エンジン始動はできるものの、いまひとつ吹けが良くないとか、走りのフィーリングが今ひとつなどなど。友人所有の同モデルと交換して、走り比べてみると、間違いなくチカラが足りない……。そんな疑心暗鬼!?に陥ってしまったときには、基本的な点検項目を再確認してみよるのが良い。「数値」で確認してみよう。

コンプレッションデータは正直



燃焼室容積や排気量を鑑みた計算式によって導き出されるのが圧縮比だが、それとは別に、「実圧縮圧力データ」を測定することで、諸元表に出ている圧縮比とは違う、現状の実圧縮データを測定=目で数字を確認することができる。プラグ穴にアダプターをねじ込んで測定するタイプと、プラグ穴に円錐ゴムを押し付けて測定するタイプがあるが、ねじ込み仕様の方が安心して測定することができる。

スクリュー調整でキャブは様変わり

キャブレターにはスロットル開度を調整するスロットルストップスクリューと、アイドリング時のエアー量や混合器量を調整するスクリューが付くが、この初代OHVエンジンのスーパーカブのそれは、パイロットスクリューもスロットルストップスクリューも指先で調整するローレットつまみタイプで、しかもパイロットスクリューの方がノブが大きいため、勘違いしていじってしまい、自ら不安定に調整してしまっている例がある。キャブの分解時には単純に洗浄するだけではなく、キャブ構造をしっかり確認し、仕事の役割を理解することも極めて重要だ。

充電状況は電気テスターで簡単に!!





旧車にとって大きな鬼門は「電気=電装部品のコンディション」である。エンジン始動できてもそれでOKではなく、発電や充電がしっかり成されているか、確認することも極めて重要である。アイドリング中にバッテリー端子電圧をテスターで測定し、そのままエンジン回転を上昇させてみよう。エンジン回転の上昇とともにボルテージも上昇して、一定電圧を越えなければ大丈夫だ。この測定数値はバッテリーコンディションによっても左右されるので、測定時は正常かつ「生きているバッテリー」を利用し測定したい。6ボルトバッテリーの旧車にはレギュレーターレクチファイアが装備されていないので、最大でも8ボルトは越えたくない。超えてしまう場合はバッテリーの寿命が考えられる。仮に6ボルト用レギュレーターレクチファイアを装備すれぱ、バッテリーの寿命やバッテリー液の干上がり症状も回避することができる。

発電は「交流」、充電は「直流バッテリー」

旧車原付の多くは、ヘッドライトとテールランプを交流回路で制御し、ウインカーやホーンやブレーキランプを直流回路で制御している。ちなにに大型車の場合は、すべての機能をバッテリー電源で行っている例が多い(旧車の2スト大型車の中には交流フラマグ点火車もあった)。交流発電を直流にするのが整流器=レクチファイア機能だ。この整流器(セレンやシリコンダイオード)がパンクするとねバッテリー充電できなくなり、放電一方となってしまう。充電機能が今ひとつの時には、テスターで整流機能が生きている確認してみよう。整流器は電気の流れが一方通行なので、テスターの正極逆極を入れ換えることで通電状況を確認することができる。

イグニッションキーも要チェック



電気機能とは直接的に関係ないが、イグニッションキー内部で接点不良が起こると、走行中に突然断線状況になり、エンジンストップ……、といったトラブルもある。メインキーをひねってオンのポジションでエンジン始動。アイドリング中にキーを握って回すのではなく、キーを揺すってもアイドリングし続けるか、確認点検しておこう。ガタがありエンストするようなときには、揺すったことで断線が起きている可能性が考えられる。症状が良くない時には部品交換、もしくはイグニッションのスイッチ接点を分解して、修理可能か否か!?確認してみるのも良いだろう。また、キーと言えばハンドルロックだが、ロック機能が正しく作動するかも確認しておきたい。今のご時世、旧車は窃盗団にとっても注目のモデルなのだから。

POINT

  • ポイント1・2ストエンジンでも4ストエンジンでも、パワー不足やトルク感不足の原因は「エンジン圧縮」によるところが多い
  • ポイント2・バッテリー点火モデルの大型車は、電気系=バッテリーコンディションでパワー感に違いが出ることもある
  • ポイント3・当たり前の機能が当たり前に作動することも確認しよう

エンジンコンディションを問ううえで、極めて重要なのが「圧縮圧力=コンプレッション」である。4ストロークのガソリンエンジンを例にすると、旧車時代は10kgf/cm2前後に設定されていたが、現代の4ストロークエンジンは、バルブのはさみ角を小さくし、フラットピストンの採用によって圧縮圧力設定を高め、希薄ガス燃焼による高燃費と同時に、高出力化を図ったエンジンとなっている。ノーマルエンジンながら圧縮圧力は1200~1300Kpaも当たり前の世の中だ(1kgf/cm2=98.0067Kpa)。チューニングエンジンになると圧縮圧力が高まるため(小排気量エンジンほど圧縮圧力は高まる傾向)、旧車の2バルブエンジンでも(例えばホンダ4ミニのモンキーやエイプなど)、1300~1400Kpaは当たり前になる。話はそれるが、旧排気バルブの開き時間が長く、オーバーラップが大きなレーシングカムやハイカムのを組み込む場合は、同時にコンプレッションを高めなくては想定したエンジンパワーは得られなくなってしまう。特に、カムシャフト交換を行う場合は、ハイコンプピストンやボアアップによる排気量アップと同時にコンプレッションを高めないと、想定したエンジン性能を得られないことは知っておきたい。

そんなコンプレッションデータを知ることで、エンジン内部のコンディションを察することができる。測定時の約束事は「スロットル全開で力強くクランキングすること」。サービスマニュアルでは、エンジン暖気後に測定したデータが標準値となっているケースが多いが、状況によっては、必ずしも暖気できないこともあるので、そんなときにはマニュアルデータを目安として参考にすればよいだろう。エンジン始動が可能な時には、冷間時データと、エンジン暖気後の、温間時データのいずれも測定し、どれほどの違いが出るのか、実践体験しておくのも良いだろう。

エンジン始動が完了し、アイドリングするようになったときには、同時に測定したいのが「充電状況のコンディション」だ。バッテリー端子にテスターのリード線を当て、停止状態のバッテリー端子電圧、アイドリング状態の端子電圧、エンジン回転を上昇させたときの端子電圧を測定。ボルテージの上昇を確認しておくことで、後々安心できることにもなる。6ボルトバッテリー車の場合は、アイドリング時で6.2~6.4ボルト前後(12ボルトバッテリーなら12.2~12.4ボルト前後)、エンジン回転を5000~6000rpm前後まで高めると、7.2~7.6ボルト(12ボルトバッテリーなら14.5~15ボルト前後)出ていれば充電状況は良いと考えられる。バッテリー本体のコンディション自体でデータが変化することもあるので知っておこう。また、発電状況が悪ければバッテリー端子電圧は高まらず、逆に、電圧低下する症状になることも知っておこう。そんなときには発電コイル(ステーターコイル)やレギュレーターレクチファイアの点検が必要になる。そのあたりは今後別途リポートしよう。

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