ライダーに快適なバイクライフを送ってもらうための活動を行っている非営利団体が「一般社団法人 日本二輪車普及安全協会」(以下日本二普協)。まだ、社会に浸透していない団体ながら、実は様々な活動でライダーをサポートしている。6月から新たに専務理事に就任した髙橋亮さんに、日本二普協の役割や活動方針、今後の課題などを詳しく伺った。

日本二普協はライダーが安全かつ快適に過ごせる環境作りを目指す団体

「一般社団法人 日本二輪車普及安全協会」(略称:日本二普協)と聞いても、何を行っている団体なのかピンとくる人は少ないのでは? しかしながら、バイクの安全、防犯、適正な販売、利用環境改善など、バイクライフのあらゆる場面に関わる活動を行っており、知らず知らずお世話になっている人も多いはずだ。

日本二普協の母体は、1971年に二輪車安全運転協議会として設立。国内4メーカーによって1997年に設立された日本二輪車協会(NMCA)と2013年に統合し、現在に至る。

その日本二普協の専務理事に6月から髙橋亮さんが就任した。専務理事は会長に次ぐ役職で、日本二普協の実質的な業務を統括する立場にある。これを機に、日本二普協の役割や現状、課題などをインタビューしてみた。

髙橋さんは長年、ホンダの二輪事業に携わり、重職を担ってきた人物。1988年、本田技研工業に入社して、主に二輪の事業企画や経営企画、アジア地域の二輪事業責任者などを担当し、ホンダにおけるバイクの商品ラインナップに関わってきた。まさに二輪業界に精通したプロフェッショナルだ。

6月から日本二普協の専務理事に就任した髙橋亮さん。今までの愛車はRZ250、ロードフォックスなどで、お若い頃は原付レースも楽しんできた。今はCT125ハンターカブが気になっているそうだ!

まず日本二普協の役割について、髙橋さんに訊ねた。
「弊協会は“二輪と社会の調和を求めて”を基本メッセージに掲げ、二輪車と社会が共生できる環境づくりを目指しながら活動を行っている団体でございます。もう少し具体的に言うと、ライダーが安全・安心で快適に楽しく過ごせる環境作りを目標に推進している団体になると考えています。

私たちの役割は“バイクライフサイクルを支える”と定義づけし、二輪車ユーザーのバイクライフ全般に関わる活動をしています。ただ、このバイクライフサイクルのもう少し入り口、まだバイクを所有されてないお客様に“バイクっていいモビリティだよね”と思っていただける活動も鋭意推進しています」

日本二普協が“私たちの役割”として掲げる「バイクライフサイクル」。円滑にバイクを乗るための活動を全方位的に行っている。詳細はHP(https://www.jmpsa.or.jp/)を参照。

具体的な活動の柱は3つ、非営利団体として二輪車の公共的な環境改善を行う

具体的な活動としては大きく3つで「①安全防犯事業」「②環境整備事業」「③普及促進事業」があるという。

➀安全防犯事業については、安全推進活動として32年間活動してきた「グッドライダーミーティング」を2024年度に刷新し、より若年層・ビギナーに特化させた『ベーシックライディングレッスン』のほか、防犯推進活動として、「二輪車安全管理システム」いわゆる『盗難照会システムと二輪車防犯登録』を主たる事業として展開している。

➁環境整備事業は、全国のバイク駐車場や、二輪車通行規制区間をユーザーからの情報等を収集し、ユーザーとの共有はもとより、駐車場事業者や警察関係にも社会の声として情報発信するというもの。

➂普及促進事業は、大阪および東京モーターサイクルショーの主催、日本二普協のアイコンとしての安全やマナー宣言を推進する「JAPAN RIDERS」と、走る機会、バイクに乗る機会を提供し、ツーリング立寄り先でのJAPAN RIDERSアンバサダーやゲストとの交流による安全啓発活動の「JAPAN RIDERS CAFÉ」などが挙げられる。

「国内4メーカーと販社さんも同様の活動をされていますが、メーカーさんは最終的に事業がありますので、基本は競争領域の中で活動されています。私ども日本二普協は非営利団体というところもあり、ユーザー視点で公共的な部分での協調領域を重視しており、安全、安心、快適、楽しさにおける環境改善にフォーカスして活動しています。当然、様々な関係団体がある中で、目指すところを共有し、一つにベクトルを集中させながら連携を強化し、実効力のある活動を推進したいと思っています」と髙橋さんは語る。

約50%に留まっている『二輪車防犯登録』の加入率を上げたい

日本二普協では『二輪車防犯登録』の推進活動を行っている。この加入率を高めることが課題の一つと髙橋さんは話す。

「二輪車防犯登録は、全国のバイク販売店様(二輪車防犯登録取扱販売店)で加入できます。加入は新車、中古車の購入時だけでなく、現在使用しているバイクでも可能です。

バイクは市区町村などに届け出をすることでナンバープレートが発行されますが、それだけでは警察は所有者を特定できません。二輪車防犯登録に加入すると、バイクと所有者のデータを当協会が集約、そのデータを警察庁と共有・管理運用することにより、盗難車や放置車両が発見された場合、速やかに所有者を特定出来る為、万が一の盗難時に被害回復の可能性が高まります。つまり、二輪車防犯登録とはいざという時の安心材料となる制度なのです。

