米国のトランプ大統領が主導し、世界に衝撃を与えた「トランプ関税」。日本車をアメリカで販売する際、15%もの関税がかかり、バイクにも適用されることに! 米国そして日本市場にどんな影響を与えるのか? 調査してみた。
目次
当初の25%から15%へ引き下げに。自工会がこれを歓迎
世界に激震が走ったトランプ関税。当初、日本からのアメリカへの輸入品については25%の関税が予定されていたが、7月22~23日の日米貿易協定により「15%関税」で一応の合意に至った。
協定には「自動車およびその部品」が含まれる。明確に指定されてはいないものの、複数の報道によれば二輪車も広く対象と見做されているのだ。現に、カナダとメキシコからの輸入品は当初、乗用車のみとされていたが、バイクも25%関税の対象となっている。
この日米合意に対して、国内四輪&二輪メーカーで構成される日本自動車工業会の片山正則会長が7月23日付けで声明を発表。
これによると「本合意により、サプライチェーン全体を含めた日本の自動車産業への壊滅的な影響が緩和されただけではなく、米国のお客さまにとっても最悪の状況は避けられたことを歓迎いたします」としつつ、「日本政府におかれましては、グローバルなビジネス環境を維持発展していくためにも、引き続き、更なる関税の軽減も含めた米国との未来志向の対話を継続していただくとともに、日本の自動車産業を維持していくためのサプライチェーン支援や、国内需要喚起に向けた恒久的な措置等を切望いたします」と要望している。

15%関税を歓迎する声明を発表した自工会の片山会長(いすゞ自動車会長CEO)。※写真はJAMAブログより引用(https://blog.jama.or.jp/)
今回の関税は日本ではなく、米国ユーザーが負担する
まずは関税について改めておさらいしたい。今回の関税は、日本から米国に輸出された物品に課せられる税金で、関税を課せられた国(日本)が払うのではなく、輸入された物品を購入する米国市民が支払う。単純に考えれば、米国でユーザーが日本製のクルマやバイクを買う際、車両価格のさらに+15%を支払う必要がある。日本車が高額になる分、関税が課せられない米国製品などが有利となり、売上の増加が見込める(まさにMAGA!)。
となると、日本国内向けのバイクに関税は適用されず、直接的な影響はない……が、グローバルで考えれば将来的に間接的なコスト増→値上げの可能性はある。
日本市場への影響については後述するとして、米国市場への影響は大きい。未確定の部分が多く、唐突な決定で事態が覆る可能性があることを前提とするが、米国市場で日本製バイクが値上げされる可能性が高い。
関税がかからないのは、米国内で生産されたモデル。さらに米国で生産された部品の比率が60%以上のモデルも関税が0%または軽減される。なお欧州のEU加盟27か国の車両も15%関税になることが7月28日に決定した。
ホンダは価格に転嫁しない方針、過去の前例では約1年後に値上げが発生した
国内4メーカーはカワサキを除いて、米国向けバイクを基本的に日本で生産している。そのため、現状のままでは15%の関税対象になるようだ。
ホンダは既に、関税を受け入れる意向を表明しており、当面は関税分を価格に転嫁せず、据え置きする見込み。とはいえ、「モデルチェンジ時に価格調整する可能性がある」として、値上げの可能性も示唆している。一方、ヤマハ、スズキ、カワサキは、関税について意見を表明しておらず、一定期間、価格が上昇する可能性が高い。
今回の関税は完成車だけでなく、部品にも及ぶため、サプライチェーン全体やアフターパーツメーカーにも影響がある。
なお、1983年に米国で750cc以上のバイクに45%もの関税が課された過去があった。関税導入後すぐには価格が上昇せず、在庫が消化された約1年後から約10%の価格上昇が見られ、その後数年にかけて段階的に値上げが発生。今回もすぐに値上げされるのではなく、1年後程度から関税の影響が出ることになるかもしれない。
米国とメキシコ工場で製造しているカワサキは関税を回避できそう
ただしカワサキは関税を回避できる可能性がある。カワサキは、米国に輸出するモトクロッサーやロードモデルの大部分と、サイドバイサイド(運転手と助手席が横並びの四輪バギー)を米国リンカーンなどの3工場、およびメキシコ工場で製造しているからだ。
米国生産の製品はもちろん、メキシコ製造の場合も米国の部品比率を適切に構成し、条件を満たすことで関税を回避可能。毎年3万台規模のオフロード4輪を生産しているメキシコのKMX工場では、部品調達と組立体制を北米原産に対応できるよう整備している可能性が高い。
なお他のメーカーに関しても、関税の影響を軽減するため、生産や調達を最適化していくはずだ。
日本市場への直接的な影響はナシ、しかし将来的には?
今回の関税は、米国から日本に輸出されるモデルとは無関係のため、直接的な影響はないだろう。既に日本は二輪四輪に対する関税をゼロにしており、日本が輸入する米国製モデルに関税はかかっていない。また、日本は報復関税を導入しておらず、アメリカ製品が価格上昇することはないのだ。
とはいえ、米国関税による負担増でメーカーの収益が悪化する可能性はある。「アメリカ以外で生産された部品」をアメリカに輸入した場合、関税が発生。これを現地で組み立てて日本へ輸出する場合、コストが増加する。また「アメリカで生産された部品」を報復関税が導入された国で組み立てて、日本へ輸出した場合もコストがアップする。
“米国から日本に輸出されるバイク”と言えば、やはり思い浮かぶのはハーレーダビッドソン。日本で販売されるハーレーが関税の影響で直接値上げされることはないが、部品やアクセサリー等の輸出輸入に伴うコスト増加は、ハーレーをはじめとした国内外メーカーの収益を圧迫する可能性がある。これによってメーカー側がグローバルでの値上げを迫られる事態はあり得るだろう。
ちなみに、ホンダは2025年3月期決算での利益を24.5%減と発表。ヤマハは2025年のコストが約500億円増加する見通し(5月13日時点)。さらにハーレーは2025年の業績予測計画を一時停止した。これらの背景には米国関税による負担増があると報じられている。
[まとめ] メーカーも困るが、最も困るのは……
まとめると、
① 米国市場に15%の関税が課され、導入から約1年後に影響が出る可能性が高い。
② 関税を回避できる方法があり、影響を受けにくいメーカーも。今後、対策を講じるメーカーもありそう。
③ 日本市場への直接的な影響はないが、将来的にメーカーの利益を圧迫する可能性がある。
――繰り返しになってしまうが、今後の先行きはまだ流動的。未確定事項が多く、トランプ大統領の唐突な決定で事態が覆る可能性があるからだ。いずれにせよ、今回の関税で困っているのはメーカーやサプライヤー、アフターパーツメーカー、そして何より最も困っているのはアメリカのユーザーだろう……。
ギャラリーへ (4枚)この記事にいいねする














