ピストンリング音が走行中でもカチカチと耳障りに聞こえたり、エンジンの始動性が低下してきたときなどは、ピストンリングやピストン本体そのものの摩耗によって、コンディション低下しているケースが多々ある。特に、空冷2ストエンジンの場合は、コンディションチェックと早めの部品交換によって、比較的容易に現状最善のエンジンコンディションをキープできるので、エンジンを長持ちさせたいのなら、早めのメンテナンスを定期的に行うのが必要不可欠だ。

締め付けナット4個を取り外すと新世界!?



80年代以前の空冷2ストローク単気筒エンジンなら、エンジン腰上のシリンダーとシリンダーヘッドを共締めするスタッドボルトの締め付けナット4個を取り外すことで、シリンダーヘッド、シリンダーの順に部品を抜き取ることがでる。、ピストンを取り外すのには、段取りとしてマフラーやキャブを取り外す時間が必要だが、初トライでも30分あれば十分だろう。正しい工具を使って作業進行。

旧車のスペア部品はオーナー個人でストック

もはや販売中止になっている旧車用純正部品はなかなか見つけられないので、見つけた時には、オーナー自身がストックするように心掛けよう。使い込まれたピストンと新品ピストの「色の違い」に注目。ピストンリングが圧縮を保つことができず、圧縮抜けしていた様子をピストンコンディションからも伺い知ることができる。

周辺パーツのコンディションを要チェック



エンジン腰上を分解したときには、コンロッドのスモールエンドにベアリングをセットした上でピストンピンを差し込み、コンロッドとピストンピン間に首振りなどのガタが無いか確認しよう。さらにコンロッドのビッグエンドとクランク部分に摩耗隙間やガタが無いか確認しよう。抜き取ったピストンからピストンリングを取り外し、そのリングをシリンダー内に挿入して合口隙間を測定してみよう。リング外周が摩耗したことでリング合口が広がり、もはや1.0ミリ以上の隙間が!!0.5mm以上の隙間でピストンリングは使用限度と考えてよい。新品を組み込んだら0.35~0.40ミリだった。

ピストンクリアランスを大雑把に確認



新品ピストンと取り外したピストンのスカート部分をダイヤルゲージで測定すると、30~35/100ミリ摩耗していた。新品ピストンをシリンダー内に挿入する。吸排気の向きを間違わないように挿入しつつ、排気側でスカート部分のピストンクリアランスをシックネスゲージで測定すると0.07mmのゲージを挿入することができた。大雑把なクリアランス測定だが、これでもある程度は理解することができる。今回、シリンダーはこのまま組み込んだが、次回はさらなるオーバーサイズピストンを用意し、ボーリング&ホーニングが必要不可欠だろう。

組み立て時の面取りとクリーニング



新品ピストンや分解シリンダーを組み込む時には、ピストンスカートのエッジをサンドペーパー(600番+オイル塗布)で優しく当たるように面取りを行おう。また、排気ポートがカーボンで汚れたシリンダーは、シリンダー内径にキズを付けないように注意しながら、リューター+ワイヤーバフでカーボンを除去。いずれも作業後にはパーツクリーナーでしっかり洗い流し、組み合わせ時には2ストロークオイルを塗布して作業進行しよう。

組み立て時に使い易いゾイルスプレー



新品ピストンリングを組み込んだら、オイルをしっかり塗布してピストンピンピンを差し込むが、こんな作業時にもシュッと吹き付けられるゾイルスプレーは便利だ。ピンクリップを落とさないように、ウエスでクランクケース穴を養生したからクリップを固定し、シリンダーを載せるようにピストンを挿入しよう。リングエッジを引っ掛けないように注意しつつ挿入したら、再度シリンダー内壁にオイルスプレーを吹き付け、シリンダーを押さえて動かないようにしながら、クランクを回してみよう。このとき、リング全周が同じようなオイル跡になれば良いが、リング折れなどがあるとシリンダー壁にオイルの線が残ることがある。確認が済んだら上死点で止め、溢れたオイルはウエスで拭き取ろう。

1973年モデルのカワサキトレールG4北米仕様車。ミニサイズトレールも人気だったが、前後18インチのボディサイズも人気シリーズだった。作業後、エンジンノイズは以前と比べて減り、低速からの力強さも明らかに太くなった印象だ。

POINT

  • ポイント1・スカスカに摩耗する手前で部品交換を繰り返すことでエンジン性能を維持できるのが、空冷時代の2ストロークモデルの特徴
  • ポイント2・取り外したピストンのリング溝よりも下にカーボン汚れがあるものは、爆発圧力が逃げている証拠=リング摩耗の証拠
  • ポイント3・新品ピストンを組み込む時にはスカード部分の面取り加工を必ず実施しよう

空冷2ストロークエンジンは、メンテナンス性が良いことで知られている。4ストエンジンのように、カムシャフトだ、バルブだ、ロッカーアームだ……などなどが無く、シリンダーヘッドは単なるフタのような構造。ピストンを取り外すのにも、慣れていれば僅か10数分で取り外せるモデルもある。

ノーマルエンジンで普通に走っていて、2スト用エンジンオイル(分離給油オイル)を「入れ忘れることなければ」、エンジンコンディションは快調なはず。ギヤオイル(ミッションオイル)は、5000km毎に交換すれば十分だろう。しかし、普通に走らせているだけでは面白くない!?のがサンデーメカニックかも知れない。チャンバーを取り付けてビッグキャブを装着。キャブセッティングにチャレンジすると、以前と比べてメーター読みの最高速が20km/hもアップ!! そんな現実が当たり前だったのが、70~80年代に登場した空冷2ストスポーツモデルだった。

そんな走らせ方をしていると、エンジンライフは想像以上に短かくなってしまうものだ。仮に、ノーマルエンジン車でも、ミニバイクレースやミニモトクロスに参戦し、常用高回転域で走らせていると、部品の摩耗は想像以上に早まってしまうものだ。2ストエンジンは、ピストンリングが摩耗したり、ピストン本体のスカート部分が摩耗すると、エンジンノイズが大きくなり、明らかにパワー感が落ちるものだ。そんなパワーの違いを体感できるようになったときには、エンジン内部パーツは、相当に摩耗進行していると考えられる。そうなる前にピストンを取り外し、内部コンディションは確認したいものだ。仮に、抜き取ったピストンのピストンピンボス周辺や、ピストンリングから下のピストン外周が「黒くススけている」時には、ピストンリングの摩耗は明らかである。爆発燃焼ガスをしっかり保つことができず、ピストンリングの隙間から抜けた燃焼ガスが、リング下のエリアへ「スス=カーボン」となって付着したものだ。

すでに050OSピストン(0.50mmオーバーサイズピストン)が組み込まれていたので、ここでは、新品の050OSピストンとピストンリングを用意し、各部の寸法を確認しながら組み込んでみだ。作業完了後に試運転すると、エンジンノイズは以前と比べて明らかに減り、トルク感が向上していた。機械は本当に正直だ。

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