「ちょっとだけだから」

バイクやクルマを運転する方なら誰もが一度くらいは路上駐輪(駐車)の経験をお持ちではないでしょうか?

正直に言うと筆者もあります。

サッと用を済ませてバイクへ戻るとミラーのバー部分に何やら黄色い紙が貼られているではありませんか(実話です。詳細は後述します)。

「何じゃこりゃ?」と叫ぶまでもなく『駐車違反の張り紙(放置車両確認標章)』です。

ところでこの張り紙を貼られたら必ず警察署に出頭しなければいけないのでしょうか?

ご存じの方もいらっしゃるとは思いますが「法改正前はそうでしたが今は違う」が答えです。

ということで本日は「放置車両確認標章を貼られてしまったらどうすべきなのか?」について筆者の実話も交えながら詳しくお話しをさせていただこうと思います。

大きく変わった駐車違反取締り制度

改正道交法が施行され駐車違反に関する制度が大きく変わったのが2006年6月1日。これにより導入されたのが現行の「駐車監視員」制度です。

それ以前、駐車違反を取り締まっていたのは当然ながら警察官です。ところが改正法により駐禁取締りの一部が「駐車監視員」にも解放されました。

アラフォー以上世代の方ならご記憶かと思いますが、改正前の駐禁取締りは、タイヤ接地部分の道路とタイヤに警察官がチョークで印をして時間を計測、一定時間放置されたことを確認した上で違反を現認し、駐禁ステッカーを貼るというのが一般的でしたよね。

ところが現行制度では取締りの主役は警察官から駐車監視員に交代。緑色の制服を着て2人1組で街を巡回しながら駐車監視する姿を筆者もよく見かけます。

そして現行法では放置時間の長短に関係なく『運転者が直ちに運転することができない状態』なら即取締り可能になりました。そういう意味では違反の厳格化がなされたと言えると思います。

筆者の実体験をお話しします

2021年秋頃、ツーリングに出発しようと自宅駐輪スペースから自宅前道路端にバイクを移動。

出発直前に忘れ物に気付き一旦自宅内に戻りました。何かあったらすぐに飛び出せるようにと玄関ドアは開けっ放しにし、バイクの様子を自宅内から窺えるようにしていました。

ついでにトイレを済ませようと玄関のすぐ脇にあるトイレへ。トイレを済ませ出発しようと玄関を出ると冒頭の通り何やら黄色い紙が見えるではありませんか。ふと目をやるとバイクから10mほど離れ自宅内からは死角になる位置に止めた自転車に跨って去っていく駐車監視員の姿が。

ということは少し離れたところに隠れて様子を窺っていたのか?玄関ドアも開いているし大豪邸ならいざ知らず狭い自宅内にライダーが居ることは分かるはず。

確かにトイレ中なら『直ちに』移動は無理ですので『放置駐車』に該当すると言われればそうかもしれませんが、だからと言って『放置』していたつもりなどありません。そもそも『直ちに』の定義もハッキリしませんよね。

出発前のごく短時間自宅の目の前の道路端に駐輪したのは確かですが放置車両確認証票を貼るほどの往来の危険や違法性があったのか?

しかもバイクのすぐ脇ではなく隠れるように死角に潜んで監視していたのは監視に気付かれ取締りが不発に終わるのを避けるためではないのか?

一体誰のための取締りなのか?

「違反をしておきながら文句を言うとは何事か!」というご批判は甘んじて受け入れますが、とはいえこれが当時の筆者の率直な感想なのです。

弁明することはできるが…

ここで、「放置車両確認証票を貼られた場合、警察署へ出頭する必要があるのか?」について冒頭の続きをお話しします。

答えはNo、「出頭してもしなくてもよい」が正解です。

出頭せずそのままにしておくとどうなるかというと後日、車両の車検証上の使用者宛に放置違反金の『仮納付書』が届きます。この仮納付書の段階で放置違反金を納付すればそれで手続きは全て終了となります。

ですが放置駐車違反の取締りに対しては『弁明の機会』が付与されていますので仮納付を拒否した上で弁明の手続きをすることができます。

弁明とは、簡単に言えば文句(異議や言い訳)を言うことです。文句を言うといっても放置駐車違反に対する弁明は口頭ではなく弁明書を提出することによって行います。

弁明書の内容に正当性が認められた場合は放置駐車違反のペナルティーはなくなります。が、それは極めて稀だと言われています。

しかし前述のように取締りにどうしても納得がいかなかった私は何か言わなければ気が済まず、熱い熱い内容を書き連ねた弁明書を作成しました。

結果は予想通り撃沈。

正式に放置違反金の『納付命令書』が届き納得いかないまま納付して手続きを終了させました。

運転者責任と使用者責任

今回赤裸々に実体験をお話ししたのには理由があります。それは、弁明が認められるのは極めて稀だということと、現行法上の弁明手続きは運転者ではなく車両の保管責任を有する使用者に対するものだということをお伝えしたかったからです。

