
51cc以上のバイクを含む普通車は一般道で上限60km/hと定められているが、特定の条件を満たした生活道路の最高速を「30km/h」とすることが検討中。国民から意見を募るパブリックコメントが開始された。
現在も一部の生活道路で既に上限30km/hとされているが、改正後はライダーとしては今まで以上に速度違反への注意が必要に。また、地方の農道など場所によっては一律に上限30km/hが適用されない場合がありそうだ。
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65年ぶり、速度標識がない場合の上限速度60km/hが改正へ
2024年5月30日、中央線や車線がない一般道の最高速度を現行の60km/hから30km/hに引き下げる案を警察庁が発表した。
これは、生活道路において歩行者が被害者となる交通事故を防止するのが狙い。順当に行けば、2026年9月に導入される。
原付一種(50cc以下)のバイクが上限30km/hなど一部を除いて、道路交通法施行令で速度規制標識のない一般道を車両が走る際は上限60km/hと定められている。普通車でこうした改正が行われるのは、1960年に道交法施行令が制定されて以来、初めてとなる。
引き下げの対象となるのは、中央線や分離帯など車両通行帯がない道路のほか、複数の車線がない道路。ともに速度規制標識がない場合に上限30km/hとする。つまり幹線道路ではなく、住宅街などの生活道路に適用される。
ゾーン30やゾーン30プラスといった上限30km/hの生活道路は既に存在する。法改正後、ゾーン設定や表示がなくても上限30km/hの道路が全国に広がることに。
幅5.5m未満の道路での事故は横ばい、30km/h超で致死率が上昇する
2011年から、住宅街など生活道路が集積している区域を「ゾーン30」とし、最高速を30km/hとしている。導入のきっかけは、2010年までの10年間、車道幅員5.5m以上の道路における交通事故発生件数は29.2%減少したのに対し、車道幅員5.5m未満の道路では8.0%の減少に留まっていたため。幅員の狭い生活道路で、歩行者等への安全対策が目的だった。
今回の改正も理由は同様だ。2023年の交通事故件数は30万7930件で、10年前と比べて半分以下に減少している。一方、警察庁の資料によると幅5.5m未満の比較的狭い生活道路で起きた事故の発生率は全体の23.9%(7万3607件)で、10年前の24.1%からほぼ変わっていない。
また、2023年に幅5.5m未満の道路で起きた歩行者と自転車の事故死傷者数は、幅5.5m以上の道路に比べて約1.8倍も多かった。
さらに、交通事故総合分析センター(ITARDA)のデータによると、車が30km/h未満で歩行者と事故を起こした場合、歩行者の致死率は0.9%なのに対し、30km/h超だと3%以上に死亡率が跳ね上がるという調査結果も出ている。
事故発生件数は平成25年(2013年)と比べて、ほぼ半減。その一方で5.5m未満の事故発生率はほぼ変わっていない。※表は警察庁交通局より
5.5m未満の道路では、歩行者と自転車の事故死傷者数が約1.8倍も多い。※表は警察庁交通局より
交通事故データ(ITARDA:令和3年データ)を基に作成したグラフ。20~30km/hを境に歩行者の致死率は急上昇する。※表は国土交通省より
農道などは実状や要望に即して適用へ、都市部はパブコメで一律導入か否かが決まる
現在はゾーン30以外の区域のほか、センターラインがある道路でも30km/h制限の場合も多い。これらに加え、法改正後は多くの生活道路が上限30km/hに。原付一種は現行でも上限30km/hだが、生活道路では他の車両の速度差がなくなることになる。
ゾーン30に指定されていない生活道路の多くは、法改正後に30km/h制限が適用されることになるだろう。
問題は、田舎の農道のように一般車両も走り、速度標識とセンターラインのない道路。こうした道路で交通量が少ないケースで上限30km/hとなると、実態に即した改正とは言えないだろう。
これに関し、5月31日の会見で国会公安委員長は「自治体の皆様方からいろんな御意見を伺うことは重要であると考えております」と発言。「地元の御要望、御意見、こういったものをよく踏まえた上で、必要であればそこは30km/hではなく、速度について検討をするというような対応になるかと考えます」と回答した。
実状に即した、柔軟な規制対応が求められる。また「都市部で一律に導入するかどうか」との質問に関しては、国家公安委員長が「パブコメの結果次第」という意味の発言をしている。
[今後]歩行者の事故が減るのは歓迎、ライダーは従来以上に速度に注意を
ちなみに、法改正が実現すれば、標識やペイントの管理をしたり、ゾーンの設定をする必要がなくなり、行政にとってコストカットのメリットもあるだろう。
歩行者にとっては事故の危険性が減るはず。ライダーにとっては取り締まりの強化が予想され、これまで以上に速度規制を遵守する必要があるだろう。また、上限30km/hの規制を守っているのに後ろから煽り運転する輩がいた場合なども、しっかり取り締まってほしいものだ。
意見のある人はパブリックコメントまで。6月29日まで意見を募集中だ。
※応募先=https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=120240015&Mode=0
標識がなくても上限30km/h、2026年9月から生活道路の最高速が一律で変更へ? ギャラリーへ (6枚)この記事にいいねする