また、ユーザーの財産を守るという社会貢献の一環としての観点から、『二輪車盗難防止強化運動』という施策を展開しています。昨年は10月1日から31日まで、公益財団法人 全国防犯協会連合会様の後援、そして国内4銘柄様の協力を得て、警視庁、道府県警察本部はじめ各所にポスター等を掲示するなど展開しました。今年も同様に実施し、注意喚起を続けていきます。これがライダーの方の目に留まり、自分のバイクが盗まれないように心掛け、二輪車防犯登録の加入の促進に繋がればと考えています」

「二輪車防犯登録」に加入するとユーザーカードとステッカーが発行される。参考登録料は1,650円(2025年4月現在の参考価格、詳しくは取扱店に確認を)。登録から15年間有効だ。

「二輪車防犯登録」に加入するとユーザーカードとステッカーが発行される。参考登録料は1,650円(2025年4月現在の参考価格、詳しくは取扱店に確認を)。登録から15年間有効だ。

「まだまだ加入率が低く、新車の出荷台数ベースで50%を切る状況です。お客様のためにも、また、盗難車両の中古車市場への不当な流入防止のためにも、しっかりと加入率を上げていく必要があると課題認識しています。

施策としては二つあります。一つはメーカー様、販売会社様の協力がないとできない話ですが、それぞれの広域販売網の中での意識づけが大事だと考えています。国内4メーカー販社の社長さんが集まった時に加入推進活動をお願いしたり、会社にお邪魔してシステムの利便性を具体的に説明するということを推進しています。

もう一つは新規のお客様にアピールするということ。例えば中古車店さんなどの大型店にアプローチをしたり、ベーシックライディングレッスンなどの安全講習会に来られるお客様に対してアピールしたり、こうした訴求活動と地道な発信活動を行いながら、1台でも多く加入いただけるようにしていきたいと考えております」

若年層ビギナーに特化した『ベーシックライディングレッスン』の初心者率をさらに向上させたい

二つ目の課題として、髙橋さんは「『ベーシックライディングレッスン』への若年層やビギナーの方々の参加数をさらに加速させたい」と話す。

ベーシックライディングレッスンは、若年層の初心者をはじめ、運転技術に自信がなく、公道走行に不安のある方などを中心とした安全運転講習で、2024年から開始。日本二普協では、従来から安全運転講習会の「グッドライダーミーティング」を32年間続けてきたが、これを初心者により特化したカリキュラムに刷新したのだ。

32年続いてきたグッドライダーミーティングを大胆に見直し、バイクの取り回しに不慣れな方、免許取得後間もないビギナー、またリターンライダーと称する方や女性を対象に2024年度から初心者向けの『ベーシックライディングレッスン』に刷新。

2024年度の実績では、88か所で約2300名が受講。2025年度は全国91か所で開催し、約3000名の受講を計画している。写真は7/13に府中運転免許試験場で行われたレッスンの模様。

初参加の受講率は、約47%と高く、参加4回以内の受講生が80%となっている。また、運転経験2年未満の受講生の割合も33%となっており対象とする初心者ライダーの受講率がグッドライダーミーティングと比較し確実にアップしている。

「やはり協会としては、若者の初心者はじめ、運転技術に不安を抱えているライダーにしっかりと基本をマスターしていただき、基本のライディングが習得できるよう進めていきたいので、より初心者へのフォーカスを加速していく必要があります。また、今年度でいうと、諸般の事情により群馬、富山、石川、沖縄の4県で開催できていないので、今後は開催に向けて推進していきたいと考えています。」

私も視察に行かせてもらったのですが、プログラムはしっかりできていますし、講習いただいたお客様の満足度は非常に高く、さらに自信を持って帰っていただいています。これをどう発信するかも課題だと思っています」

さらに、高校生向けの安全運転啓発活動もしっかり取り組んでいきたいとのこと。また、安全啓蒙活動としてシンポジウムを実施しており、2025年度は9月11日に都内で開催予定という。

二輪車の非関心層への認知度アップのために、MCショーなどで若年・潜在層にアピ―ル

日本二普協の活動に対する認知度も大きな課題の一つとして認識していると髙橋さん。

「協会の活動認知がまだまだ低いと思っております。訴求方法を工夫し、各関連団体の協力を得ながら、しっかり認知いただくことによって、安全、安心、快適、楽しさ、といったところをユーザーの皆さん、またはこれからユーザーになっていただく皆さんにも通じてほしい。ここはしっかりとやっていきたいです」

