さまざまな事情でバイクに乗れない期間があると、その間にも各部が劣化していきます。汚れやサビもさることながら、最も面倒なのがガソリンの劣化です。キャブレター車でもインジェクション車でも、ワニス状に変質したガソリンが原因で始動不能になるバイクは少なくありません。そうなると本格的なオーバーホールが必要ですが、固着したキャブレターを分解する際に力任せは禁物。ケミカルに加えてヒートガンなどで加熱することでスムーズな分解が可能になります。

ガソリン満タンで保管する時も劣化防止剤の併用は必須


一年ほど乗ることがなく、久しぶりにスロットルグリップを捻ろうとしたところガッチリロック。この機種のキャブレターはケーブルがピストンに直接接続されていて、ピストンとキャブの間に変質したガソリンが固着しているとまったく動かなくなることがある。負圧キャブレターもバタフライバルブのシャフトが張りつくとまったく動かなくなる。


ガソリンタンクに注入することで酸化や劣化を抑制できるケミカル。このケミカルを注入したガソリンでもエンジンは動くので、長期保管する前にケミカル入りガソリンをキャブレターに入れておくことで固着防止に効果がある。

さまざまな事情でしばらく愛車に乗れない期間を経て、久々にエンジンを掛けようとしたら始動する気配すらない……。そんな経験のあるライダーは少なくないはず。セルモーターは回り、スパークプラグから火花が出ているのに始動しない場合、燃料関係に原因があると考えられます。

燃料タンク内のガソリンが古くなると燃えづらくなり始動に手こずることもありますが、劣化したガソリンが変質して樹脂化したりサビの原因になってしまうとさらに面倒です。かつては、タンク内に空間があると外気温や湿度の変化に伴って結露が発生してサビの原因になるため、長期保管する際は燃料タンクを満タンにしておくのが常識とされていました。しかしたとえ満タンであっても劣化が進行するため、現在では酸化や劣化を抑制するケミカルを併用することが良いとされています。

タンク内の劣化を抑えたとしても、キャブレター内に残ったガソリンの劣化は進行します。それを防止するには、保管前に酸化や劣化を防止するケミカルが入ったガソリンでエンジンを始動し、キャブレター内にケミカル入りガソリンを入れておくのが有効です。しかし意図することなく結果として保管状態になった場合には事前の対策はできません。久しぶりにスロットルを回そうとしてビクともしない状態に慌てたライダーもいることでしょう。

燃料の劣化のスピードや度合いは周囲の環境によって左右されます。空調が効いたガレージと露天で車体カバーをかぶせた状態では、当然後者の方が早く劣化するでしょう。ちなみにガソリンを使わない状態というのは長期保管だけとは限りません。

家庭用のコンセントでも充電可能なプラグインハイブリッド車では、使用条件次第では長期間に渡りガソリンを消費せずに走行することが可能です。そこである車種では、電池残量が充分でも一定期間ガソリンが消費されないとエンジンが始動する、つまり燃料タンクのガソリンを使用するようプログラムされているそうです。

これは時間の経過と共にガソリンが劣化することを自動車メーカーが認識しているからこその対応でしょう。日常的に使用する間にも、ガソリンスタンドで給油してから時間が経過することで劣化するのであれば、長期保管となった場合には適切な準備が必要と言えるでしょう。

POINT

  • ポイント1・キャブレター車でもフューエルインジェクション車でも長期保管などで劣化したガソリンで機能が損なわれることがある
  • ポイント2・ガソリンの変質を抑えるにはガソリンに混ぜるケミカルを使用するのが有効

固着したキャブレターを無理やりこじると破損するおそれがある


キャブレターのトップカバーを外してもピストンが抜けない時は、上部からキャブレタークリーナーや浸透潤滑剤などをスプレーする。軽度な固着であれば、潤滑剤が変質したガソリンに染み込んで剥がれることもある。しかし無理に引き抜こうとせず、熱との併用を前提としておこう。


潤滑剤をスプレーしてもピストンが動かなければドライバーなどでこじりたい気になるが、力を加えるとピストンやキャブを傷つけてしまうことがあるので決して無理をしてはいけない。

残念ながら事前の準備なしで長期保管または放置状態になりガソリンが劣化した場合、キャブレター車において症状の出方は一様ではありません。スロットルを開けようとした時にグリップがビクともしないのは、スロットルケーブルがダイレクトにピストンを開閉するピストンバルブ式のキャブレターであることが多いです。対して負圧式キャブの場合、始動できなくてもスロットルグリップは回ることが多いようです。

ピストンバルブ式キャブでも負圧式キャブでも、劣化したガソリンがピストンとキャブレターボディの間で固着してピストンが作動しなくなるのが典型的なパターンです。しかし負圧式キャブで開閉するのは張りつきやすいピストンではなくバタフライバルブであるため、スロットルがビクともしないピストンバルブ式とは異なる挙動となります。とはいえ、負圧ピストンが作動しなければエンジン回転は上昇しませんし、ピストンが動かないようならジェットや通路も詰まっている可能性は高いので、いずれにしても分解清掃が必須となります。

