
夜間や休日に満車状態が続く、高速道路のサービスエリア(SA)、パーキングエリア(PA)。これを解消をするべく、道路会社や有識者が検討会を実施した。予約制、有料化、立体化など様々な案が出されたが、本当に抜本的な改革になるのか・・・・・・?
文/沼尾宏明、写真/高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会※当記事は2023年3月14日に「ベストカーWeb」に掲載されたものです。
目次
乗用車は2時間、中大型は10時間以上で有料を検討中
全国の高速道路にSAとPAは852か所あるが、慢性的に駐車マスが不足気味だ。大型車は、平日で全体の約5~7割、休日で全体の約1~2割の箇所で駐車マスが不足している。東京方面は首都圏近郊、名古屋方面は名古屋都市圏に近づくにつれ、深夜時間帯を中心に混雑。東京方面の混雑は特に顕著で、都市圏に近づくほど休憩施設は混雑している。
乗用車などの小型車は、平日&休日とも全体の約2割の箇所で駐車マスが不足し、特定のSA&PAで混雑が見られる。
こうした事態を改善すべく、2023年2月、SA&PAの利便性を向上を図る中間とりまとめが発表された。検討会は「高速道路SA・PAにおける利便性向上に関する検討会」との名称で、日本高速道路保有・債務返済機構やNEXCO3社、外部有識者などから構成される。
多数の案が発表されたが、まず驚きなのは「駐車マスの予約・有料化」の検討だ。従来ごく一部で実施されていたが、混雑するSA&PAに有料駐車マスを整備。法的整理を行った上で順次導入し「最終的には混雑する路線の休憩施設はすべて有料化」するという。
その際、短時間(例えば2時間以上)の駐車を有料化し、休息が必要な長距離ドライバーは10時間まで無料にすることを検討している。
とりまとめでは「有料化に抵抗を感じる利用者が近隣の無料のSA・PAへ流出することが想定されるため、導入にあたっては、近隣のSA・PAを含め確実な駐車機会が確保可能となるよう、利用の偏りに留意した十分な検討が必要である」と慎重さも見せるが、東名や新東名など混雑する路線は導入される可能性があるだろう。

東名 海老名SAの例。23時過ぎから深夜割引待ちの車両が滞留し、満車となっている
30分毎に120円、実験で有料化したらガラガラに
2023年2月まで行われた有料エリアの実態を見てみよう。東名の豊橋PAで社会実験として導入された予約&有料エリアは、全長13m以内の「中型/大型」駐車マスが10台分(うち1台は定期利用)、同25m以内の「特大/ダブル連結トラック」が9台分(うち3台は定期利用)。ETC2.0搭載車両が条件で、事前の会員登録やクレジットカードでの決済が必要だった。
中型/大型では0~3時が課金対象となり、予約開始から60分間は無料。以降30分毎に120円が課金される。定期利用は月1万円だ。
特大/ダブル連結トラックは20時~翌日5時までが課金対象で、こちらも予約開始から60分は無料、そのあとは30分毎に250円が課金した。こちらのみ最大料金が1000円に設定されており、定期利用は月2万円。
なお予約開始時刻の3時間前までのキャンセルは返金される。
予約制の社会実験は2019年4月から開始。当初は無料で実施し、2021年5月から有料に切替えた。無料実験終了直前は、ほぼ満車状態だったが、有料化されて以降、利用台数が減少。無料時に利用していた48社のうち、有料化後も利用していたのはわずか3社のみ。つまりガラガラになってしまったのだ。
また、無料、有料の期間いずれも予約したが利用しない、空予約のユーザーが3割程度存在していた。実際に予約制を導入した場合、同様に空予約をするケースが続出すると思われる。

