
創刊が1923(大正12)年という『オートバイ』は100周年を迎えた業界最古のバイク専門誌です。二輪業界のさまざまなシーンとともに成長し、最新のバイク情報やプロライダーによる最新モデル試乗インプレッション、オートバイならではのバイクの楽しみ方など、数えきれないコンテンツを発信してきました。現在『webオートバイ』というウェブメディアとともに、Webと紙媒体それぞれの特徴を活かした情報を届けています。その『オートバイ』が今見据えている二輪業界の未来と自媒体の責務とはどのようなものか、モーターマガジン社 二輪統括編集長の松下尚司氏(以下、松下氏)にお話を聞きました。
『オートバイ』のあゆみ
2023年に創刊100周年を迎えた『オートバイ』のコンセプト、これまでの変遷についてお聞かせください。
新たな試みとしては、100周年を迎えた際にそれまでB5判だったサイズをA4変型判にサイズアップしました。『オートバイ』の購読層は50代が中心なので、写真や文字を大きくして見やすい誌面づくりのための手立てです。その一方で、時代に逆らうわけではありませんが、本を分厚くしてもいます。号によっては200ページを超えているというのは、昔から続く『オートバイ』らしさを感じられる点です」
2010年から始まったウェブメディア『webオートバイ』についてはどうでしょうか。
コロナ禍による局地的なバイクブームが到来した頃、バイクに乗る女性タレントをオリジナルコンテンツ化した『オートバイ女子部』が人気となり、併せて『webオートバイ』の運用が軌道に乗ってきました。サイトアクセス数を大きく伸ばしたことで単体で取り組める企画が増えてきました。ウェブではただ記事を掲載するだけでなく、動画やイベントとの連携も展開できているおかげで、取り組み方にも独自性を持たせられるようになっています」
紙媒体を続ける意義、想い
『webオートバイ』で新たなファンを獲得し、時代に合わせた取り組みを行っている『オートバイ』が、今なお紙媒体を続けている想いをお聞かせください。
モーターマガジン社にとって、『オートバイ』は家族に例えると父親的な存在なんです。まず父親が家族を支え、時が経つにつれてウェブやイベントといった子どもたちが育ってきて、家族を支える新たな力となっていきます。子どもたちが伸び伸びと活躍できるのも、大黒柱たる紙媒体の『オートバイ』がいるからこそ、です」
紙媒体という「形あるもの」の存在は、大きな影響力があるのですね。
月刊誌を出し続けるのは確かに大変な時代かもしれません。100年という歴史の重さもありますが、いつも『オートバイ』の新刊を心待ちにしてくれているファンの皆様の期待に応えたい想いも強いですし、業界全体を盛り上げるために必要な新たな試みの後ろ盾のような役割もあるので、『オートバイ』は不可欠な存在なんです」
『オートバイ』が今、力を入れていること

1954(昭和29)年1月1日に発行された『オートバイ』。表紙を飾っている人物は読売ジャイアンツ所属の川上哲治氏で、跨っている車両はベビーライラック号(丸昌自動車)。プロ野球オールスターゲームのMVP景品だったそうです。
『オートバイ』が取り組む新たな試みについて、お聞かせください。
現在、二輪の世界に興味があって、本を読むという“文化的な行為”を楽しんでいる人たちに対して、本という文化的なものを提案したい、届けたいという想いが、サイズアップした今の『オートバイ』です。以前と比べて文字サイズを大きくしているのもマッチする読者層への提案のひとつですし、単なる情報の羅列ではない、雑誌ならではの面白さを届けられるように心がけています」
ウェブを活用した取り組みにも挑戦されているそうですね。
時代とともにメディアの存在は大きく変わりました。記事を作れば終わりではなく、リアルと非リアルのすべてを提供していかなければならないと思っています。そのために、これまで専門誌が影響を与えられたゾーンだけでなく、ウェブやSNSを使って影響力を持つ必要を強く感じています。メディアそのものの形も変わってきている今、既存の読者とは違った人たちに情報を届けられる手段を私たち自身が学びながら、バイクの魅力を広めていかなければならないと考えています」
『オートバイ』が伝えたい、バイクの楽しみ方
『オートバイ』と『webオートバイ』、そしてモーターマガジン社が発刊する『ミスター・バイクBG』の制作を管理している二輪統括編集長として、松下氏が伝えたいバイクの楽しさやバイクの魅力を教えてください。
100人ライダーがいれば、100通りの楽しみ方があると私は思っています。誰かに強要されるものでもなく、自分自身で好みの世界を高めていける。また、歳を重ねると新しい楽しみが出てくるのがバイクという乗り物です。自分のペースでバイクに乗り続けることが、バイクを楽しむことだと思います。
まだバイクの世界に触れたことがない人が“どんなバイクがあるのかな”と、バイクに興味を持ち始めたときに『オートバイ』を見てもらえたら嬉しいですね。あなたにとっての特別な一台が見つけられるように、たくさんのバイクを載せていますので」
次なる100年を見据えたチャレンジを続ける
100年という節目を迎えた老舗専門誌『オートバイ』は、ウェブという新たなツールを取り入れて、次なる100年を見据えたさまざまな取り組みに挑戦しています。ライバル誌の変化や新興メディアの台頭など、『オートバイ』を取り巻く環境は厳しくなる中で、専門誌の発刊を続けながらバイクメディアの最前線を走り続ける姿に、二輪業界への熱い想いをひしひしと感じました。
専門誌とウェブメディア、動画、イベントと、『オートバイ』はさまざまな姿となって、バイクの世界の入り口で待ってくれています。『オートバイ』が伝えたいバイクの楽しみ方に一度触れれば、間違いなくバイクの虜になることでしょう。
■オートバイ https://www.motormagazine.co.jp/_tags/オートバイ誌■webオートバイ https://www.autoby.jp/ 【画像】100年の歴史を持つ伝統誌『オートバイ』が伝えたいバイクの楽しみ方 (10枚)
情報提供元 [ MOTO INFO ]
この記事にいいねする