ここで紹介するピストンバルブ式キャブレターは屋根付き駐輪場で一年ほど放置した車両のものですが、オーナー自身は長期放置という認識はなかったようです。状況次第では不動期間が一年程度なら問題なく再始動できる場合もありますが、現状ではスロットルががっちり固着しています。このようなキャブレターを分解する際、無理は禁物です。

このバイクは単気筒でスロットルケーブルが直接ピストンバルブに取り付けられており、劣化したガソリンによってキャブレター本体に張りついているため、無理にスロットルを開けようとすればケーブル先端のタイコが抜けるなどのトラブルにつながります。ベンチュリーにドライバーを突っ込んで無理に押し上げればピストンが動くかも知れませんが、同じことを4連キャブで行うとリンクを破損するリスクがあります。

POINT

  • ポイント1・スロットル操作によりバタフライバルブを動かす負圧式キャブレターより、直接ピストンを動かすピストンバルブの方が固着の影響を受けやすい
  • ポイント2・劣化したガソリンで張りついたキャブレターパーツを動かす際は過剰な力を加えると破損するリスクがあるので要注意

ドライヤーや乾燥器で加熱することで変質したガソリンの軟化が期待できる


キャブレターをエンジンに付けたまま加熱するか取り外すかは、状況に応じて使い分ける。ケーブルが付いたままでもキャブが取り外せる機種の場合、エンジンから外した方が均等に加熱しやすい。


エンジンからキャブを外すと、スロットルバルブ正面からケミカルをスプレーできる。スプレー後しばらく待って加熱すれば、熱により粘度が低下して狭い隙間にも流れ込みやすくなる。


ケミカルが浸透してボディから抜けると、ピストン側面は浸透したケミカルでウェット状態になっている。リンクで連結された4連タイプのピストンバルブキャブは、リンクを傷めないようケミカルが充分に浸透してから取り外す(動かす)ことが重要。


ピストンバルブを抜いたら各部を分解する。メインジェットホルダーはブリード穴と呼ばれる横穴が重要で、これが詰まると混合比が変わってしまうため、取り外してキャブレタークリーナーに漬け込んで洗浄する。


パイロットジェットも同様で、ブリード穴を含めてすべて貫通していることが必須条件となる。ジェットだけでなくキャブレターボディ側のエアー、ガソリン通路に異物が残らないように洗浄する。

このようなキャブレターを分解する際には、キャブレタークリーナーや浸透潤滑剤などのケミカルが必須ですが、キャブ自体を加温することも有効です。気温が低い冬場に作業する場合は、ドライヤーやヒートガンを使用することでケミカルの反応が向上することが期待でき、固形化したガソリンの軟化も期待できます。乾燥器やオーブントースターなどにキャブレターを丸ごと入れて加熱すれば、さらに固着が解れて分解が容易になります。

張りついたピストンを引き抜いてジェット類を取り外した後も、キャブレターが暖まっていればクリーナーの反応が向上して通路の詰まりが解消しやすくなります。ピストンの固着を解消することも重要ですが、ガソリンやエアーを計量する狭い通路に異物が残っていたら、キャブセッティングに影響する場合もあります。

ケミカルの反応が活発なうちに汚れに浸透させて洗浄するためにも、温度によるサポートはとても有効です。ただ、クリーナーを使って洗浄した後に再度保管するのであれば、クリーナー成分を入念に除去しておきましょう。すぐにエンジンに装着して走行するのであればキャブレター内部がガソリンですすぎ洗いされますが、クリーナーが残ってしまうとそれ自体が固着や腐食を引き起こす可能性があるからです。

インジェクション車はさらに面倒なことになります。燃料ポンプのモーターが固着した場合、症状によっては分解洗浄が可能なこともありますが、基本的に燃料ポンプはアッセンブリー交換するしかありません。また燃料を噴射するインジェクター内部が固着した場合も、インジェクター自体が非分解なので部品交換で対応するしかありません。

変質したガソリンによるトラブルを避けるには、給油したガソリンは入れっぱなしにしないことが得策です。そして長期的に乗らないことが分かっている場合は、ガソリンタンクを空にして、フロートチャンバー内のガソリンを使い切っておくことで再始動が大幅に楽になります。もし長期保管の末にキャブレターが固着してしまった時には、いじり壊さないようケミカルと熱を併用して慎重に分解洗浄を行いましょう。

POINT

  • ポイント1・固着したキャブレターはケミカルと熱を併用することで分解しやすくなる
  • ポイント2・長期間乗らないことが分かっている場合、燃料タンクやキャブレター内のガソリンを抜いておく
 
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コメント一覧
  1. 名もなき整備士 より:

    キャブレターに燃料が残っていてヒートガンで炙るなんて
    危険行為です 
    ちゃんとした工程の説明が必要です

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