ニッパーに皮剝き機能がある場合、刃の根元近くにある小さな穴に配線をセットして被覆を切断する。配線自体の切断と被覆剥きが1本のニッパーでできるのは、便利であることは確か。切断機能を持ったワイヤーストリッパーもあるが、配線を切る作業であればニッパーの方が使いやすいからだ。
ただし配線と皮剝き器のサイズが合わないと芯線を切断してしまう危険性もある。剥いた被覆の中に数本の芯線を見つけた時、やり直すか見なかったことにするかは作業者の性格や切断した芯線の数によるだろうが、気持ちの良いものではないはず。
工具店で見つけて使いやすそうだと思い、筆者が購入したワイヤーストリッパー。
このベッセル製は電気工事士の資格を取る際に購入したもので、本来は家庭用の単線に対応する製品だ。メーカーではより線用の刃を販売しているので、これに交換すればより安心して使えるようになる。
刃に配線の太さが刻印されており、使用する配線に応じた位置で使用する。これは単線用で1.0/1.6/2.0/2.6/3.2mmのゲージがあり、より線用の刃は0.9/1.25/2.0/3.5/5.5㎟となる。
配線の太さに該当する刃にセットしてグリップを握ると、向かって左の押さえ刃が配線を固定して右の刃が被覆をカットして剥がしていく。後で紹介する引っ張りタイプに比べて、切断用の刃がサクッと切る感覚が心地よい。
被覆を剥き取った後も、グリップを握っている間は押さえ刃が配線を保持している。
恐竜や鳥の頭部のような形状のワイヤーストリッパーは、100均ショップでも類似製品を見ることができる。3000円台で販売されているこちらの製品は、配線切断用のカッターや皮剥き量を統一できるストリップゲージ、掴み刃の圧力を調整できる機能が付いている。
先端部分に平行に二列の金具が配置されており、より先端側が押さえ刃、奥側が掴み刃として機能する。刃といっても被覆や芯線を切断できるような刃物ではなく、断面は平行な金属製の板である。口の中のオレンジの四角いブロックがストリップゲージ。
配線の先端をストリップゲージに突き当てることで、連続して何本の配線の被覆を剥いても、皮剝き量が一定となる仕組み。配線の太さ別のゲージはなく、ただグリップを握るだけで掴み刃が接触した状態から被覆を掴んで引っ張りながら剥いていく。
太さゲージ付きのストリッパーに比べると、何も考えずにグリップを握るだけで被覆が剥けるのは楽なことこの上ない。もちろん、皮剝き器付きニッパーと比較しても、配線の先端を注視することなく被覆を傷つけず剥けるのはストレスフリー。
押さえ刃と掴み刃の双方がレバーとピボットによって複雑に作動するワイヤーストリッパー。この製品もグリップを握れば配線の太さにかかわらず最適な圧力で被覆を剥くことができる。
先端の左部分が押さえ刃で右が掴み刃となる。押さえ刃の受け側には圧力を調整するネジがあり、掴み刃側には被覆の剥き量を一定にするストリップゲージ(黄色い部品)が付く。
グリップを握ると押さえ刃と掴み刃が下がって下のブロックに当たり、左右に離れていく。
配線の先端をストリップゲージに当ててグリップを軽く握ると、左側の押さえ刃が配線を保持し、ほぼ同時に掴み刃が配線に食い込んで被覆剥きのきっかけを作る。
さらにグリップを握ると掴み刃が食い込んだ部分から被覆が引きちぎられて剥けていく。引きちぎるという表現が誤解を与えるかもしれないが、切断部分は刃物で切っているわけではなく、掴み刃が食って傷をつけている程度なので、引く力に頼る部分が大きい。
ストリップゲージを倒せば、配線の中間部分の被覆を剥くこともできる。この時、掴み刃が剥がしていく被覆は芯線を滑りながら移動するだけで切除されるわけではない。
配線を途中から分岐したい場合に、芯線を傷つけることなく被覆を剥けるのがこのタイプのストリッパーの優れたポイント。配線自体を切断してつなぎ合わせる必要がないのでトラブルを減らせるし、結合部分をスマートにまとめることもできる。