バイクのカスタムには、オーナーの数だけ正解があります。「ここをもっとこうしたい」「こんなスタイルで乗りたい」という理想を形にする喜びは、バイクライフの大きな醍醐味です。ところが現実には、費用・車検・保険・技術……と、実車カスタムの前には何重もの壁が立ちはだかります。今回インタビューした「kota scale model」さん(以下、kotaさん)は、YouTube23万人、Instagram22万人、TikTok78万人以上のフォロワーを持つ人気の模型ビルダー。彼が作るのは「正確な実車の再現」ではなく、自分好みのカスタムを施し、頭の中にしか存在しなかった「理想の1台」。その姿勢は、実車のカスタムと寸分違いません。彼の動画がライダーたちの心を捉えて離さない理由が、そこにあります。
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自分好みにカスタムしたバイクに乗りたい。その思いは模型でも同じ
kotaさんが最初に乗ったのは50ccのヤマハ「DT50」でした。その後、普通自動二輪免許を取ってホンダ「スティード」、ホンダ「GB400TT」、カワサキ「バルカン400」と乗り継ぎました。どのバイクも、手に入れた瞬間からカスタム前提。「ノーマルのままでは絶対乗らない」は当時からの信条でした。
しかし現在、kotaさんはバイクを所有していません。結婚し、クルマを買い、生活の優先順位が変わるなかで、気づけばバイクを手放していました。それでも、妄想だけは残りました。
行き場を失ったそのカスタムへの衝動が出口を見つけたのは、コロナ禍のことです。商業施設の設計を仕事にしているkotaさんは、改装の案件がごっそり消え、家で過ごす時間だけが増えていきました。
そうして始まった模型制作でも、kotaさんの流儀は最初から明快でした。1/12スケールのバイク模型を作り続けるkotaさんは、説明書通りには組み立てず、あえて塗装しない部分も多く、コンテストにも出ません。
切って、削って、自分のバイクにする“邪道”の流儀
kotaさんが自分のスタイルを「邪道」と呼ぶのには理由があります。エアブラシは持っていない。デカールは貼らない。塗装の指示が書いてあっても従わない。
その代わり、造形と改造への執念は徹底しています。フレームを一から作り直したハーレー、プラ棒を曲げて成形したカスタムマフラー、ホームセンターで探してきた材料でパーツを自作したディテール。「もう大変で二度とやりません」と苦笑するほどの初期作品が、棚にずらりと並んでいます。
また、展示会やコンテストには一切出ません。kotaさんにとって重要なのは、あくまで完成品をどう見せるかです。
そして何よりも、kotaさんには模型におけるポリシーがあります。プラモデルは瞬間接着剤を使えば、実車ではあり得ない構造でも作れてしまいます。しかし、彼はそれをしません。
実車感を出すためのこだわり
kotaさんが「ここだけは変えないといけない」と言い切る箇所があります。スポークとホース類の太さです。
スポークはすべて張り替えます。ブレーキホースはディテールアップパーツや他ジャンルから流用したパーツで、実車の細さに近づけます。
エンジンの質感を再現する仕上げは逆の発想です。塗装するのではなく、あえて塗りません。
メッキパーツはメラミンスポンジで表面をならします。キットのメッキはそのままでは光沢が強すぎて安っぽく見えます。少し曇らせることで、実物のような深みのある光沢に近づきます。いずれも、派手な技術ではなく「どうすれば実車に見えるか」という問いへの、kotaさんなりの答えです。
設計士がバイクを「設計する」
好きなカスタムビルダーの名前を挙げると「46works」や「ヒデモーターサイクル」「チェリーズカンパニー」などで、インスタグラムや動画をしつこくチェックするのが習慣だと言います。
あるとき、某バイクショップの制作したショーモデルを見て、その「かっこよさの正体」を分析したことがありました。
そうして見つけた「かっこよさの正体」を、自分の作品に落とし込んでいきます。作業の前には写真を撮って画面上でフォークの長さをシミュレートしたり、スケッチを描いたりして、完成形を固めてから手を動かします。
YouTubeチャンネル登録者数23万人の謎--「邪道」はなぜ届くのか
YouTubeチャンネルで最も再生されている動画はヤマハ「YZF-R1M」のプラモデルで、再生回数は824万回。ところがこれが、カスタムをほぼしていない、ノーマルに近い仕上げの作品です。
視聴者の多くはインドからです。チャンネル名の「KOTA」がインドの都市名と一致したことで流入が起き、急成長するインドのバイク市場の熱と重なって一気に広まりました。
だからこそ今、方向を変えようとしています。タイトルやテロップを日本語ベースに戻し、日本人の視聴者に向けて発信し直す。「もう一度、日本の視聴者に向けて勝負する」という言葉には、再生数より届けたい相手を優先する意志があります。
ホビージャパン誌からの制作依頼も最近実現し「仕事としてプラモデルを作ったのはこれが初めて」と言います。自己流でやってきた積み重ねが、専門誌に認められた瞬間です。
机の上に、もうひとつのガレージがある
バイクへの向き合い方は、年を重ねて少し変わりました。「旧車をあえて当時のままで乗る良さも、今はわかる」とkotaさんは言います。それでも、もし再び実車に乗る機会があれば、間違いなく自分好みにカスタムして乗りたい。今でも好きなカスタムビルダーの仕事を研究している点からも、その嗜好の根底は変わっていません。
天候も、車検も、予算も関係ない。「実車で成立するか」を意識しながら、頭の中にある「理想の1台」を形にしていく。その作業は、かつて実車をカスタムしていた頃と何も変わっていません。
バイクは手放した。でも、カスタムだけはやめられなかった。
kotaさんの作品と制作の記録は、著書『kota scale model / archive book』にまとめられています。バイクをいじることが好きな人なら、きっとどこかで「わかる」と思うはずです。
■kota scale model(YouTube) https://www.youtube.com/@kotascalemodel■kota_scale_model(Instagram) https://www.instagram.com/kota_scale_model
■kota scale model(TikTok) https://www.tiktok.com/@kota_scale_model
■kota scale model / archive book|ホビージャパン https://hobbyjapan.co.jp/books/book/b651643.html ギャラリーへ (7枚)
情報提供元 [ MOTO INFO ]
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