その点、2024年から主催している東京モーターサイクルショーの存在は大きい。従来、日本二普協は大阪モーターサイクルショーを主催してきたが、より動員数の多い東京MCショーが加わったことで認知度を上げる絶好の機会になる。

「モーターサイクルショーは、特に若年層に向けて強力にアピールをしています。当然、従来のバイクファンであったりバイクエントリーの方は非常に重要なお客様ですが、もう少し対象を広げて、若年層や女性、バイクに無関心な潜在層にもフォーカスをしたコンテンツを提案し、模索し、展開しています。

今年、2025年の具体的な例として2.5次元の人気アイドルグループ『すとぷり』メンバーの『さとみ』とコラボして、モーターサイクルショーの公式アンバサダーに任命しました。私も実際、会場に行ってみましたが、大阪にしろ東京にしろ、オートバイと関わる中では普段あまり見かけないような女性の方などが多く来られていたと思います。そういったお客様にお聞きしてみたところ、意外にも免許持っていたり、バイクに関心があったりという方がいらっしゃいました。

全く親和性がないかな? 疑心暗鬼に思っていたらそうでもなく、こういった活動で若者を呼び込むのは大事だと思っています。少子高齢化でなかなかバイクの需要が拡大しにくい中、次期開催時もしっかりとフォーカスをしながら進めていきます」

2.5次元アイドルグループ『すとぷり』のさとみとコラボ。バイクに興味のない女子にもバイクやMCショーの存在をアピールした。

 

「また、昨年からツーリング時の立ち寄りスポット『ジャパンライダーズカフェ』もスタートした。これは、バイクに乗る機会の提供と、バイクの「楽しさ」を訴求する取り組みで、昨年、雨天の影響で6回の予定が4回しか開催されませんでした。」

2025年度は6月28日に開催した奈良県の「針テラス」(参加約400名)を含め、愛知県「刈谷ハイウェイオアシス」(8月31日開催)や、埼玉県小鹿野町・国民宿舎「両神荘・特設広場」(9月20日開催)、宮城県「道の駅七が宿」(9月21日開催)、熊本県「ASO MILK FACTORY」(9月21日開催)、北海道「美瑛・四季彩の丘」(10月5日開催)、香川県「瀬戸中央自動車道・与島PA第2駐輪場」(10月19日開催)7か所で実施していくという。

一過性で終わらないためにライダーの満足度を高めていきたい

日本二普協の“普及”という目的を達成するためには、「やはり新規、若者、特に女性にオートバイの利便性や楽しさを理解いただけるユーザーになっていただけるような活動も必要です」と髙橋さんは話す。

「安全、安心、快適、楽しさをお届けすることによって、オートバイユーザーとしての満足度を高めていくことが大事です。そうでないと一過性で終わってしまう可能性があるので、長く乗り続けていただくためには、そういったことをなるべく1人でも多くのライダーに満足感を感じていただける活動をやっていきたいと考えています。

もちろん、それぞれの施策や検討してきた部分を確実に実行できる組織体制を構築していく必要もあります。今後、様々な施策のPDCA(計画、実行、評価、改善)をしながら、次に向けた方針に加えながら明確にしていきます」

協会の強みは4メーカーを中心としたオートバイメーカーと官公庁・行政との強力な連携、今後の活動にも期待したい

髙橋さんに協会ならではの強みを尋ねてみると「私が認識する強みは、カワサキさん、スズキさん、ホンダさん、ヤマハさんという世界有数のオートバイメーカーを中心に、その販売ネットワークと強力な連携を持っていることです。そして、警察庁、警視庁・道府県警察を中心に官公庁・行政との強力な連携体制が弊協会のやはり大きな強みと認識しています」と語った。

確かに二輪車防犯登録や盗難照会システムは、全国の販売店や警察との連携なくしてはできない。日本二普協のスタッフには従来から警察の元職員が在籍し、業務を担当しているというから心強い。

――取材を終えて、まさにバイクライフの大部分に関わる活動をしている、スケールの大きな組織であることを実感。特に、ベーシックライディングレッスンが浸透すれば、公道を走るのが不安なビギナーも長くバイクに乗り続けてくれるはずだ。個人的には利用環境改善により力を入れてほしいと思うが、これはリソースの関係もあり、現状ではなかなか難しい課題ではあるが、将来的にはぜひお願いしたい。

髙橋さんは、バイクの利便性や魅力を十二分に理解し、国内の二輪業界の課題を認識するなど、二輪業界に精通した方が日本二普協を先導してくれるのは頼もしい限り。日本二普協が推進する「安全、安心、快適、楽しさ」をさらに拡大し、次代の二輪車市場を担う若年層ライダーの創出とともに、現役ライダー目線でさまざまな課題を乗り越え、二輪車と社会が共生できる環境づくりと、明るい二輪車市場にチャレンジしていくことを期待したい。

最後に抱負を書いた色紙「より安全で快適なバイクライフを過ごせる社会に!」を掲げてくれた髙橋さん。

ギャラリーへ (7枚)

この記事にいいねする


コメントを残す