多すぎるとスイングアームに接触し、少なすぎるとリアサスペンションの動きを妨げるため、ドライブチェーンのたわみ量は常に適正範囲に調整しておくことが重要です。これまでの経験値でたわみ量を決めているライダーもいるかもしれませんが、意外な数値を指定している機種もあります。思い込みで作業せず、取扱説明書などで確認することが重要です。

ドライブチェーンの伸びとスプロケットの摩耗で進行する「たわみ」


ドライブチェーンのリンクがスプロケットのラバーダンパーに乗って直径が大きくなることで、見かけ上のたわみ量が減るのがMT-09の特徴らしい。走行時にはトルクが加わるためダンパーにリンクが食い込みたわみ量が増えているようだ。


サイドスタンドで立てた状態で、シートに荷重を掛けず、前後スプロケットの中央部でドライブチェーンを上下に動かした時のたわみが5.0~15.0mmになるのがヤマハMT-09(2018年モデル)の規定値。チェーンに触った印象では、張りすぎと感じるほど。

加速時や減速時はもちろん、一定速度で走行している時にも張力が加わり続けているドライブチェーンは、走行距離が増えるほど伸びが発生します。チェーンの伸びについては何度か説明していますが、チェーンを構成している部品のうち、リンクをつなぎ合わせるピンとブッシュが摩擦することでピンが痩せて、リンク間の距離が増えることを指しています。リンク間の距離が増えるとスプロケットの歯と噛み合うローラー間の距離も広がることになり、間隔が広がったローラーがスプロケットの歯を摩耗させます。この相互作用によってチェーンが伸びた結果、たわみ量も増加します。

チェーンの伸びやスプロケットの摩耗によって徐々に増えるたわみ量ですが、バイクの駆動系にとって適正なたわみは必要です。たわみが増えてドライブチェーンに接触するようになるとリンクが摩耗してチェーンの強度が低下し、スイングアームも傷付きます。しかしたわみ量が少なすぎるとリアサスペンションのストローク中にチェーンが突っ張って動きが悪くなったり、突っ張ることでチェーンの伸びがさらに増加する原因になります。

リアサスペンションのストローク範囲でチェーンのたわみがどのように変化するかは、シートに荷重を加えてリアショックを縮めていくことで確認できます。さらに徹底するならリアショックをを取り外した状態でスイングアームを上下に動かすことで分かります。これらの方法でチェーンが最も強く張る位置を見つけて、その時点でたわみがあれば実際の走行時に突っ張ることはありません。

しかしそうした作業を行わなくても支障をきたさないよう、バイクメーカーでは機種ごとに適正なたわみ量を設定しています。たわみ量を点検する際にサイドスタンドで立てるのかメインスタンドを使うのか、前後スプロケットのどの位置でどれくらいのたわみ量にするのが適正なのかは、機種によってまちまちです。バイク歴が長くなると「だいたいこれぐらい」という基準ができることもありますが、まず第一にそのバイクを開発したメーカーの数値を参照すべきです。

POINT

  • ポイント1・リアサスペンションの動きを妨げず、ドライブチェーンが暴れてスイングアームを傷つけないよう適切なたわみ量が設定されている
  • ポイント2・リアサスをストロークさせて確認することもできるが、たわみ量の適正量を知るには取扱説明書を確認する

たわみ量の規定値は取扱説明書で確認する


スイングアーム左側のアクスルシャフトホルダーはナンバープレートステーと兼用となる個性的なデザイン。スイングアーム端部は斜めに立ち上がるステーに隠されて見えない。

ドライブチェーンのたわみ量は「だいたいこれぐらい」という思いを大きく混乱させるのが、ヤマハMT-09の例です。画像で紹介する2018年型のMT-09 SPの場合、サイドスタンドで車両を立てた状態で前後スプロケットの中央部を上下に動かした時に「5.0~15.0mm」のたわみ量が規定の範囲であると取扱説明書に記載されています。

撮影のためメンテナンススタンドを掛けていますが、サイドスタンドで5.0~15.0mmのたわみ量はかなりパツパツで張りすぎに感じます。取説の数値を見なければ、もっとたわみ量を増やしたいと感じるライダーも多いことでしょう。

