9月19日、バイクの文化や発展について語り合う「バイクラブフォーラム」が埼玉県小鹿野町で開催。“バイクの町おこし"で有名な小鹿野町で、バイクによる地域振興などのトーク対談やパネルディスカッションが行われ、議論を深めた。どのようにしてバイクで地域が賑わうのか、興味深い話が満載だった。

ライダーを歓迎する小鹿野町の取り組みが開催テーマ

バイクに関わる企業、団体、自治体などが中心になって、バイクの現状や将来について議論するBIKE LOVE FORUM(バイクラブフォーラム)。2013年の第1回から毎年会場を変え、今年は「第13回 BIKE LOVE FORUM in 埼玉・おがの」として9月19日、埼玉県小鹿野町で開催された。

8月1日から11月30日まで開催されている「寄ってけ~な!おがのツーリングキャンペーン」では様々なイベントが行われるが、バイクラブフォーラム(以下、BLF)もその一環として実施された。開催テーマは「『バイクの力で地域を盛り上げよう』 ライダーを歓迎する小鹿野町の取り組み」。近年、小鹿野町に代表されるように、地域振興にバイクツーリズムと地域の観光資源を結びつける施策が各自治体で広がりを見せている。観光産業や地域社会への貢献にバイクがどう寄与できるのか議論した。

会場は小鹿野文化センターホール。開会の挨拶の後、2007年から実施している小鹿野町のバイクによる町おこしの歴史、小鹿野町の魅力について、同町役場まちづくり観光課の職員が解説した。

小鹿野町は首都圏から約100kmに位置し、自然が豊か。元祖バイク神社として有名な「小鹿(おしか)神社」をはじめ、ダリア園、尾ノ内氷柱などのスポットが人気。巨大な「わらじカツ」も有名だ。

 

さらに、国内外の市場毎の政策課題を整理し、課題解決のための実行施策を取りまとめた「二輪車産業政策ロードマップ 2030 取組状況」が説明された。

開会挨拶では経済産業省 製造産業局 自動車課長 伊藤政道氏(写真)、小鹿野町長の森 真太郎氏が登壇した。

国内外の市場毎の政策課題を整理し、課題解決のための実行施策を取りまとめた「二輪車産業政策ロードマップ 2030 取組状況」では、経済産業省 製造産業局 自動車課 課長補佐の堀江大地氏らが解説。

ロードマップの施策進捗と課題として、日本二輪車普及安全協会 専務理事の髙橋 亮氏や二輪業界団体の代表者が登壇。

当初は住民の反発もあったが、警察との連携で定着へ

続いて、トーク対談の「まちおこしプロジェクト『ウエルカムライダーズおがの』の取組み」が行われた。参加者は次のとおり(敬称略)。

・ウエルカムライダーズおがの初代代表 吉田 朗
・同代表 強矢立家
・小鹿野警察署 副署長 篠永 作
・小鹿野町観光大使 山口良一
・OMG(おがのモトガールズ)AYA、RIHO、sizca
・ファシリテーター:柴田直美

「まちおこしプロジェクト『ウエルカムライダーズおがの』の取組み」の模様。

 

町おこしをする前から、名物の「わらじカツ」を目当てに小鹿野町には多くのライダーが週末に訪れていた。ただ、あくまでツーリングコースの一部で多くのライダーは食事をすると通り過ぎて群馬に行ってしまう。そこで、ライダーに町へ立ち寄ってもらい、散策や飲食したり、お土産を買ってもらったりすれば、町にもっと経済効果が出るのではないか、との考えから、町おこしが始まった。

まず、行政がロッカー付きの安価なバイク専用駐車場を設置。ロッカーにヘルメットや荷物を預けて、町の中を歩いて探索してもらい、地元の人たちと交流してもらうのが狙いだった。安価な駐輪場を2か所作ると、民間で店の前に二輪車専用駐車場を設ける取り組みが町中に広まっていく。

