5月25日、ヤマハが人とくるまのテクノロジー展で水素エンジン発電機を一般公開した。171ccのガソリンエンジンを水素燃料化し実際に稼働する完成度で、ヤマハは既存エンジンを水素化することに自信を見せる。
2015年から開発がスタートしたV8水素エンジンがきっかけ
ヤマハの水素エンジンは、カーボンニュートラルという言葉が現在のように一般的になる以前の2015年から開発がスタートしている。ちょうどレクサスのGS Fがリリースされたタイミングで、V型8気筒の5000cc2URエンジンを水素仕様に変更することがスタートになった。
エンジンは2018年に完成し、豊田章男社長(当時)が試乗したことで2020年のヤリスを経て、現在のカローラによるスーパー耐久参戦に発展。ヤマハはエンジンの試作や耐久試験などのサポートに加え、一部エンジン部品の設計を担当し、水素エンジンのノウハウを蓄積したのだ。
今回展示された水素エンジン発電機は、ヤマハが市販しているインバータ発電機の空冷4ストローク171ccエンジンをベースに燃料をガソリン仕様にしたもの。吸気を従来のキャブレターから水素インジェクターに変更したのみで、実際に発電にも利用できているという。
水素では、異常燃焼を防ぐために燃料の噴射や点火タイミングのマップ作りが必要で、ここにノウハウが生きる。課題は、水分によるオイルの乳化、オイル成分の燃焼によるCO2の発生があることなど。さらにタンクや水素インフラの難易度の高さは無視できないところだ。
ヤマハの日高社長は、水素エンジンバイク試作車があることを明かしており、発電機の次はバイクが公開されることを期待!
V型8気筒の水素エンジンはボンネット排気式!
最初に開発されたレクサスGS Fの水素エンジンは、V型8気筒の吸排気ポートを逆向きにしていた。そのため、車に搭載した際にはボンネット排気となり、その姿はまるでマッドマックスのインターセプター(こちらはスーパーチャージャー)のようだったという。
あえてインバンク排気にした理由は、排気管長を揃えてサウンドをチューニングするため。8-1集合排気管が奏でるハーモニックな高周波サウンドでエンジンならではの魅力を追求し、水素エンジンプロジェクトを後押しする必要があったのだ。
また、完成したエンジンは、ガソリンエンジンに比べて低回転域のトルクが優れており、「じつは非常に楽しく扱いやすい動力特性を持っていた」という。これがきっかけで豊田章男氏は「モリゾウ」として水素エンジンレーサーのステアリングを握ることになったのだ。
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