サスペンションがストロークする際のチェーンのたわみ量を決める要因のひとつには、前後のスプロケットとスイングアームピボットの位置関係があります。スイングアームピボットが前後スプロケット中心を結ぶ線から外れるに従い、ストローク中のたわみ量の変化が大きくなる傾向にあります。逆にドライブスプロケットとスイングアームピボットが接近すれば、サスペンションのストロークによってドライブスプロケットが上下に動いてもチェーンのたわみ量の変化は小さくなります。

MT-09の場合、ドライブスプロケットに組み込まれたラバーダンパーにも特徴があるようです。走行時にドライブチェーンから発生する騒音を低減するためドライブスプロケットにラバーダンパーを採用している機種があり、MT-09もそれを装着してます。走行時にはダンパーが潰れてドライブチェーンとスプロケットがしっかり噛み合いますが、停車時はラバーダンパーにチェーンのリンクが乗り上げて見かけ上の直径が大きくなることでたわみ量が減少するようです。つまり停車時にはチェーンのローラーがドライブスプロケットの歯の底から浮いているため、それを見越したたわみ量が設定されているという理由があるようです。

この場合、ダンパーのないドライブスプロケットに交換した時にたわみ量をどのように設定するかを考えなくてはなりませんが、少なくとも純正スプロケット装着時のたわみ量は5.0~15.0mmで間違いはありません。取扱説明書には、たわみ量が25.0mm以上になるとドライブチェーンがとスイングアームに接触するする恐れがあるため走行しないようにという注意書きまであるぐらいなので、数値に従って調整することが重要です。

POINT

  • ポイント1・ドライブチェーンのたわみ量には機種ごとに固有の理由があることもあるため必ず取扱説明書で確認する

チェーンアジャスターの構造も機種ごとの特徴がある


チェーンアジャスターはボルトとロックナットで構成されており、右の六角部がボルトの頭で左がロックナットとなる。ロックナットを緩めてボルトを反時計回りに回すことで、ボルトの頭がアクスルシャフトホルダーを押してチェーンのたわみ量が減少する。言うまでもないが、たわみ量を調整する際は最初にアクスルナットを緩めておく。


MT-09 SPのチェーンアジャスターは左右非対称のデザインで、アクスルシャフトホルダーはシャフトの回り止めを兼ねている。ロックナットを緩めてアジャスターボルトを回し、スイングアームとホルダーの目盛りを合わせる。実際のところ、左右のアクスルホルダーの形状が異なり基準となる目盛りも左右で違うためアクスルシャフトの位置を合わせづらい面もある。


アクスルシャフトとアジャスターの間に遊びができないよう、ドライブチェーンとドリブンスプロケットの間にドライバーの軸や丸めたウエスなどを挟んでタイヤを回した状態でアクスルナットを締める。


アクスルナットを締めたらアジャスターボルトとアクスルシャフトホルダーの間に隙間がないことを確認してロックナットを締め付け、ドライブチェーンのたわみ量が5.0~15.0mmの範囲に収まっていることを確認する。

ドライブチェーンのたわみ量が15.0mm以上の場合、チェーンアジャスターで調整します。アジャスターの構造にもいくつかの形式がありますが、このMT-09はスイングアーム後端からアクスルシャフトを「引く」のではなく、アクスルシャフトの前側からボルトで「押す」ことでたわみ量を調整します。いずれのタイプでもアクスルシャフトを遠ざければたわみ量が減っていくので、左右の刻み目盛りを参考にしながら規定値の範囲内に調整します。

同じヤマハ車でも、SR400はメインスタンドで立てた状態で30.0~40.0mmがたわみ量の規定範囲となっています。この常識で純正スプロケットのMT-09を調整すれば、停車時には適度なたわみに感じても、走行するとドライブチェーンとスプロケットが接触してしまう可能性があります。

バイクのメンテナンスにとって経験値やノウハウは重要ですが、機種によって異なる特徴を正しく理解して作業することが重要です。

POINT

  • ポイント1・チェーンアジャスターの形式にかかわらず、アクスルシャフトが斜めにならないように調整する
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