
2021年4月にホンダの九代目社長に就任した三部敏弘氏が、定例の社長会見「2023ビジネスアップデート」を実施した。そこで発表されたのが再定義されたブランドスローガンで、今後のホンダの企業姿勢を明文化した。
ホンダは「夢の力で、あなたを動かす」会社に
「The Power of Dreams」は、ホンダの映像や印刷物で目にするライダーにもお馴染みのグローバルブランドスローガンだ。就任3年目を迎えるホンダの三部社長は、「私たちの目指す姿や実現したいこと、提供価値を今一度明確化し、社内外に宣言していく」ためにこれを再定義した。
ホンダの「The Power of Dreams」は、21世紀前夜の2000年12月末に発表されたもので「人々と共に夢を求め、夢を実現していく」決意表明として制定された。三部社長は電動化やデジタル化が求められる変革の時代でも、これがブレることがないように新たに副文を加えたのだ。
それが、How we move youというサブスローガン。The Power of Dreamsとセットになっており、ホンダの和訳では「夢の力で、あなたを動かす」というメッセージになる。従来の「夢の力」は、ホンダ社員の内発的な動機を意味していたが、これに「あなた」という顧客を加えたのが新しい。
大きな変革の時代でも、顧客を「Transcend:時間と空間の制約から解放」し、「Augment:ひとのあらゆる可能性を拡張」する価値あるモビリティを「Create:生み出す」ことで、あなたを動かすことを意味している。その原動力が夢の力となるのだ。

これが新しいグローバルブランドスローガン。左は2001年以来のものを受け継ぎ、右に対象と目的を記している。2023年9月に創立75周年を迎えるホンダの新たな道しるべとなる。

2000年以前に使われていたスローガン的なものは、『人と、地球に「夢・発見・ドラマ」を。』というものだった。バイクでは「Come ride with us.」など、統一されていなかった。
ホンダらしさを突き詰めた三部社長の考え
2021年の社長交代発表会見で、三部氏はホンダらしさを問われ「社会課題や強い相手に向き合う姿勢のこと」と力強く答えた。4月に社長に就任した際には記者会見で「ホンダらしさとは、本質を考え抜いた末にたどり着く価値、そして独創性だと考えます」とより定義を明確化していた。
それから2年を経て、今回はグローバルブランドスローガンとして制定するに至っている。三部氏以前に生産規模の拡大や海外拠点の整理縮小に追われた経営陣は、これらの本質的なメッセージの発信を行ってこなかったこともあり、余計に「ホンダらしさ」が薄れていたのは事実だろう。
三部氏は、電動化やデジタル化は単なる“手段”であるとし、その先にある「ホンダが目指す姿や実現したいこと」で、「あなた」つまり私たちを動かそうしている。その動機には1949年のD型、ドリーム号の時と変わらない情熱が感じられるが、読者のみなさんはどうだろうか?

ドリームD型(1949年) [HONDA] 試作1号機を見た社員たちが「夢のようだ」と発したことでドリーム号と命名されたホンダ初のモーターサイクル。まさに夢の力であなたを動かした原点だ。

ドリーム50(1997年) [HONDA] 1960年代の世界GP制覇やF1初勝利などホンダは次々と夢を叶えて、1970年代までは多くの製品名にドリームが冠された。これはそんな時代を懐古する最後のドリーム号。
グローバルブランドスローガン(2023年4月)
『夢』
Hondaはいつも、夢を力に走っている
Hondaの夢見るモビリティ
それは、時間と空間の制約からの解放
それは、ひとのあらゆる可能性の拡張
実現の鍵は、想像力だ
『夢』
あなたの夢の原動力はなんだ?
Hondaの夢見るモビリティ
それは、ひとの新たな夢をつなぐパワー
だから、私たちは未知を恐れず挑戦する
意思をもって動き出す
必ず夢は実現する
The Power of Dreams(夢の力で)
How we move you(あなたを動かす)
グローバルブランドスローガン(2001年1月)
The Power of Dreams
Hondaが信じるもの、それは夢。
夢は人々に、まだ見ぬ喜びを届けてくれます。
Hondaが創りだすもの、それは新しい価値。
夢をかなえるために、
今日も一人ひとりが、チャレンジを続けています。
そして、夢を手にした人々の笑顔が、
私たちに次のチャレンジに向かう情熱と勇気を届けてくれる。
The Power of Dreams
Hondaは夢がくれる力を通して、
お客様、そして社会と喜びを分かち合っていきます。
https://news.webike.net/bikenews/310491/
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