができるはずだ。そんなスクリュー調整を終えたら、スロットルストップスクリューを調整して、好みの回転数に落ち着かせれば良いだろう。

セッティング可否はスパークプラグにヒント

最終的にはスパークプラグの焼け具合でセッティングの可否を確認することができる。しかし、理想の燃え方を追求すると、全般的にガスが薄い傾向になり、オーバーヒートしやすくなってしまうオチがつく。サーキット走行なら理想を追求するのが良いが、街乗りには信号待ちや一時停止もあるため、どうしてもプラグの焼け方はくすぶりがちになりやすい。そんなプラグの焼け方を見て、利用に近づけようと薄く振るのは間違い。街乗り車の場合は、僅かに濃いセッティングの方が間違いなく調子が良い。このあたりがキャブレターとフューエルインジェクション=FI仕様の決定的な違いでもある。

POINT

  • ポイント1・ポイント車は接点の汚れや荒れを正してからポイントギャップを調整
  • ポイント2・点火時期の調整は点火ストロボを使うのが手っ取り早い
  • ポイント3・低速、中速、高速の使い分け範囲を理解してキャブ調整を実践することで、答えは見つけやすい

エンジン始動は比較的容易にできるけど「吹け上がりが今ひとつ」だとか「信号待ちで速度を落とし、エンジン回転が下がると、そのままエンストしてしまう……」などなど、エンジンの調子が、今ひとつ良くならないことがある。そんなときには、基本に立ち返り、各部を点検調整することから始めてみるのが良い。

排気量に関係なく、旧車の多くはポイント制御式のバッテリー点火やフラマグ点火を採用している。バッテリーやフラマグ点火コイルのコンディションに問題は無いのに、スパークプラグから火花が飛ばなかったり、火花が出たり出なかったりするときには、まずポイント接点の汚れ取りを行ってみよう。その方法は簡単。コピー用紙を小さな短冊状に切り、縦に2つ折りにして、それをポイントに挟む。ポイントが開いていては挟めないので、クランクを回してポイントが閉じる場所を見つけ、マイナスドライバー先端でポイントを開いてコピー紙を挟んで閉じる。次に、挟んだコピー紙をゆっくり引き抜くことで、ポイント接点の汚れをコピー紙で拭き取ることができるのだ。ウエスを使うと引っかかってしまうし、新聞紙のように薄いチラシ系では、ポイントスプリングの力で切れてしまいやすいので、これまでの経験ではコピー紙の厚さが一番良かった。

ポイントクリーニング後に必ず実践したいのが、エンジン始動中、アイドリング中の「ポイントの様子を目視点検」することだ。通常なら、時折チクチクッといった感じで火花が出る程度だが、回転毎にポイント接点がバシバシバシッと火花が出ているときには、すでにコンデンサ不良が起きていると考えよう。「ポイント交換したけど、再び接点がただれてエンジンの調子が良くならない……」なんてお話をよく聞くこひとがあるが、その原因はおおかたコンデンサにある。蓄電していた電力を一気にイグニッションコイルへ送り込む役割を果たしているのがコンデンサだが、この部品が不調になると、ポイント接点に火花がバシバシッと飛ぶようになり、スロットルをひねっても吹けが追従しなくなるのだ。特に、暖気後の温間時に症状が出やすいのも特徴なので、出先でそんな不調に気が付いたら、ひと休みしてエンジンを冷やし、ゆっくり走って帰宅。途中で再び不調になったときには、またひと休みを繰り返すのが良い。

キャブセッティングがイマイチだと感じるときには、まずは安定したアイドリングを求めよう。現状のスローもしくはパイロットジェットのままで良いので、エアースクリュー(エアー量を調整)、もしくはパイロットスクリュー(混合気量を調整)を、全閉から1回転戻しでエンジン始動。そして、スロットルストップスクリューを調整して、アイドリング回転を維持した状態で、前述したスクリューをゆっくり前後に回して、エンジン回転が力強く高まる箇所を探り出す。この時、エアースクリューが全閉から2回転以上回ってしまう時には、スロージェットサイズが大きいと考えられ、逆に閉じる方向なら小さいと考えられる。混合気の量を調整するパイロットスクリューが2回転以上開いてしまうときには、パイロットジェットが小さく、反対に閉じてしまうときにはパイロットジェットが大きすぎると考えられる。まずは調整するキャブのスクリューがどちらのタイプか理解することが重要だ。一般的に、スロットルバルブに対して、エアークリーナーケース側にスクリューがある場合が「エアースクリュー」。エンジン側にある場合は「パイロットスクリュー」だと考えるとわかりやすい。

スロットルを開け始めた時や加速中にストール感がある場合は、ジェットニードルのストレート径が太く(ガスが足りない)、ゴボ付く場合はストレート径が細い(ガソリンが濃い)と考えられる。言葉の表現ではわかりにくいのも事実なので、こればかりは経験値がものを言う。「薄いのかな?」と思って1ランク細いストレート径のジェットニードルに交換して濃くしたら「症状がさらに悪くなった……」といったケースもある。体感印象が実際とは逆だった、といったケースも実は多い。濃いのか?薄いのか?どちらなのか判断できない時には、2ランクほどサイズが違うジェットニードルに交換して、その違いを走りで体感してみるのが良い。方向性が見えてきたら、クリップ段数で微調整すれば良いのだ。クリップ最上段にすると中速域のガスは薄くなり、最下段にすると濃くなるので、その範囲の中で微調整すれば良い。

アイドリング域から普通に加速して走れるようになったら、全開域の微調整をメインジェットで行おう。ジェットニードルのセッティング時に、明らかにプラグ電極が白かったり、黒かったりするときには、あらかじめメインジェットも並行的に調整することで答えは見つけやすい。メインジェットが大外れの状況では、中間のジェットニードルセッティングに影響が出てしまい、うまく行かないものだ。

街乗り車の場合は「ややくすぶり状況」の方がエンジンは安定しやすい傾向だ。最終的には様々な条件で試運転を繰り返し、プラグの焼け方を確認してみよう。全開に次ぐ全開走りでプラグの焼け方を確認し、それを頼りにセッティング進行すると、どうしても薄くなりがちになってしまうことが多く、それが原因のオーバーヒートもある。どのような使い方でバイクを走らせるのか……?そのあたりも考慮しながらセッティングを楽しもう。

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