弁明が認められ得る3つのケースとは?
1 事実誤認等により違反が成立していない
2 (売却等により)使用者ではなかった
3 天災等不可抗力だったことが明らか
警察庁通達より

改正前の駐車違反は他の違反と同様運転者の責任を問うものでした。

スピード違反や信号無視なら取締りを受けた人が運転者ですよね。ですが駐車違反は運転者がそこにいないからこそ成立する違反です。

警察がナンバーから使用者を割り出しても「友人に貸していた」、「盗まれた」などという言い逃れも可能でしたし事実多かったのです。

そこで、そんな言い逃れをさせないためにも運転者責任だけではなく使用者に対しても責任を問えるよう法改正(2006年6月1日施行)がなされたのです。

使用者に課される放置違反金は行政罰の一種ですが金額は運転者に課される反則金と同額。当時に取締りを民間の駐車監視員へも開放し取り締まり体制を強化。事実、改正後は取締り件数が激増するという効果を発揮しています。

出頭しない方がいい理由

これまでお話ししたように、放置違反金は運転者ではなく使用者に課される金銭的制裁。でもその場所まで移動しそこに放置した運転者が必ずいるはずです(筆者の例は運転前でしたが)。ところが、使用者として放置違反金を納付すると運転者の責任は問われなくて済むのです。

この使用者責任は金銭的制裁のみで運転者責任ではありませんから違反点数は付与されません。

先ほど、「出頭してもしなくてもよい」と言いましたが、そこに放置した運転者として出頭することもできます。当然ですが出頭すると事情を聞かれたうえで違反運転者として青切符を切られてしまいます。

この場合の運転者への制裁は反則金の支払いと違反点数(2点又は3点)の付与。また、運転者が反則金を納付すれば使用者は放置違反金を納付する必要はありません。

つまり、出頭しないと放置違反金という金銭的制裁のみで、出頭すると反則金という金銭的制裁に違反点数付与という制裁も加わります。(放置違反金と反則金は同額)

ただし、詳細は割愛しますが同一車両が一定期間内に放置違反金処理を複数回受けると車検が受けられなくなるというペナルティーはあります。

結論

現行法令上は上記の使用者責任と運転者責任には優先順位はなくどちらを選ぶかは自由。

しかも両者はどちらか一方を選べばもう一方の責任は問われないという関係にあります。そのため、放置した運転者と使用者が違う場合には使用者に迷惑を掛けてしまう可能性はあると思います。

ですが職業的な理由や点数が溜まって免停が目前の方の大半はお得な『出頭しない』を選ぶのでは?と思ったりする訳です。

ま、国にとっては『放置違反金』という名の新たな財源が増え、運転者にとっては点数の心配がなくなる、というある意味Win-Winの関係では?という別の見方もあったりしますが…。

以上、駐車禁止の張り紙を貼られても慌てて警察署へ出頭しない方がいい、は本当か?について掘り下げてみました。

参考になれば幸いです。

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コメント一覧
  1. 匿名 より:

    行政書士ライダーの実体験を読むと,「忘れ物を取りに行く短時間だったのに」という言い訳をしているが,
    自宅前なので,普段から長時間停めていた常習犯だったと思われる。
    駐車監視員は「近所からの苦情」が届いていたから,取り締まりの張り込みをしていたのだろう。
    バイクを停めていた場所は横断歩道の手前30m以内で,危険性,違法性が高い。自業自得だ。

  2. 匿名 より:

    駐車監視員は張り込み出来ません。
    運転者を見るとそこから離れようが作業出来ませんので。
    それに横断歩道は5m以内だけしか違反にもなりません。

    これ自宅に対して先頭が右側向いてますが左側向けてたら違反にならないと思います。

  3. 匿名 より:

    もしかして,行政書士ライダーさん?

  4. 匿名 より:

    駐車禁止区域は,①法定と,②道路標識等により禁止される部分がある(道路交通法44,45条)。
    ①は交差点,曲がり角,横断歩道から5m以内の部分等。②は公安委員会の道路標識等で指定された部分。
    記事の写真には道路標識が映っているから,バイクを停めた場所は「横断歩道からの距離に関係なく」駐車禁止の部分である。
    「駐車」の定義(道路交通法2条1項18号)に「車両の向き」はないから,バイクをどっちに向けても違反になる。

  5. 匿名 より:

    駐車監視員は「行政書士ライダーに感づかれないように,隠れるように死角に潜んで監視していた」ようだ。
    やはり,誰かが警察に通報したのだろう。
    駐車監視員は職務を遂行しただけだ。「一体,誰のための取締りなのか?」などとイキるのは八つ当たり。
    いい歳をしたオッサンが言うことではないな。

  6. 匿名 より:

    私有地に半分以上入ってたらスルーされるのに手を抜くから…。

  7. 匿名 より:

    想像で他人を叩くのはやめなよ。

  8. 匿名 より:

    筆者にケチ付けるために無理やり理由をでっち上げるの草

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