バイクに関する安全、防犯、適正な販売、利用環境改善など、バイクライフのあらゆる場面に関わる活動を行っている団体が「一般社団法人 日本二輪車普及安全協会」。近年「ベーシックライディングレッスン」を開始させるなど新たな動きが活発化している。その現状を専務理事の小椋道生氏に訊いてみた。

より初心者向けの「ベーシックライディングレッスン」を2024年からスタート

一般社団法人 日本二輪車普及安全協会(日本二普協)の母体は、1971年に二輪車安全運転協議会として設立。国内4メーカーによって1997年に設立された日本二輪車協会(NMCA)と2013年に統合し、現在に至る。

「安全」と「二輪車の普及」を大きな役割とし、バイクライフ全般に関わっているが、活動内容が社会一般に知られていないのが現状。そこで、専務理事の小椋道生氏に現在の取り組みについて話を伺った。

日本二輪車普及安全協会の小椋道生専務理事。インタビューは東京モーターサイクルショー会場で行った。

日本二普協が設立されて10年目となる2022年の秋に、次の10年に向けてどういう方向で活動するかを整理しました。これに基づいた施策が現在推進されています。

日本二普協は、ライダーの「安全」「安心」「快適」「楽しさ」という4つの観点で施策を推進しています。特に力を入れているのが初心者や若年層への安全運転普及です。昔は免許を取ると周りにバイクに乗ってる先輩や友人がいて、免許取ったら色々教えてくれる環境がありました。今はそういった環境がなかなかありません。教習所でバイクの乗り方を教わって、免許を取り、一人で初めて公道に出るケースが相当多いんです。

その方々の不安たるや、相当なハードルの高さを超えて公道に出る方が多いと思います。バイクに乗って楽しんだり、利便性を享受するはずが、混合交通での運転技量の不安を感じ、残念ながら降りられる方がいることも事実です。

日本二普協としては、バイクに乗っていただいたら“バイクって楽しい” “バイクって便利”と思っていただける環境をつくりたい。そこで若年層の初心者を中心とした安全運転講習『ベーシックライディングレッスン』を2024年から開始しました。

日本二普協では、従来から安全運転講習の「グッドライダーミーティング」を32年間続けてきました。これを初心者により特化したカリキュラムに見直すことにしたのです。

32年続いてきたグッドライダーミーティングのカリキュラムを刷新。より初心者向けの『ベーシックライディングレッスン』が2024年から開始された。

より若い方や安全意識が薄い方に是非参加してほしい

グッドライダーミーティングは年間100回で開催していたので、まず100回の指導などでご協力頂いている関係者の方々に対して、ベーシックライディングレッスンに移行していくことをご説明し、ご理解をいただきました。2024年が1年目なので「スムーズに移行し、結果を出せるか?」と不安に思っていたのですが、初心者の受講率が76%という結果になりました。グッドライダーミーティングは30%程度だったので、倍以上の飛躍的な伸びを示しています。

課題が2つあって76%の方々の平均年齢を見ると50歳以上の方が非常に多いんです。若年層にまだまだ我々の活動が認知いただけていませんでした。

もう一つの課題が“安全意識が低い初心者の参加”です。現在ベーシックライディングレッスンに参加されている方の胸部プロテクター装着率は8割以上、任意保険加入率もほぼ100%です。つまり安全意識が高く、安全な運転をされてる方々がもっと安全を目指すために来ていただいています。

その一方で、すり抜けをされる方や、制限速度をオーバーされる方、装備が不十分な方が公道では多数見受けられます。そういった方々の中には初心者の方もいらっしゃるので、ぜひベーシックライディングレッスンを受けていただきたい。バイクの楽しみ方は、スピードではない部分が相当あります。しっかり正しい楽しみ方を身に着けていただきたいと考えています。