2019年4月~2022年2月、東名の豊橋PAで駐車場の予約システムが行われた。対象は中型車以上。2021年5月から有料化に切り替えた結果、ほぼ利用されなくなった
PAから一時退出し、再流入するシステムも実験中
さらに「駐車場の立体構造化」「カメラを整備してリアルタイムの混雑情報提供」などのほか、SA&PAから一時退出できる仕組みも検討されている。
一時退出は、2017年から社会実験が始まっており、現在は全国29か所で実施中。近隣の道の駅などに立ち寄ることで、PAの混雑を避けることが可能という(ETC2.0車載器が必要)。時間内に再び戻ってくれば、高速を降りずに利用した料金や割引制度が継続となる。
なお、休憩以外の目的で一時退出したと思われる車両が確認され、2022年7月から一時退出可能時間を3時間→2時間に変更された。しかし引き続き休憩以外の目的で一時退出する車両が確認されており、抑制効果は十分でない。
他にも「SA&PAの敷地面積自体の拡大」「路外SA&PAの設置」「本線上の遊休地に駐車スペースを設ける」などの施策も検討されている。ただしコストの問題や面積確保などの問題もあり、いずれも抜本的な改革とまではいかないようだ。

PAから一時退出し、道の駅などで休憩できるシステムも実験中。現状は2時間以内の再進入が条件だが、今後は上限時間が変更になりそうだ

混雑しているSA&PAの隣接地を用地買収したり、IC周辺の路外に休憩施設を新設する案も

一時退出では、大型車を中心に休憩外での利用も。道の駅に大型車が駐車できないことも理由の一つのようだ
物流に関しては深夜割引や休息のシステムこそ問題なのでは?
夜間のSA&PAがトラックで混雑しているのは、0~4時に適用される高速道路の「深夜割引」が始まるのを待つドライバーが多いことが理由の一つ。また、1日8時間の休息や、4時間毎に30分休憩する法律も満車の原因となっている。
少しでもコストを削減するため努力している中小の運送会社にとって、有料PAを利用することはまずありえないだろう。それは前述の社会実験でも示されており、近隣の無料SA&PAに流出するだけ。つまりSA&PA駐車マスの予約+有料化は駐車場不足の解消には全くつながらないと思われる。
抜本的にトラックの満車を解決するには、深夜割引の適用時間拡大こそが急務ではないか。2024年度中をメドに適用時間帯を現行の「0~4時」から「22時~翌5時」に拡大する方針だが、具体的な時期は未定だ。
もちろん乗用車のドライバー、ライダーにとっても有料化は避けたい事態。そもそも予約時間までに渋滞などで辿り着けないケースも想定できる。そして何より高速道路の有料期限が最大2115年まで延長する方向となった今、「さらにこれ以上出費したくない」と筆者は思ってしまうのだが・・・・・・。
政府にはもっと生のユーザーの声を聞いた道路行政をすべき。総理の「聞く力」はやはり期待できないのか・・・・・・。

前述の豊橋PAで駐車マスを有料化した結果。実際に有料化しても、このように利用されなくなるだけなのでは・・・・・・?

シャワーブースや24時間営業店舗などを比較的混雑していない休憩施設に整備することで、混雑緩和を図っていくという

出発時間別に複数縦列する大型車専用SA&PA の新設を検討中。駐車容量を最大化・最適化できるという
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高速料金を取られた上に駐車料金も取られるの、どうなっちゃうんだろうね、公金チューチューを行う輩が在るから変な規則が出来上がる。深夜割引時間帯の拡大を実行すれば解決するだろうけど、ネクスコへの収入が減る事がネックになっているのだろう。
有料道路のPA/SAの駐車場待ちの大行列問題を解決するのなら、特に交通量の多い路線沿いのPA/SAは、長距離バスと二輪車と輸送トラックを除く全ての車両を、3階建て以上の立体駐車場を設置してそこへ一括収容させるようにすればいいんですよ。
それだったら、平面駐車場しか使えない現状よりも渋滞緩和にもなるだろうし、駐車台数が増えれば、売店や自販機や食堂もより多くの収益を見込めるでしょう。立体駐車場を時間貸しにするかどうかは議論の余地はあると思うけど、立体駐車場の屋上を屋根なしの展望台として利用すれば、高さもあるし息抜きにもなるとおもう。
駐車場満車なのに人ガラガラの店内って場所あるからな、不正利用者がいるからこうなる。