近年、バイクおよびライディングギアの進化は、電子制御やデジタル技術と密接に結びついてきました。バイクならライディングモードやトラクションコントロールや上下双方向シフターなどの普及、ギアならBluetoothインカムやワイヤレス式エアバッグなどがその代表格。そして2023年も、未来の普及を予感させる新技術が市販化されますよ!
目次
デジタル化で進化するモーターサイクル
市販二輪車の世界でも、いわゆる“電脳化”は当然の流れとなっていて、例えばミドルクラス以上の現行モデルでは、いつのまにかフルカラーメーターが当然の装備となりつつありますし、ライディングモードや上下双方向対応クイックシフター、トラクションコントロールなどの搭載も一般的になってきました。一時期と比べて最高出力を競う傾向でなくなった代わりに、各メーカーとも新たな電子制御システムの開発と市販車への導入に注力しています。
またライディングシーンにおいても、デジタルデバイスを活用した“昔とは異なるバイクの楽しみ方”が、どんどん浸透してきました。これと密接に関係しているのが、一般生活におけるスマートフォンの普及とスマホアプリの進化。
今やスマホとBluetooth接続できるメーターを搭載したバイクも増え、車両と電子的に接続させられるかどうかはともかくとして、ハンドルマウントなどを利用しながらスマホをナビとして使うことは当然となりました。また、スマホの発展と連動してライダーの間に普及したのがBluetoothインカム。こちらも、10年前と比べたら驚くほど一般的になりました。
カフェレーサー系やヘリテージ系やネオクラシック系など、以前のバイクが持つ雰囲気をよみがえらせたようなバイクたちが人気となる一方で、バイクにまつわる電子技術は着実に発展を続けています。今は「超先進的!」と言われる技術も、数年後には「あって当たり前」になっているかもしれません。
2023年も注目の最新技術が次々に市販化
当然ながら2023年も、国内外のメーカーからバイクおよび関連する製品の“新作”が多数発売されます。そこには、「市販車初」や「メーカー初」などの技術が導入されていることも少なくありません。
今回はその中から、“電脳”をキーワードに注目の技術を3つピックアップしてみました。ひとつは、ヤマハ・トレーサー9GT+に量産二輪車初搭載されたレーダー連動型のユニファイドブレーキシステム。
2つめは、カワサキ・ニンジャH2 SX/SEが新搭載したオートハイビーム。
そして3つめは、SHOEIが2022年12月中旬からSHOEI Gallery各店で先行限定販売を開始したヘッドアップディスプレイ内蔵ヘルメットのオプティクソンです。
いずれも、バイクのさらなる電脳化や今後数年での普及、未来への発展性を感じる技術。というわけで、それぞれの特徴や魅力について個別に紹介していきましょう!
レーダー連動型ユニファイドブレーキシステム
2023年型ヤマハ・トレーサー9GT+に量産二輪車初搭載
ヤマハは2023年モデルとして、ロードアドベンチャー系のスポーツツアラーモデルとなるトレーサー9GTに新バージョンとなる“+”を追加。このモデルに、ミリ波レーダーを活用したアダプティブクルーズコントロール(※ACCとも呼ばれる前車追従型のクルコン)と併せて搭載されたデバイスが、レーダー連動型の前後アシスト・ユニファイドブレーキシステム(UBS)です。
ACCは、海外メーカーではドゥカティやBMWやKTM、国内メーカーではカワサキがすでに市販車へ導入してきましたが、ミリ波レーダーと6軸IMU(慣性計測装置)などのデータを活用したUBSは量産二輪車世界初採用の技術。“自動”ではなくあくまで“補助”の範囲ですが、衝突が差し迫っていることを検知したときにはUBSが制動力を増強し、加速度や傾斜角に合わせて前後輪の制動力配分を最適化し、コーナリング中にタイヤの滑りを抑える制御をしてくれる機能が統合されています。
クルマの世界では、衝突被害軽減ブレーキの導入が新型車に義務化されています。バイクの場合、自動ブレーキが働くことで逆に転倒するリスクもあるので、すぐにこのような動きになるとは考えづらいところですが、ブレーキ制御技術のさらなる高度化は、このモデルの登場を機に進んでいきそうです。
カメラセンサー使用のオートハイビーム
2023年型カワサキ・ニンジャH2 SX/SEが新搭載
ここ最近、「夜間走行は原則ハイビームが基本」という話題が注目を集めています。じつはこれ、道交法でも明確化されていて、クルマのほうではオートヘッドライト(周囲の明るさに応じて自動でヘッドライトが点灯)とあわせてオートハイビーム(自動でハイビームとロービームを切り替える)システムを搭載した新型車も増えてきました。
そしてバイクの世界でも、カワサキが2023年型のニンジャH2 SX/SEで、オートハイビーム機能を新採用。こちらは、カメラセンサーにより前方の車両や街灯などの明るさを検知して、自動的にロービームとハイビームを切り替えるシステムとなっています。ライトをハイビームに設定して、夜間に20km/h以上で走行するとアクティブになります。
カメラセンサーの搭載など、バイクにシステムを組み込むためにはスペースの問題などもあるため、装備できるのは大型クラスのカウル付きツアラーやクルーザーなどが中心となりそうですが、今後バイク業界にもオートハイビームが普及するかもしれません。
ヘッドアップディスプレイ内蔵ヘルメット
SHOEIがOPTICSON(オプティクソン)で市販化
SHOEIは、2022年春の東京モーターサイクルショーにプロトタイプを参考出品していた、ヘッドアップディスプレイ(HUD)を内蔵したフルフェイスヘルメットのオプティクソンを、2022年12月中旬にオフィシャルショールームで限定先行発売しました。
こちらは、右眼の前にセットされたコンバイナと呼ばれるスクリーンに、下側から文字情報を表示して、ライダーが進行方向から大きく視線をずらすことなく各種情報を読み取ることを可能にしたヘルメット。スマホとBluetoothで接続してナビアプリを使用することで、矢印および距離などの文字情報で進行方向や現在地などが表示されるターンバイターン方式のナビが表示されます。
ヘルメットにはマイク&スピーカーも内蔵されていて、音声によるナビ情報確認も可能。また、スマホの音声アシスタント機能を活用することで、電話をかけたりLINEのメッセージを読み上げたり、天気やニュースなどをチェックしたり、音楽を聴くことなども可能です。
走行速度がHUDでは確認できず、これがクルマのHUDとは異なるやや残念な要素ですが、ヘルメットにHUDが内蔵されているというだけで未来感はたっぷり。世界で活躍するプレミアムヘルメットブランドのSHOEIが手がけている点も、ヘルメットに本来求められる安全性の点で安心感があります。今後、この分野は開発競争がかなり激化しそうな予感がします。
https://news.webike.net/parts-gears/287390/この記事にいいねする