
重要保安部品かつ精密部品の筆頭と呼べるのがスピードメーターやタコメーター。完全デジタル仕様の現代的メーターは電子部品であるため、サンメカが触れるには高い壁があるのが事実。一方、旧車の機械式アナログメーターの場合は、DIYで「お化粧直し」くらいなら実践できるモデルもある。ここでは、過去に分解された様子があった旧車用コンビネーションメーターの「文字盤のお化粧直し」にチャレンジしてみた。
目次
一体式コンビネーションメーターの時代品
中古部品で購入したコンビネーションメーター。文字盤が何故だか曲がっている? 歪んでいる!!のが気になってしまう。機能的には何ら問題が無いので、メーターを分解して文字盤を取り外し、文字盤の曲がり歪みを直すことができないものか!? チャレンジしてみようと考えた。さぁ、結果や如何に……。
サンメカ独自の分解工具を手作り
メーター修理ではなく、メーターのレンズリムを分解することができれば、文字盤を取り外すことができるはず……?この分解作業における難関は、ガラスレンズをカシメ固定するリムの「カシメ起こし」だろう。そんなカシメを起こす工具を、余っているマイナスドライバーを使って自作してみた。通常のマイナスドライバーでもカシメは起こせるが、少しでもエッジを引っ掛けやすいように、先端形状を削ってみた。
第一の難関はメーターリムのカシメ起こし
メーターレンズのリム外径よりも少し大きなホースバンドを準備しよう。まずはメーターボディへキズが付かないように、テコ部分=ドライバー軸を押し付ける部分へビニールテープを2~3周巻いて傷つき防止の保護をした。さらにリム外周にホースパンドをセットして、軽く締め付けて固定。カシメを起こすときにリムがニゲないように、ホースパンドを「タガ」のように利用するの。カシメ部分は集中的に攻めてしまうと切れてしまうので、ダメージを与えないよう、慎重に作業を進めよう。
指針はテコの応用で抜ける
ガラスレンズと金属リムは一体状態かつ、間に入るゴムパッキンもそのまま一体でボディから取り外そう。一体で取り外し後に、ガラスレンズ、リム、インナーリム、パッキンなどなどを単品にして磨き込むが、ゴムパッキンが剥がれにくいときには、温めてから作業進行もしくは容器にぬるま湯を入れて、お湯に浸しながら分解しよう。それぞれのパーツを磨いて汚れを除去したらしっかり乾燥させよう。さらにガラスレンズの内側には曇り止めケミカルを塗布し、乾燥した柔らかいウエスで磨き上げよう。
ボディから文字盤を取り外す際は、文字盤を固定するビスの頭をテコの支点にして、2本のドライバーなとで起こすように指針を抜き取る、指針はメーターの回転軸芯にテーパーでギュッと押し込みこていされている。この作業時に大きなビニール袋の中で作業進行することで、指針をフッ飛ばさずに済むことを知っておこう。指針を抜き取ったら文字盤締め付けビスを緩め、文字盤を取り外す。
折れ曲がっていたメーター文字盤
文字盤をひっくり返すと明確になるが、やっぱり完全に曲がり、歪んでいた。何故、このような状況になったのか?このメーターはニコイチ品だったのかも……?
ゴム板とアルミ板のハイブリッド!?
薄板部品の歪みを平面に補修したいときには、フラットな板を用意して、歪んだ部品を挟んだ状態にして、万力で挟んで補正するのが良い。しかし、今回の場合は、インジケータランプのレンズやオドカウンタードラム部分のプレス曲げ処理が入っているため、その部分を逃がすように、厚く剛性感のあるゴム板をカットして逃がすように板挟みにした。利用したゴム板の厚さは3ミリ、アルミ板は10ミリ。
簡易的に万力プレスで折れ修正
プレスの曲げデザインやインジケータランプを逃がしつつゴム板で挟み、さらに10ミリ厚のアルミ板を利用して、ゴム板で挟まれた文字盤をベンチバイス(万力)で強くクランプ。曲がり歪みを補正してみた。グイッとしっかり締め付けると、アルミ製文字盤は思いの外、キレイにフラット形状へと蘇ってくれた。
水性のUVコートで仕上げ
紫外線に強い「水溶性のUVペイント」が、メーター文字盤の再生時には良いとの情報を得たので、商品に記載される手順でUVペイントを水道水で希釈し、スプレーガンを使って薄く薄く重ね塗りした、より細かなペイントに適したエアーブラシを利用した方が良いのだろうが、ここではスプレーガンを利用して、慎重に作業進行してみた。薄く塗ったらしばらく待ち、乾燥したらもう一度塗り重ね、3回の塗り重ねで満足のいく仕上がりになった。作業ランプの明かりを熱源にUVペイントを乾燥させてから組み立て復元した。
完成!!何とか文字盤の曲がり歪みを修理復元することができた。水溶性UVコートを吹き付けたことで、文字盤表面の輝きが均一化され、良い感じの見た目になった。修理前と見比べて欲しい。
- ポイント1・メーター機能の修理修復ではなく「見た目」の修理なら何とか可能!?
- ポイント2・壊したくない部品ならメーター修理のプロに依頼しよう
メーター故障は大問題。軽二輪枠を越える排気量モデルには車検制度があり、検査ラインでは、ヘッドライトの光軸・光量・カットライン、前後ブレーキの制動力検査、それらの検査と同様に「スピードメーターの検査」が行われる。ユーザー車検経験があるサンメカならご存じだと思うが、テスターローラーの上にスピードメーターギヤやメーターセンサーが取り付けられるホイールを載せ(モデルによって前輪、後輪がある)、ローラーの回転によってメーター指針やデジタル数値が上昇し「40km/h」に達したときにフットスイッチを操作し(ヘッドライトをパッシングする検査ラインもある)、検査官へスピード到達を知らせる、といったもの。
重要保安部品のため、あってはならないのが故障だが、メーター機能に関する修理はメーター修理専門業者へ依頼するのが一般的である。しかし、メーター機能以外の部分で、メーターを何とかしてみたい……化粧直しくらいはできるかも!?といった希望も。転倒や立ちゴケによってメーターリムを凹ませてしまったり、メーターガラスが割れてしまった……といった例もある。仮に、部品取り用のメーターから必要な部品を取り外し、言い方を変えれば「ニコイチ」で仕上げられるかも!?なんて考え方もあるだろう。
ここにリポートする旧車用メーターは、過去に分解された痕があった。見ての通り、文字盤が折れ曲がっている不思議なダメージがあった。何故、このようなコンディションになったのかは不明だが、それでもこの文字盤の歪みだけは直したいのがマシンオーナーの希望だった。文字盤の歪みを無視すれば、スピードメーター指針の表示やオドメーターのカウンター作動、タコメーターの作動には問題が無かったため、文字盤の曲がり歪みが残念でならない状況だったのだ。
そこで、メーターレンズのリムカシメを起こして内部部品を取り外し、文字盤の曲がり歪みを板挟みにして補正=万力で挟み、形状再生してみた。歪みを可能な限り取り除いてからは、UVコートを吹き付け、文字盤表示を安定させてみたところ(クリアペイントのような使い方ができる、実際には半艶仕上がりになる)、ご覧のような美しい仕上がりを得ることができた。これだからDIYメンテ&修理再生は楽しいですよね!!
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