ただし当初は興味本位でヤンチャなライダーが多く集まってきたという。町民からの風当たりが強くなり、役場には苦情の電話が鳴り響いた。そこで、地元の小鹿野警察署に協力を求めると、非常に協力的だったという。

町内でバイクのイベントを開く度に、白バイやパトカーに巡回してもらったり、会場に来てもらったりすることで、住民も安心するように。また、徐々に小鹿野町のバイクイベントには「お巡りさんが付き物」というイメージが定着し、ジェントルライダーが集まってきた。そして活動3年目で県の助成が終了するため、主体を民間の西秩父商工会に移行した。

ウエルカムライダーズおがののロゴは吉田元代表(写真右から2人目)がデザイン。バイクと「OGANO」を組み合わせたロゴの存在が活動の認知に一役買ったという。

 

活動を広めるため、2010年からイベント「おがのライダー宿」を開始。プロジェクトの会員が考えたイベントで「都内から色々なバイク乗りが来てくれるのではないか」「情報交換もできる」という趣旨でスタートさせた。

当初は「レディースおがのライダー宿」として女性ライダー限定だった。これは「女性ライダーが来れば、もれなく男性ライダーがついてくる」ことが理由。実際は来場者の7割が男性ライダーだったが、町の理解が深まったことで「おがのライダー宿」に名称を変更したという。

毎年行われる「おがのライダー宿」ではステージイベントやブース出展などが楽しめる。BLFの翌日にも「JAPAN RIDERS CAFÉ」と同時開催され、賑わった。

 

町おこしが定着した後、週末になると小鹿神社に300台近いバイクが来訪。年間を通して観光バスは「おそらく五本指で足りるくらい」なので、ライダーがもたらす飲食関係への経済効果は非常に高い。

当時、町の料理店組合の組合長が「冬場に小鹿野の食堂は全くの開店休業状態だったけど、ウエルカムライダーズのおかげで冬でもお客さんが来てくれるようになって本当にありがたい」と感謝されたそうだ。

わらじカツのほか、蕎麦もオススメ、交通事故死者ゼロ5000日の安全さも魅力的

小鹿野町の観光大使でライダーでもある山口良一氏は「鉄道がないのは不便かもしれないけど、逆にそれが小鹿野らしさを残しているような感じもする」と話す。

実は奥様が隣の秩父市出身で、小鹿野には蕎麦をよく食べに来ていたという。わらじカツが名物だが、蕎麦屋も充実しており、おみやげには「石川漬物のしゃくし菜漬け」がオススメとのことだった。

小鹿野町の観光大使である山口良一氏がオススメのグルメを紹介。

OMG(おがのモトガールズ)は、SNSをメインに、イベント、自然、文化などを発信。ウエルカムライダース小鹿野の加盟店約40店舗も紹介している。

 

小鹿野町は事故が少ないのも特徴だ。埼玉県内 (昨年1年間)の交通事故死者数は113人。バイク関連の人身交通事故は2078件で、そのうち死者数は29人だった。一方、小鹿野警察署管内では交通事故死者数がゼロ、バイク関連の人身事故は4件。埼玉県内の警察署の中で最も人身事故が少なく、安全な町と言えるとのことだ。

交通事故死ゼロの継続日数は、5000日を達成(2025年6月17日)。BLF当日も継続しており、5094日を達成していた。

FIMが世界でツーリングイベント実施、日本でも開催される!

続いて、パネルディスカッション「モトツーリズムを推進する自治体の課題と展望」が実施された。登壇者は次のとおり(敬称略)。

・日本モーターサイクルスポーツ協会(MFJ)会長 鈴木哲夫
・同 会長付参与 堀越慶太郎
・浜松市 産業部 産業振興課 主任 飯田智也
・寄ってけ~な!おがの ツーリングキャンペーン実行委員会 委員長 早田和正
・進行 柴田直美

パネルディスカッションの模様。

 

