
大それた挑戦なんぞ考えられない小心者だったけれど「好き」な道に集中するココロは鍛えられていた……
1973年9月、全日本ロードレースが開催されている筑波サーキットの最終コーナー。2位を走るボクはチェッカーフラッグ目前だった。
ビビリーなくせにロードレースに憧れ、まさかのカワサキ系サテライトチームに潜り込めたラッキーから、命拾いの大怪我を経てメーカー系チームに訣別、手当たり次第にバイトで稼ぎプライベート参加で全日本頂点クラスを2シーズン過ごした。
このチェッカーで、最終戦の鈴鹿を待たずに執念で粘った全日本チャンピオンになれる!
チェッカーフラッグを過ぎた瞬間、「ヤッター!!!」とこみ上げてくる感動の嵐に涙する……はずだったのに、直後の第1コーナーをゆっくり曲がりながら、想像もしてなかった空虚な気持ちしかないことに気づいた。
続く第1ヘアピンを低回転で左に曲がりながら、なぜかアタマに浮かんだのが「パドックへ戻ったら、オメデトーの祝辞と同時に、次の目標は?って聞かれるんだろうなァ」だった。
全日本の頂点クラスで初のプライベート・チャンピオン、その目標に向かって心を燃やし続けてきた。
ところがいざ夢が叶うと達成感など一瞬だけ、かといって次の目標がすぐ思い浮かぶでもなく……とかグルグルしてたら第2ヘアピンを立ち上がってしまった。
情報提供元 [ RIDE HI ]
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