一部の道府県で運転免許の更新時講習が試験的にオンラインで行われている。24時間好きな時に講習を受けられ、時間短縮になる一方、視力検査や免許証の受け取りなどはリアルに行う必要もある。一体どんなシステムで、どんな問題点があるのか検証してみたい。

2022年から一部でオンライン講習が試験的にスタート

運転免許の更新は、免許センターや警察署に足を運ぶ必要があり、受付時間も限定されるため、実に面倒なイベントだ。しかし、2022年2月からオンラインで24時間好きな時に講習を受けられる制度が一部で試験的に行われている。

講習を受けるために行列をつくったり待ち時間が長かったりするものだが、この制度を使えば、パソコンやスマホを使って自宅にいながらオンラインで講習を受けることが可能。また“三密”を避けられ、新型コロナなどの感染症を予防することもできる。

ただし次のとおり様々な条件がある。

●現在は北海道、京都府、千葉県、山口県の4道府県のみで実施。各道府県の更新連絡書(更新お知らせのハガキ)を持っている。
●ゴールド免許(講習区分が「優良」)であること。
●オンライン講習の受講および免許証の更新の時点で、上記4道府県に住んでいること。
●上記4道府県の免許更新申請窓口で手続き予定であること。
●住所が上記4道府県のマイナンバーカード(有効な署名用電子証明書、6~16桁英数字のパスワード)を持っていること。

これらの条件をクリアした上で、オンライン講習の専用サイトにアクセスし、マイナンバーカードを使ってログインした後、講習動画を視聴。そして最後にアンケートに答えて受講終了というのが一連の流れだ。

講習動画では、受講者が居眠りなどをせず、しっかり視聴しているか確認するため、チャプターごとに確認問題を出題。さらに動画視聴中、受講者の撮影が計3回行われる。

そのため、事前にマイナンバーカードを読み取れるスマホかパソコンが必要。また、パソコンの場合は、インカメラか外付けのWebカメラ、ICカードリーダーが必要だ。なお、オンライン講習で撮影した顔画像は、運転免許証の写真には使用せず、あくまで本人確認用となる。

北海道の運転免許更新連絡書。ゴールド免許で講習区分が「優良」の場合、オンライン講習が受けられる旨が明記されている。

ゴールド免許の場合、免許更新の流れはこんな感じ。オンラインで対応できるのは講習の部分のみだ。※「更新時講習(優良運転者講習)のオンライン化に係る調査研究報告書」より抜粋

結局、免許センターに行く必要があり、マイナカードなども必須

非常に便利に見えるが、改善すべき点も多い。

オンライン化はあくまで免許更新手続きにおける「講習」の部分だけであるため、視力検査や運転免許証の受け取りなどは実際に免許センターや警察署に行って手続きしなければならない。
難しい部分もあるだろうが、せっかくなので全行程をオンライン化し、免許は郵送などでの対応もお願いしたいところだ。

また現状はゴールド免許のみが対象なので、もっと対象者を拡大してほしい。

何かと世間を騒がせている「マイナンバーカードが必須」なのもどうか。今回のシステムを構築したNECがまとめ、警察庁に提出した資料によると、マイナンバーカード認証後の入力画面からアクセス回数が大幅に落ちているとのこと。そのためNECでは、マイナンバーカードを所有していない、もしくはマイナンバーカード認証ができずに受講を断念した人が多かったと分析している。

システム面では、OSやブラウザが限られているのも問題。スマホの場合、Android端末は「Chrome」、iOS端末は「Safari」にのみ対応。PCの場合、Windows10でEdge ChromiumかGoogle Chromeにのみ対応している。

つまりmacOSや Windows11、Linuxは使用不可。macやWin11はマイナポータルでも動作するのだから対応してほしいものだ。

写真はAndroid+Chromeでオンライン講習のサイトにアクセスした場合。iOSはSafariのみ、PCは別途カードリーダーが必要なのでちょっとハードルが高い。

講習のために免許センターなどに出向く必要がなく、好きな時に講習を受けられるのは確かにメリットであるが……。

全体でのオンライン受講率は10%前後、今後も利用したい人は驚異の99%超!

続いて、利用実態やユーザーの声を紹介したい。前述のNECが取りまとめた資料「更新時講習(優良運転者講習)のオンライン化に係る調査研究報告書」によると、オンライン講習の受講率は、各道府県とも10%前後。最も多かったのは12.1%の千葉県で、8.7%の京都府が最も少なかった。

さらに「オンライン講習は対面での講習と比較して便利でしたか」との質問には、アンケート対象11万7368人のうち96.8%が「便利だった」「やや便利だった」と回答。「今後もオンライン講習を受講できるとしたら利用しますか」との問いに対しては99.5%の人が「利用する」と回答している。受講者は非常に満足度していることが明らかになった。

現在4道府県のみで試験的に実施されているオンライン講習だが、警察庁は結果を検証した後、2024年度末以降に全国展開していく方針。より使いやすく便利なオンライン講習が導入されるよう、今後の動向を見守りたい。

道府県別のオンライン講習受講率。山口県は更新申請者が京都府より少ないにも関わらず、オンライン講習の受講率が2.9%高い。

仕事を休んで免許更新に行っていた人も多いハズ。ゴールド免許に限らず、オンラインで更新が完結できれば非常に助かる!

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