
今やほとんどのバイクやクルマはコンピュータ制御が当たり前。とはいえ、それはインジェクションやトラコン、ABSなどのように基本的にバイクやクルマを効率よく安全に走らせるためのもの。あくまで運転操作をするのは人間です。
バイクやクルマを運転するとき。我々は常に目や耳などから情報を収集し、その時々の状況に応じて最適な運転を脳で判断し、それを手足に伝えて運転操作をします。そんな運転を私たち人間はほとんど無意識的に行っていますよね。その運転の全てをバイクやクルマ自身が可能にすること。それが自動運転の世界です。
実はこの数年の間に自動運転の世界は大きな進化を遂げ、ついに本年、特定条件下ではあるものの公道でのドライバーレス完全自動運転車両(レベル4)が認可されるに至りました。
そこで今回はバイク歴37年を数える私、行政書士ライダーが先ほど言ったレベル4の実例を題材に『自動運転の世界』を皆さんと共に覗いてみたいと思います。(バイク歴とはあまり関係はありませんね)
自動運転レベル4とは
自動運転なんて全く知らないという方もおられると思います。そこで、まずは「レベル4とは何ぞや?」からお話ししたいと思います。
まず、自動運転はレベル0からレベル5までの6つの段階に区分されています。
この区分は、元々はアメリカのSAE(米国自動車技術者協会)が定めたものですが、今や採用する国は世界に広がっており日本も同様です。日本ではさらに、国交省がこの区分に対応した名称や運転主体、定義等を策定しています。

レベル4は特定条件下における完全自動運転を指し、実験車両で2023年5月より実施。出展:国道交通省 https://www.mlit.go.jp/common/001226541.pdf
国内市販車の現状

日本唯一のレベル3搭載車ホンダ・LEGEND
https://www.honda.co.jp/auto-archive/legend/4door/2022/hselite/
レベル0は自動化無し。レベル1からレベル5までの5段階のうちレベル2までは運転支援、レベル3からは自動運転にカテゴライズされます。このうちレベル2と3の違いについては表のみでは分かりにくいかもしれませんが、両者の間には法制上の位置づけや技術レベルに大きな隔たりがあります。
例えば、レベル2の運転主体は人間ですがレベル3からはシステムに。レベル2ではハンズオフ(手放し運転)が解禁されましたが、レベル3ではアイズオフ(ながらスマホ運転等)までもが解禁されるのです。
現在日本ではレベル2を搭載した市販車を各自動車メーカーがこぞって投入していますが、レベル3を搭載した市販車はホンダLEGENDのみとなっています。(2021年3月5日、限定車として100台のみ販売。しかし、2022年1月をもってLEGENDの販売が終了したためレベル3を搭載した現行モデルの市販車は存在せず)
日進月歩で進化を続ける自動車業界ですが、こうしてみると完全自動運転(レベル5)までの道のりが如何に遠いかがお分かりいただけるのではないでしょうか。
国内公道初!ドライバーレス自動運転(レベル4)サービス開始

写真:ヤマハ発動機
そんな中、レベル3からさらに1歩進んだレベル4の実証実験が福井県永平寺町でスタートしたのです。(全国初)
年間数十万人が訪れる観光地としても有名な永平寺。そんな永平寺門前のほど近くからえちぜん鉄道永平寺口駅を結ぶ『永平寺参ろーど』の一部約2㎞の区間がその舞台です。
2023年5月21日、運転者を必要としない自動運転車(レベル4)※1の認可を受けた車両がゆっくりと走り出します。改正道交法により実現した自動運転移動サービス(レベル4自動運転による自家用有償旅客運送事業)が実証実験の形でスタートしたのです。
※1 特定の走行環境条件を満たす限定された領域で自動運行装置が運転操作の全部を代替
今回のレベル4実証実験概要はこんな感じです。

写真:ヤマハ発動機
運行主体:永平寺町(まちづくり株式会社ZENコネクトに運行委託)
運行車両:ヤマハ製電動カートを国立研究開発法人産業技術総合研究所産総研が改造し、自動運転機能を追加
運行形態:道路に敷設した電磁誘導線上を追従しながら時速12kmで走行
以上のように、今回の実証実験は限定エリア内のみでの運行(最高速度12㎞/h・運行距離約2㎞)となっていますが、地元の方はもちろん観光客も乗車することが出来ます。(運航日は土日祝のみで運賃大人1人100円)
バイク乗りには嬉しい!?ヤマハ製車両
永平寺町で実際に使われているレベル4の認可を受けたベース車両は4輪メーカーではなくバイクメーカーのヤマハ製。こちらはヤマハのAR-07グリーンスローモビリティ(電動カート公道仕様)で7人乗りですが、自動運転機能が追加されています。どこか親しみを感じるのはTRACER乗りの筆者だけでしょうか?
ちなみにレベル4の認可に必要な装備はこんな感じです。

ZEN drive Pilot Level 4 写真:経済産業省 https://www.meti.go.jp/press/2022/03/20230331002/20230331002.html
前方側方後方を感知するカメラはもちろんGPSやミリ波レーダーなど、ゴルフ場のカートのような車体に自動運転に必要なハイテク装備がてんこ盛りなのがお分かりいただけると思います。
レベル4実証実験の実際
高速道路などの限定領域かつ一定条件下でのシステムによる自動運転であり緊急時等には人間が運転を交代することが前提であるレベル3。
それに対しレベル4は、特定条件下ではあるもののシステムによる完全自動運転が実現。緊急時等でもシステムの判断で安全に停止すればよく人間による監視やバックアップは不要です。さらに車両が認可されただけではなく、バスやタクシーのような一般客向け有償旅客運送事業が実現した意義は大きいと思います。
とはいえ、永平寺町の実証実験ルートは公道ではあるものの歩行者自転車専用道路の一部で一般車両自動車の乗り入れは禁止。しかも、道路のどこを通ってもよいのではなく運行はあくまで道路の一部に設置された電磁誘導線上のみ。
果たして、これが『完全自動運転』と呼べるのか?といったレベルであることは否めないのではないでしょうか。
最後に
以上、永平寺町で実施中の国内初レベル4実証実験のレポートを交えながら自動運転についてお話をさせていただきました。
ただそれは4つのタイヤで姿勢が安定し、ハンドル操作で方向を操るクルマでのお話。それに対しバイクはそもそも単体での自立走行が難しいだけではなく、方向を操るのは基本的に車体の傾斜と体重移動という乗り物です。
例えば、カーブの入り口でバイクの自動運転システムが車体を傾斜させても、ライダーがそれに合わせて体重移動をしなければバランスを崩して転倒する可能性もあるのではないでしょうか。
このように自動運転はバイクには馴染まないシステムだと思います。おそらく多くのライダーの方もそうだと思いますが、私は『運転自体を楽しみたい派』です。運転をせずに移動したい時はバイクではなくバスや電車、タクシーを利用します。
バイクという乗り物は風を感じながら自分で運転するからこそ楽しい乗り物だと私は思うのです。そういう意味では自動運転バイクなど私には理解不能でしかないのですが、みなさんはいかがですか?
とはいえ、もし自動運転バイクが開発されたら。買おうとは思いませんが試乗はしてみたいかな…。
レポートは以上です。
秋、絶好のバイクシーズンが到来しましたね。さて、次はどこへ走りにいきましょうか。
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行政書士の業務と関係ないよね。
バイクと関係ない話は,他のメディアでやってほしい。
それより,すり抜けの結論があいまいで,誤報訂正の宿題が残っていたはず。