
旧車遊び、旧車いじりを楽しんでいる先輩方にお話を伺うと、みなさん口を揃えた決まり文句!?のひとつに「スペアパーツや補修パーツはできるだけ所有しないと……」というお話。確かにその通りだろう。ここでは、電気系(点火系)トラブルを修理するにあたり、スペアで購入しておいた同系列エンジンから取り外し、中古部品の取り付け実践修理をリポートしよう。
買っておいて良かったスペアエンジン!!
以前にガレージセール=部品交換会で購入し、物置の奥に押し込んであったカワサキ空冷90cc単気筒エンジンを引っ張りだし「使えたらいいなぁ!?」と祈る気持ちで確認してみた。ローター内側の半分ほどは過去に水没していた履歴がある?かのような痕跡がある。手持ちのスペアエンジン、スペアパーツはこれしかなかったが、何とかなりそうな雰囲気化……。
フライホイールの取り外しには専用工具
フライホイール(アウターローター)を取り外すときにはローターホルダーで回り止めしてから、まずはセンターナットを緩める。この回り止めツールは様々な機種で使えるので、サンメカならひとつは欲しいところだろう。センターを締め付けるナットとワッシャを取り外したら、フライホイールプーラーを利用しよう。フライホイール側の大きなネジは逆(左)ネジなので、まずはそれをネジ底まで指先で締めつけ、それから十文字プーラーを押し込んでフライホイールを取り外す。
発電コイルには点火用と充電用がある
エンジン真横から見てポイントの左、3個あるコイルの左上コイルには細いエナメル線が巻かれてあるコイルがある。この細い線で巻き数が多いコイルが「点火用エキサイターコイル」だ。連続走行で熱を帯びた時に、コイルのどこかで内部短絡してしまうのだろうか?右と左下のコイルは太いエナメル線が巻かれるのが特徴で「充電用チャージコイル」である。
昼?夜?優先順位で配線差し替え!?
メーカー製サービスマニュアルを借りることができたので、適合機種の電気回路や電気系の部品仕様を確認すると、配線色を差し替えると充電量を切り替えることができるタイプだった。昼間走行と夜間走行、利用頻度が多い使い方で配線を差し替えるような指示があった。現在なら常時ヘッドライトオンなのでありえない装備だが、60年代モデルには、こんな使い分けもあったようだ。
磁力の低下で発電力が変化!!
モデルによっては組み込まれるノーマルフライホイール仕様が異なり、マグネットをアルミ本体に鋳込んである仕様もなかにはあるようだ。内部に鋳込まれたマグネットの磁力を確認するためにドライバー軸を使ってみた。すると、ドライバー軸を吸着してもフライホイールを持ち上げられなかった。一方、スペアエンジンから外したフライホイールは明らかに磁力が強く、ピタッとドライバー軸を吸着すると簡単には外せない強さだった。また今回はメンテナンスついでに、スペア部品のポイントとコンデンサに交換した。組み換え後、実走テストへ出掛けてみたが、以前のような失火症状は出なかった。
- ポイント1・同一モデルではなくても、同系列エンジンを搭載したモデルがある場合は、そんなエンジンの互換性を確認してみよう
- ポイント2・特殊工具はバイクメーカーの垣根を越えて利用できるケースがある。まずはネジサイズから確認してみよう
近所をクルクル走り回っているときには何事も起こらないのに、ちょいツーリングに出掛けると「パンパン、パンッ!!」突然、失火するような症状が発生。路肩で数分休憩すると、その後は何事も無かったかのように復帰……。トラブル原因は、概ね4箇所のどれかだと考えられる。イグニッションコイル?ポイント&コンデンサ?フライホイール?それとも点火発電コイル?所有していたスペアエンジンからパーツを取り外し、交換してみることから始めた。
試運転で10数キロ走る程度では、何事も起こらず極めて絶好調なのだが、ツーリングに出掛けると、決まって不思議なトラブルに見舞われてしまうことが多かったカワサキ90。どうやら全開走行を続けてオーバーヒート気味になると、その症状が現れるようだ。トラブル内容はいつも同じで、エンジンが温まるとその症状が出る。「パンパン、プシュ、パン!!」とミスファイアが起こるのだ。セミレストア後に公道復帰。その直後には、このような症状が発生する。当初は「IGコイルかも?」と思い、スペアの手持ちIGコイルに交換。しかしまた同様のトラブルが発生した。
以前、4ストエンジンのホンダ4ミニでも似たような症状が起こったこともあった。6ボルト車なら十中八九、ポイントにつながっている「コンデンサ不良」によって起こる症状である。エンジンが冷えているときには、例えば、コンデンサの規定値が0.25uF(マイクロファラット)だったとしても、エンジンが温まるにしたがい数値データが変化(温間時にコンデンサテスターで測定すると0.85uFのときもあった)、本来のコンデンサ機能を発揮できることなくミスファイアを起こし、エンジンストップ。もしくはアイドリングができても、その先はまったく吹け上がらなくなる、そんな症状が発生する。こんな症状が出たときに、エンジン始動中のポイント接点を覗き込む(回転するフライホイール奥を覗き込む)と、アイドリング中のポイント接点から、火花がバチバチ出ている……。12ボルトエンジンのCDI車で、似た症状が発生したこともあったが、そのときにはスペシャルパーツの軽量レーシングフライホイールを取り付けていた。そこで、フライホイールカバーを取り外し、走行風で冷やしながら走ってみたら、その症状は出なくなった。
以上のような経験から、着火不良(失火)トラブルが発生したら「フライホイールカバーを外して冷やしながら走れば大丈夫」といった緊急時のお約束が頭の中にあり、これまではすべて、この方法で帰宅することもできた。でも、やっぱり本当の原因追求=トラブルシューティングしない限り、気持ち良く走ることができない。そこで今回は、スペアエンジンからコイルベースAssyを取り外して一式交換。点火用コイル=エキサイターコイルと充電系コイル=チャージコイルを、ベースプレートごと交換することにした。
充電系回路が違うようなので(配線の立ち上がり本数が違う)、アレンジして接続し、エンジン始動。するとアイドリング時は6.2ボルト前後で、エンジン回転を高めると8ボルトを超えたので、発電機能は問題無いと判断。肝心のエキサイターコイルは実走テストでエンジンを温めなてからでないとわからないが、その後のツーリングは、何事も起こること無く走り切ることができた。ツーリング先では、温まったエンジンのアイドリング中にポイント接点を目視確認してみたが、火花が出ることも無く大丈夫。その後は何も起こらず原2ツーリングを楽しむことができた。旧車は何が起こるかわからないが、トラブル原因をシューティングできた時には、何にも代えがたい嬉しさがあるものだ。
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