新たな動きとして、モトGPなどのレース運営で知られるFIM(国際モーターサイクリズム連盟)が、欧州を中心に世界中のツーリング情報を発信し、2025年には四大陸26カ国でツーリングイベントを開催予定。FIMによると、日本のツーリング市場は欧米などの成熟市場に比べて発展の初期段階にあり、まだまだ大きな潜在力がある。グローバルライダーの間でも日本への関心が高まっているため、市場拡大の余地は十分あるという。

レース運営で有名なFIMが世界規模のツーリングイベントを開催予定。アジアは日本やインドで実施予定だ。

 

こうしたモトツーリズムは、地域企業の収益拡大、地方社会の活性化、持続可能な観光施設の施策推進を通じて、経済全体に大きな効果をもたらす可能性がある。

日本での成功例として挙げられたのが「SSTR」。冒険家の風間深志氏が2013年に開始したツーリングイベントで、日の出から日の入りまでに石川県の千里浜なぎさドライブウェイを目指すシンプルさが参加意欲を掻き立てていると分析した。

ゴールだけでなく、道の駅や観光施設をチェックポイントに設定し、全国の自治体を巻き込む形で拡大し、地域振興に大きく貢献。マナーあるライダー文化の醸成活動(無事故無違反、ゴミの持ち帰り)を積極的に実施していることも、成功の要因として挙げていた。

SSTRの参加者はうなぎ上り。10年で1万人以上が参加するビッグイベントに成長した。

 

また、浜松市や八頭町の取り組みも紹介。静岡県浜松市はホンダ、ヤマハ、スズキの創業地であり、イベント「バイクのふるさと浜松」を毎年開催している。条例の一部改正により、市が設置する駐輪場&駐車場における二輪車の駐車可能台数を増加。市内約240施設のうち28施設がバイク駐輪場を併設しているという。

鳥取県八頭町は、2008年、二輪専門誌の呼びかけから始まり、全国有数のイベントに成長した「隼駅祭り」の事例を紹介した。若桜鉄道職員にライダーがおり、スズキのハヤブサと若桜鉄道の隼駅が同名であることからスズキに地域活性化への協力を打診。2008年8月発売のMr.Bikeがイベントを告知したことからスタートした。第1回の参加者は約200人だったが、2024年は2400人以上が駆け付けるほどになった。

業界として「攻め」の姿勢が大事、品質基準の「認定制度」も提唱

MFJの鈴木会長は、これまでの自治体の取り組みを踏まえ、日本のバイク市場の現状とモトツーリズム推進の課題について問題提起した。

小鹿野町、浜松市、八頭町のような取り組みを二輪業界が「待つ」のではなく、もっと「攻める」姿勢で業界側が取り組む必要があり、全国の自治体に二輪産業が「選ばれる存在」になっていかなければならない。そのためには「バイクを魅力ある産業として発信し、モトツーリズムを文化に昇華させていく必要がある」と話す。

MFJ鈴木会長は「モトツーリズムを推進する課題は自治体側ではなく、二輪業界側にあるのではないか」と問題提起。

二輪保有台数は1000万台を下回ったことがなく、51cc以上の保有台数が大きく増加。アフターマーケット市場も伸びており、実はバイク業界は活況であると分析。

 

早田氏からは「モトツーリズム企画の品質を担保する“認定制度"の立ち上げも必要。全国各地でツーリングキャンペーンが実施されているが、品質基準が統一されていないと、特定のキャンペーンが不評となり、ライダー離れにつながる可能性がある。統一された基準のもとでの認定制度が必要である」との意見も出た。

イベントの閉会式では埼玉県知事の大野元裕氏が挨拶。

同じく閉会式に日本自動車工業会 副会長 兼 二輪車委員会委員長の設楽元文氏が登場し、総評を述べた。

 

合計4時間以上にわたるトークイベントだったが、バイクの町おこしやモトツーリズムでの地域振興を考えている自治体、企業にとって非常に有益な内容だったはずだ。そして最後に、来年の第14回BLFを熊本県大津町で開催することを発表。ホンダの熊本工場があるほか、阿蘇ミルクロードの入口に位置するだけにツーリングがてら参加するのもよさそうだ。

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