ベーシックライディングレッスンの一コマ。安全運転技術の向上や交通法規&マナー遵守が目的。白バイ隊員からのレクチャーも受けられる。

安定したブレーキングや、スムーズなコーナリング、スラローム走行などを訓練。車両は基本的に全て持ち込みだ。

万一の盗難で早期発見に役立つ「二輪車防犯登録」、盗難被害が増えている今こそ加入を

ライダーの財産であるバイクを守る「安心」も我々の活動のポイントです。その一つとして日本二普協では「二輪車防犯登録」の推進活動を行っています。

二輪車防犯登録は、全国のバイクショップ(二輪車防犯登録取扱販売店)にてご加入頂け、バイクのデータ(所有者様、防犯登録番号、ナンバープレート番号、車台番号など)が警察にて管理運用される制度です。二輪車は市区町村や陸運局などに届け出をすることでナンバープレートが発行されますが、それだけでは警察は所有者を把握できません。二輪車防犯登録に加入していれば警察は盗難車や放置車両から所有者を確認でき、盗難時の早期発見につながります。

加入は新車、中古車の購入時だけでなく、現在お乗りのバイクにもご利用いただけます。取扱登録販売店は全国にございますが、詳しくは日本二普協ホームページをご確認ください。

そして、残念ながらここ数年でバイクの盗難件数が増加していて、2021年の7,569件から2024年は11,641件と、3年間で1.5倍にまで増えているのです。この背景を踏まえ、我々日本二普協はライダーの皆様の大切なバイクを守るために、「二輪車防犯登録」をこれまで以上に推進していきたいと考えています。

「二輪車防犯登録」に加入するとユーザーカードとステッカーが発行される。参考登録料は1,650円(2025年4月現在の参考価格、詳しくは取扱店にご確認ください)登録から15年間有効。

二輪車防犯登録取扱販売店
https://www.jmpsa.or.jp/bouhan/regist/office.html

安心して買えるバイク販売店の目安も提供

販売店の「適正表示」にも力を入れています。

自動車公正取引協議会(公取協)と協力して、ユーザーが安心して新車・中古車を売買できるように、不当表示のないプライスの出し方などを推進。「二輪品質評価者(品質査定士) 制度」の普及を促進して、二輪品質評価者の在籍する販売店には店頭ステッカーを掲げ、ユーザーが信頼できる販売店を選びやすくしています。

自動車公正取引協議会の会員店や「二輪品質評価者」の表示があるお店で買うと安心。

現在の取り組みをさらに進化、バイクに対するイメージをポジティブにしたい

他にも、ライダーが公道を走る時に必要な二輪駐車場や通行規制などの情報を発信して「快適」であることを目指しています。また、モーターサイクルショーや、『ジャパンライダースカフェ』といったツーリング時の立ち寄り場所でグッドライダー宣言を頂く場を設定するなどバイクの「楽しみ」をお届けする取り組みを行っています。

このようにベースが出来上がりつつある中で、それぞれより進化・充実させ、課題解決していくことが今後の目標です。日本二普協の大きな課題は、若年層への発信を強化するということです。今回の大阪・東京モーターサイクルショーでは、若年層に大人気の2.5次元アイドルグループ「すとぷり」のメンバーである「さとみ」を公式アンバサダーに任命したのも発信強化の一環です。

2.5次元アイドルグループ『すとぷり』のさとみとコラボ。バイクに興味のない女子にもバイクの存在をアピールした。

今後の「かっこいいライダー像」とは

近頃、若い方々の間で「かっこいいライダー像」が変化してきています。僕らの世代(小椋氏は60歳代)で言うと「峠が速い」「タイヤの端まで使い切ってる」とか、そういう人たちがかっこいいライダー像でした。でも現在は、特に若い方々から見たかっこいいライダー像は、「運転マナーがよい」「運転スキルが高い」「装備品をきちんと装着している安全志向」の方々に変化しています。今後は、この若年層の安全志向を次世代に継承していきながら「かっこいいライダー像」を幅広い世代にも広く浸透させていきたいと考えています。

バイクに乗ってる人を見て「いい趣味してるよね」「なんか楽しそうに生きてるよね」という目で社会が見てくれる。そういうところを目指していくのが日本二普協の役目。あくまで我々は一般社団法人なので、日本国内のライダーのために「二輪車と社会が共生できる」基礎硬めに尽力する団体でありたいと思っております。

バイクの価値向上をミッションとする小椋氏自身もライダー。プライベートでは愛車のCB1100でツーリングを楽しんでいる。

日本二輪車普及安全協会

https://www.jmpsa.or.jp/

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