ヤマハ発動機は業界向けニュースレターにて、最新の研究成果として発表されている「AMSAS」を搭載した実験機の現在の状況を発表した。低速度でも安定した自立走行を実現し、立ちごけの危険性が払拭された、新しい安全水準のモデルが一般ライダーの前に登場する日も遠くはないだろう。

「AMSAS」実験機はYZF-R25ベース! 手放し運転どころか、直立したまま停止も可能

ヤマハ発動機が2022年に発表した「AMSAS(Advanced Motorcycle Stability Assist System)」、日本語では「二輪車安定化システム」と呼ばれる技術は、二輪車が関連するあらゆる交通事故を防止するために開発された。6軸センサーと操舵用アクチュエータにより、超低速でも自立して走行することができるほか、直立したまま停車することも可能な技術だ。この技術により不意の立ちごけや、低速走行でのふらつきは確実に防止されている。ヤマハ広報担当によれば、「前輪に装着するモーターはほうきを逆さにして手のひらでバランスをとる「倒立振り子」の原理で静止時の自立を実現し、操舵軸に取り付けられたアクチュエーターは、ペダルを漕がずに自転車をスタンディングさせる時のような細かいハンドル操作で安定感を高めています」とのこと。

大きな特徴は、「AMSAS」実験機のベース車両が見慣れた「YZF-R25」であるということ。既存の設計のモデルに、フレーム等の改造を施すことなく搭載できる適用性を持った技術であることの証左だ。市販車両にこのメカニズムが搭載されるのはまだ先のことだろうが、近い未来には慣れ親しんだ定番モデルにも、立ちごけ防止システムが搭載されるかもしれない。

 

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YZF-R25をベースとした「AMSAS」実験機。発進時から時速5km程度の低速域で運転を補助する。フロントホイールに取り付けられた大型のモーターが外見上の大きな特徴だ。運転テクニックを必要とする低速時のバランス制御を自動化することで、立ちごけや不安な取り回しを防止する。

 

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技術開発統括部で安全戦略を担当する坂本さん(左)と、「AMSAS」の開発プロジェクトリーダー鈴木さん。「AMSASが目指しているのは、ライダーが操作に集中できる環境を整え、誰もが人機一体感を楽しめるようになること(坂本潤さん)」

 

自律運転はバイク以外にも展開? 今後の成果に期待

ヤマハ発動機はこれまでにも、人型の自律走行ロボット「MOTOBOT(2015)」や、AIを内蔵しライダーを認識できる「MOTOROiD(2017)」など、未来につながる実験的な研究を続けてきた。AMSASはその2機種の開発により実現した、より身近な二輪車の近未来技術だ。これを運転支援技術の核として、ヤマハでは「レーダー連携ユニファイドブレーキシステム」など、他の最新デバイスとの組み合わせも進められている。さらに、今後は各デバイスのコンパクト化を進め、自転車などの様々なモビリティにも応用を想定。そんな高い目標に向かい、研究は今も継続中だ。

 

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YZF-R1を自律運転した「MOTOBOT」。バレンティーノ・ロッシのタイムを上回る運転技術を目指して開発された。

 

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AIを搭載し、ライダーの呼びかけに応じて立ち上がり、顔認識機能やジェスチャー認識機能もそなえた「MOROROiD」。車体中央からリアホイールまでを回転させ、静止した自立状態をキープすることもできた。

 

情報提供元 [ ヤマハ発動機 ]

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